見出し画像

イケてる人材系営業マンが個人でクラウドCRMを導入しようとした話

こんにちは。
ベンチャー、スタートアップ、中小企業専門に、ZOHOやSalesforceの運用支援をしている虹雲ワークスです。

この仕事をしていると、本当にさまざまな業種業態の方からクラウドCRMの活用について相談をお受けします。
世の中には、こんなにもたくさんのビジネスと、それぞれの顧客とのつながり方があるんだな、と仕事を超えた驚きや尊さを感じることもしばしばです。
そんな経験を、システム開発技術の話ではなく、ストーリーとして伝えられたらと思い、noteをはじめました。
(この話は実体験を基にしていますが、あくまでフィクションですのでそのつもりで読み物として楽しんでもらえたら幸いです。)

「人材紹介会社の営業マンなんですが、クラウドCRMについて教えてください」
私が提供しているスポットコンサルティングサービスにある男性が相談したいとオーダーしてきました。
通常、個人からのオーダーはお請けしないことにしているのですが、起業を目指しているということで特別にお請けすることにしました。
ちなみに、1時間20,000円という価格設定です。コンサルティングサービスとしては決して高くないものの、個人が払うにはちょっと躊躇する金額です。

「人材紹介会社で5年勤めてきて、この業界の仕組みがわかったんです。だから独立しようと思っている。」
ある特定のIT関連の分野に精通し、その分野専門の人材紹介を行っているという彼(渋谷とか五反田あたりのベンチャー企業にいそうなイケメンでした)は、待ち合わせ場所として彼が指定した表参道のカフェでそう切り出しました。

まず、一人の人材紹介が成功した時に企業側からもらうフィーは25~40%。景気や難易度にもよるけど、だいたいこんなものです。
だから、もし自分が独立して食っていくだけなら、年収1,000万円クラスの人材を、年間5人も決めれば十分です。
そして、僕が担当している業界では、だいたい3年スパンくらいで転職を繰り返していきます。だから、転職希望者を100人くらい担当できればいちおう成り立ちます。
そんな業界で確実に売上を立てていくにはどうしたらいいと思いますか?
転職希望者に、前回の転職から2年半くらい経ったら確実にアクセスして、数ある転職エージェントの中から最も早く案件を紹介するんです。相談が来るのを待っていてはダメなんです。
だけど、実際には数百人のリストに対して手動でやるのは無理。だから、クラウドCRMを導入してある程度自動化したいんです。
勤め先でも使ってるけど、そういうファーストコンタクトは別の人がやっててよくわからないので、クラウドCRMにはどんな機能があって、僕のビジネスにどう使えそうか、教えてください。

なるほど。
頭の中にちゃんと見込み段階から成約までのファネルができていて、何をKPIにすべきかがイメージできている感じです。
それを伝えた上で、私はこんな話をしました。

まず、クラウドCRMは「物を仕入れて売る」物販を前提にシステムができています。だから、人材紹介みたいなマッチング型ビジネスの場合はそのためのカスタマイズが必要ですね。具体的には、候補者を登録しておくオブジェクトと、ひとつの案件に対して複数の人を紹介するので、それぞれを管理するための提案管理の機能が必要でしょう。
また、それぞれの案件の成否や候補者のスキルや好みなどの情報を記録しておくことはもちろんですが、前回の転職から2年ちょっと経ったらしっかりアラートを出して要対応リストとすることが有効ですね。
ある条件を満たしてから〇日後にメールを送る、みたいな「時間ベースのアクション」という機能があるので、これを使うといいでしょう。
あと、前回の転職日からの経過日数でレポートで抽出できるようにしておくのもいいと思います。
それから、転職の予兆をしっかり把握するために、メールで案件情報を送ってリンクをクリックしたらすぐに通知が来るような仕組みを入れておくといいと思います。本当にすごい営業マンはその瞬間にすぐに電話をかけるそうですよ。
これはCRM単体ではできないので、PardotやZOHO CampaignsのようなMAツールを使うことになります。
あと、CRMからのメール一括送信機能は以外と送信数の上限が低いので、これもMAツールを使うのがいいと思います。
頭の中にイメージはあるみたいですし、何を管理すべきかはご自身でわかっていると思いますので、活用は成功すると思いますよ。

うんうん、と頷きながら聞いていた彼は、その後いくつかテクニカルな質問を私になげかけ、それに回答しているうちにコンサルティングの時間が終了しました。
クラウドCRMが物販ビジネスを前提とした仕組みになっているということが驚きだったようで、コンサルティングは有意義だったと言って頂けました。

私たちの世界では当たり前な話なのですが、物を納品しない役務提供型ビジネス、マッチング型ビジネス(紹介先企業と求職者のように自分のビジネスの顧客は2種類存在する)、サブスクリプション型ビジネス、受注時に売上が定まらない成果報酬サービス型ビジネスのように、クラウドCRMを導入する時にそのビジネスの型に合わせたカスタマイズを施さなくてはいけないケースや、旧来のBtoBビジネスとは異なるKPIや成功シナリオをCRMを通してマネジメントすべきケースは意外と多く存在します。

自社のクラウドCRMの活用がいまいちしっくりこない、という方はこのあたりを意識して整理してみることをおすすめします。
クラウドCRMベンダーも様々なサポートや情報提供を行っていますが、どうしても紋切り型になってしまい、個々の企業特性や業種業態ごとの特徴までは捉え切れていない印象があります。
そしてこれは、私のような者がもっと頑張れという話でもありますね。

さて、すぐに独立するかに思われたイケメン営業マンの彼ですが、しばらく経った今でも会社勤めを続けているとのことです。
コロナ禍の余波が人材業界にも押し寄せていることに加え、これまで作った顧客や案件、そして担当してきた数百名の求職者は、自分個人の持ち物ではなく当然ですが会社のものであり、そう簡単に自分の看板だけでビジネスは成立しないということに気づかされ、会社の仕事とは別に地道に顧客開拓や求職者開拓を進めているそうです。

いつか彼に、クラウドCRMが必要になるだけの顧客や求職者が付きますように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?