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第18章、第二都市(中庭、学校)ー1、「2匹いたのね。」



この部分の文章は、登場人物たちが見ている幻覚です。

今回は、幻覚の中にショッキングなグロシーンが含まれています。
私のホームページでは読むことができますが、noteでは見ることができないので、話の内容に影響することはありません。

幻覚内での()は、作者による注釈です。

幻覚以外の文章について
・太字の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()は、作者による注釈です。
・太字の「」は、複数人の声や、大きな声や音です。

(注)引用の右下に設けた幻覚1〜6は、わかりやすいように設けただけで
   本文内とは関係ありません。
        幻覚は、すべて繋がっています。

作者より





 木花 咲子さんの部屋


学校の敷地全体の見取り図です。

 校舎に向かって、渡り廊下を歩いて行く。
 右手には、大きな針のように細い三日月
 月の女神ルナがいるので、三日月なのに煌々こうこうと周囲を照らし、幻想的な雰囲気だ。

「わあ、すごい・・・。」
 校長先生、市長さん、姫子さんたちは、大きな三日月に感嘆の声を上げる。
 私も大きな三日月を見て、次に、来客や職員用のドアの方を見る。
 そこから、明かりが漏れている。(下記の校舎1階の見取り図参照)
 
 私は川原 幸子さんにした質問(15章-1「木花 咲子さんって、寮のどの部屋にいるの?」)を、校長先生にもしてみる。
 校長先生は気恥ずかしそうに
「前に生徒だけが増えて、寮の部屋がいっぱいになったことがありましてね。で とりあえず1週間だけ、という約束であそこ・・・に移ってもらったんですけど、自分はあそこ・・・が性に合ってるって言ってね、それで、ずっとあそこ・・・なんですよ。」
 横から、食堂で働いている中年女性の百合子さんが
「食事もわざわざ、ここまで取りに来て、持って帰って食べるのよ。」
「いつ頃からですか?」と私
校長先生が
「あれは、2年ぐらい前だったかな?」と、思い出そうとしていると
 ルナが校舎の出入り口を指差し
「見て! もう、始まってるわ!」


 幻覚


学校の校舎1階の見取り図です。
「生徒の下駄箱」内の茶色い長方形は、下駄箱です。


 校舎の中の廊下を、由美ちゃんが全速力で、校長室がある方に向かって走って行くのが見える。
 ルナが走り出し、私と、私の部下とアルテミス以外が、慌てて校舎に向かって走り出した。
澪木みおぎ、行かねえのかよ?」とマーズちゃん
「うん、この辺でいる。」
「マーズ様、早く行きましょう。」
 
 私は生徒用の下駄箱の前の廊下で、由美ちゃんが走って行った方を見る。
「どうするんです?」と副隊長
「あ、いや、イモ虫こっちに来るかなって、来たらどうしたか見たくて。」
「楽しみね。」
 横には、アルテミスとアーチャーが立っている。
(アルテミス・・反対したのに・・・アーチャーは非番か?)
「まったくだ。」
 いつの間にか、キングもいる。
「キング、寝たんじゃなかったの?」
「お前は・・・あれだけ騒々しかったら眠れぬわ。」
(聞いてたな。私たちの話を・・・。)(17章-1)

周囲の風景が昼間になっていた。
色とりどりのはかま姿の学生たちが下駄箱の方へと歩いて行く。
突然、緊急警報のサイレンが鳴り出した。
下駄箱の丸い時計は午後3時を差している。

幻覚1

(午後3時って・・えっと・・・・。)
「会議をしていた時ね。」とアルテミス
(そうなんだ。)

「えっ、何?」
学生たちが動揺し周囲を見回す。
運動場に亡者たちが出現し始めた。
地獄に穴が空いたのだ。

幻覚2

 部下たちが、それぞれの武器を手に構える。
 私は慌てて
「これは幻覚だから、あの時の午後3時の再現だから刀は抜かなくていいよ。その代わり、しっかり視てて、何が起こったのか。」
 部下たちはかまえを解くが、刀は持ったままだ。


