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千葉市美術館拡張リニューアルオープン・開館25周年記念 「宮島達男 クロニクル 1995-2020」

2020年7月11日にリニューアルオープンした、千葉市美術館。
子どもから大人まで、気軽にアートを楽しめる、さらに素敵な空間へと生まれ変わりました。

そんな千葉市美術館のリニューアルオープンと開館25周年を記念して、「宮島達男 クロニクル 1995-2020」が開催中!
プレスリリースにお伺いし、作家宮島達男さんの解説を伺いながら、一足先に展覧会を見てきましたのでご紹介します。

クロニクル3

1957年東京都出身。 
東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻終了。

「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という3つのコンセプトに基づいて、1980年代からLED(発光ダイオード)を使い1から9までの数字が点滅するデジタルカウンターを用いた作品や立体作品、パフォーマンスを国内外で数多く発表する日本を代表する現代美術作家です。

1988年に第43回ベネチア・ビエンナーレの若手作家部門「アぺルト88」で、《時の海》を発表し、国際的に高い評価を得て注目を集めます。

その後も国内外の展覧会へ多数参加、アートの社会的役割を考察しながら、教育活動にも関わるなど精力的に活動を続けています。

大規模個展としては12年ぶり

宮島達男《Life (le corps sans organes) - no.18》2013年 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE Photo by Ken Adlard

宮島達男《Life (le corps sans organes) - no.18》2013年 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE Photo by Ken Adlard

本展は宮島達男さんの大規模個展としては、12年ぶりに首都圏の美術館で開催される展覧会です。
大型インスタレーション作品を含む約40点の作品が展示されます。

テーマは「クロニクル(年代記)」。
本展の作品を通し、1995年から2020年までの四半世紀、宮島達男の時間と空間に深く関わる作品表現の展開や奥深さをじっくりと堪能できます。

また宮島さんが近年構想してきた「不確定性」をテーマとする2020年の最新作や、日本未発表の作品も今回多く出品されるのも見逃せません。

本展の見どころでもある代表的な作品をいくつかご紹介します。

宮島達男《地の天》1996年 千葉市美術館蔵 Photo by Nobutada Omote (2)

宮島達男《地の天》1996年 千葉市美術館蔵 Photo by Nobutada Omote (2)

1996年の開館記念展に出品された《地の天》は、本展の核と位置付けられる重要な作品。
当時、実用化され始めた青色LEDを初めて用いた大型インスタレーション作品です。

まるで宇宙と地球を結んでいるようなイメージもある、と話す宮島さん。
真っ暗な円形の中に浮かび上がる197個の青い光は、星の瞬きのようであり、蛍の光のようにも見えゆっくりと点滅を繰り返します。

本作は、1995年に恩師である榎倉康二氏の訃報を受け、追悼の意を込め制作されました。

宮島達男《Counter Skin on Faces》20192020年 Courtesy of Akio Nagasawa Gallery Photo by Siliang Ma

宮島達男《Counter Skin on Faces》20192020年 Courtesy of Akio Nagasawa Gallery Photo by Siliang Ma

暗闇に映し出される3人の女性の顔。

キリスト教・仏教・イスラム教といった、それぞれ3つの文化圏から集まった彼女たちの顔に塗られた赤・黒・白の3色には、それぞれの異文化・宗教・人種の違いを認め合い、対話の大切さ、共に生きていることに気づかされる作品です。

宮島達男《Innumerable LifeBuddha MMD-03》2019年 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE Photo by Nobutada Omote

宮島達男《Innumerable LifeBuddha MMD-03》2019年 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE Photo by Nobutada Omote

2500個の数字が赤いLEDで点滅を繰り返すこの作品。
法華経の「地涌(じゆ)の菩薩」がイメージの源泉。

「地涌の菩薩」とは、地の下から出現される菩薩を指しており、この世で暮らす人間すべてに、仏性が備わっているという意味があるそうです。

宮島達男《Counter Voice in Chinese Ink》20182020年 Courtesy of Akio Nagasawa Gallery Photo by Siliang Ma

宮島達男《Counter Voice in Chinese Ink》20182020年 Courtesy of Akio Nagasawa Gallery Photo by Siliang Ma

初期の活動を代表する作品は、東京藝術大学在学中の1980年代前半に、自然や街中でパフォーマンスを行った《NA.AR.》(「Nature and Artificiality(自然と人為)」の略)です。

叫ぶ、寝転がるといった外部環境に対しての行為の数々は、世界と自己の関係性についての探究であったといえます。

天文台で知られるイギリスのグリニッジ訪問を境に、宮島は1995年よりパフォーマンスを再開し、自身や他者の身体を用いた映像作品の発表を続けています。
(千葉市美術館プレスリリースより引用)

2019年に上海(中国)の個展で発表された本作は、日本初公開です。

宮島達男が表現し続けるテーマ「生と死のつながり」

クロニクル4

LEDカウンターの、1から9まで数字の絶えることのない点滅は生命を。
表示されない0(ゼロ)は、宮島さんにとって何を意味するものかという問いに、人間の毎日の眠りに近い感じで、眠っている間は意識はないが、目覚めることで再び生に戻り、それが繰り返されることに似ていると。

宮島さんにとって、数字とは表現者としての言語。
どの国でも共通していて英語よりも伝えやすいツールだと語ります。
数字を30年近く使って発表しているが、これからも数字によって伝えたいこと、それは対話をし限られた時間の中で仲良く共存しようという思いだそう。

また、1996年から始まった「時の蘇生・柿の木プロジェクト」は、宮島さんが、1995年に長崎の樹木医、海老沼正幸氏と出会った事がきっかけで立ち上がったプロジェクト。
これは被爆した柿の木の二世を世界中に植樹し、育てることを通し、子ども達と一緒に「平和」「命の大切さ」「人間の生き方」について、改めて一人一人が考える機会となる取り組みで、現在も続いています。

これまで国内では幼稚園、小・中学校、公園や美術館など多くの施設などで実施されています。
千葉市美術館でも25年間取り組まれてきた「時の蘇生・柿の木プロジェクト」を千葉県内で初めて実施し、映像作家の林勇気氏を招聘し、2021年初春に柿の木の苗木の植樹を決定しています。

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本展では、千葉市美術館が所蔵する絵画や写真とのコラボレーション《Changing Time/Changing Art》もあります。
宮島さんが敬愛する現代美術作家たちの作品とのコラボレーションも見逃せません。

そして1階さや堂ホールでは、展示会場だけでしか体験できない特別な空間が生み出され、来場した人々は色と数字の織りなす不思議な世界を体感できます。

千葉市美術館で芸術の秋を堪能

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秋の気配が感じられる今日この頃。
千葉市美術館で芸術の秋を味わってみませんか。新しい発見や感動に出会えることでしょう。

ぜひ、この機会に宮島達男の世界をゆっくり堪能してみてください。

宮島達男クロニクル 1995-2020

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会期:2020年9月19日㈯―12月13日㈰

開館時間:10:00-18:00(金・土曜日は20:00まで) *入場受付は閉館の30分前まで

休室日:10月5日㈪、10月19日㈪、11月2日㈪、11月16日㈪、12月7日㈪

観覧料:一般1,200円(960円)/大学生700円(560円)/小・中学生、高校生無料
*障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
*( )内は前売り、市内在住65歳以上の方の料金
*本展チケットで、5階常設展示室「千葉市美術館コレクション名品選2020」もご覧いただけます。

☆ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額

☆10月18日㈰は市民の日につき観覧無料


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会期:2019年11月2日~12月28日

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