 学生たちが、運動場の亡者たちに悲鳴を上げその場に立ち止まる。
 下駄箱の所で、草鞋わらじや靴に履き替えたは良いが、そのまま前に進むことができず立ち往生していると、階段から下りて来た生徒たち、女性ばかり20人ほどが走って校舎を出て行った。
 その先、寮の扉が半分ほど開いて木花 咲子さんが
「こっちよ!」と促し、その扉の中に入って行く。
 それを見た下駄箱にいる学生たちが
「あっちだ!」
 寮に向かって一斉に走り出す。
 職員用の出入り口からイモ虫(ピンクのかたまり)が飛んで来た。
 イモ虫は運動場へと逃げようとするも、亡者たちに阻まれ寮の中へと入って行った。

幻覚3

 その頃には、戻って来た女神たちや部下たち、校長先生や姫子さんたちが呆然と中庭で、イモ虫の行方を目で追っている。


学校の校舎1階と寮3階の見取り図です。


 私は、寮の3階1番奥の女神たちの部屋(上の見取り図内の赤い星がある、今はキングの部屋)の方へと、駆け出した。
 後ろから、部下たちだけでなく他の人たちもついてくる。

 そこへ半分も行かない間に、奥の部屋の寝室の渡り廊下に面した一番大きな出窓から、ダブルベッドほどもある焦茶色のイモ虫が飛び出して来た。
 と同時に、空から半分に引き千切られた蝶番が落ちてくる。

幻覚4

(2匹いた。これがドアがなかった真相だったんだ。)
「2匹いたのね。」とアルテミス
 アーチャーも、うなずいている。
「じゃ、もう1匹増えたってことですか?」
市長さんが、頭を抱えている。


 寮の左側(木々がある方)へと回ると

 3階の二人部屋の窓(上下開閉式、下のイラスト参照)が開いており、そこから先ほどより一回り小さいライガが飛び出し、堀の向こうへ行ってしまった。
 窓が、誰かの手で静かに閉まっていく。

幻覚5


「マジかよ。」
私の後ろで視ていたマーズちゃんが、血の気がない顔でつぶやく。
「俺、隊長(私)があのドアにこだわった訳がわかりましたよ。2匹いたんすね。」とアオバ
「うん・・・。」
「2匹も・・・・・。」とヨシツネ
「1匹だと思い込んでましたね。」と副隊長
「うん、あのまま気にしないままにしておくと、後の方で大変なことになってた かもね。」と私
「でも、ドアにこだわっただけじゃ難しいだろ?」とマーズちゃん
「それでも気にした方が良い。何かのきっかけで、わかるかもしれないし。何も気にしないよりは、2匹いるって知った時のショックは違うと思う。」
「確かにな。」
 部下たちもうなずいている。藍白やタガメ、鎧姿のアーサーたちも私たちの話をきいている。

「澪ちゃん! 来て!」
 オフィーリアが、中庭の方から駆けて来る。その後ろには、ナナとミミがいる。
藍白とタガメが、いち早く駆け出した。
「次は、あのイモ虫か!」
マーズちゃんがつぶやき、その場にいる全員が渡り廊下の方へと駆け出す。

 校舎を見上げると、ダブルベッドほどもある大きなライガが校舎内で暴れまわっておりカーテンや壁が血に染まっていく。

幻覚6

 校長先生や寮から出て来た第二都市の人たち、女神たちと部下たちは真っ青な表情で、その様子を見上げている。
 姫子さんが、たまりかねた様子で
「どうにか、できないんですか?」と、私にきいてくる。
 私はうなずき
「これは、一昨日おとつい、起こったことを再現しているだけ・・なんです。つまり幻覚です。」
ええー?!
女性たちが声を上げ、再び校舎に目を向ける。
 私も、ライガがどっちの方向に逃げていくのか、注意深く見守る。

 やがて、あれだけ聞かれていた悲鳴が聞かれなくなっていく。

(だめだ! 見失う)アーサーさんたちは、運動場の方でどこ・・に逃げるか視てもらえますか?」
はい。
アーサーたちが下駄箱の方へと駆けて行く。ルナも後ろからついて行く。
「私たちも行くわ!」
フローラとその部下たちも駆け出した。
「マーズちゃんは、あっち!」
私は、職員や来客用の出入り口を指差す。
「了解!」
マーズちゃんとその部下たちが駆けて行く。
「私たちは中へ。」
はい!
私の部下たちが一斉に返事をし
「僕たちも行きます。」
藍白とタガメも校舎内へと入った。


幻覚は学校内で、”絶賛” 続行中です。
次回は、2匹目のライガの行った場所を探して学校内を巡ります。

作者より

次回

第18章ー第二都市(学校)
2,「いませんね。」

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