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就農8年目(農園5年目)の反省と展望

2021年も残りわずかとなりました。今年のりんごは「凶作」でそもそも生産量自体が少ないというなかなかの状況でしたが、それでも続いていくのが経営であり農業であるわけで。

天候などに左右されるので毎年同じように……とはいかないまでも、その年ごとに、そして経験を重ねるごとに見えてくること、反省すること、考えることがあるわけです。今後に活かすために振り返っておこうと思います。就農8年目、農園5年目の反省と展望です。

栽培技術をあげる

ベテラン農家と何が違うか。それはひと口に「技術」と言えなくもない。けれどそもそも「技術」って何?というところは経験を経て少しずつわかってきたような気がします。

工芸作家のように、なんというかものすごい器用さがどんどん磨かれていって神レベルに……熟練としか言いようがない、緻密に積み重ねられた能力というのが「技術」と思いがちだったのですが(少なくとも私は)、りんごの作業においては、なんてことはない「タイミングを逃さない」そして「適度にスピード感がある」あたりが技術のポイントであるような気がしてきました。

畑にいる時間を増やす

本当に些細なことなのですが、農園として5年目、「タイミングを逃さない」これが実に難しい。おそらく、このことに関しては、少なくとも畑に出ている絶対時間がある程度確保されていることがベースにはあります。

え?長時間労働?今の時代に?と思わなくもないのですが、長時間ではなくても本当にちょっとしたことで、例えば夏なら朝食前の2時間/昼休憩を長めにとって、夜は7時過ぎまで作業、これを毎日きっちり続けることってやっぱりすごいと思うのです。愚直なまでもの勤労。子育てしていたり、何かと事務作業を引き受けがちな我が家の事情はあるのですが、やっぱり少しでも「畑にいる時間」をきちんと確保すべき。まずはこのことを意識していきたいと思います。

自分1人でやることが無理ならば人手を入れる、そのあたりの経営判断も含めてとにかく「畑に人がいる時間の総合計」を増やすことで、もちろん作業自体のスピードUPにもつながるし、なによりもいろんなことに「気付ける」。そこが大きいと思います。

今年あった実例としては、あ、もう1回玉回ししとけばよかったとか、もうあと数日早く葉摘みに入って、あともう1周しておけばよかった……などです。市場出荷などを考慮した場合、この葉あとがなければ、1ランク上の単価になった、別の出荷先を選べた、などりんご1つ1つの単価UPにつなげられた。そういうちょっと惜しい事例を少しでも減らすために、早めに作業に入って早めに気付くことができれば、追加でバイトさんを頼むことも可能だったし、スケジュールに余裕があれば自分たちでなんとかすることができたはず。

作業スピード

適度なスピード感、についてはこれは「熟練」の部分もあるのかもしれません。りんごの木は多数あるので、1本ずつ慎重に吟味して作業するということはなかなか難しい。場合によっては量より質が求められることもあります。もちろん木ごとに個性があるので、それに応じてやらないといけないのだけれど、いつまでもどうすべきか迷っているのでは全体として作業が滞ってしまう。

作業自体に慣れて1つ1つの作業を速くこなせるようになることに加えて、おそらくこの部分は性格によるところも大きいのですが、適度に「適当である」「1度見たところは振り返らない」という心で作業に臨むことが結構大事だと思います。この辺も踏まえてもやっぱり「どれだけ作業をするか」が本当に大事だなぁ……というところに行き着きます。(別に作業をサボっているわけではないのですが、効率を上げることも含めて改善の余地があるなとシンプルにそう思います。)


農園のソフト面の区画整理

2021年は、凶作だったという状況に加え、その他諸々の巡り合わせでよく考えることが多い年でした。まずは毎年募集していた「りんごの木のオーナー制度」のサンふじのオーナー募集を見送りました。マイナスなことばかりではなく、農園の動きとしてはセミナーに参加してみたり、久々にマルシェ(12月に二子玉川のマルシェ「ふたこ座」)に出店してみたり。そしていつもお願いしているジュース加工所が、急遽事情により使えなくなり加工所を変えなくてはいけないという事態もあったり。何かと盛りだくさんの1年でした。

おかげさまで、農園として自分たちがどうありたいか&どうなりたいか、そして現状の課題は何か、今取りこぼしているポイントは何か、何をすべきか、どういう視野を広げるべきか、などなどはものすごく考えることができました。

そこから導かれるのが、まずは「いいりんご」を「たくさん」「安定して」つくる、そして品質を上げて単価を上げること、そこからの「栽培技術を上げる」さらには「計画的な改植」につながってくるわけですが、それはもう農家としては王道中の王道というか、基本中の基本というか、いわずもがなの頑張りポイントであって、意識せずともそう努めるべき事柄です。

発信したい情報のまとめ方を考える

イベントやセミナーで自分たちの農園をさらけ出すことで見えてきたのは、私たちの農園は「想い」の部分は強くて独自の取り組みは比較的とチャレンジングにやっていくけれど、その情報がとっ散らかっているというか、うまく整頓できていないというところがかなりわかってきました。

例えば、ブログもやってこのnoteもやってFacebookもTwitterもやっている。けれど、どれがコアなの?どこのページに飛ばせばいいの?などなどは不明。私たちも混乱しながら、気分で使い分けている。農園の情報の入り口がわかりづらい(自分たちもわからなくなってきている)。

それでもSNSをやらない手はないよ、特にインスタは……などなどはよく言われるのですが、それだけではもう追いつかない情報が農園に蓄積されていて、逆にわかりづらくなっているわけです。

そこで、2022年はホームページを作ろうと思いました。そこを「入り口」にして、フライヤーやお客さんへの紹介のリンクはホームページ一択にする。農園にまつわるリンク集の意味合いも込め、想いはnoteに、その他SNSは告知と更新のお知らせに、日々のおしゃべりはブログに……とニーズによって飛べるようにしておく。同業者・偉業者問わず仲間のリンクも貼っておきたいものです。ただし基本的な情報はダイレクトメールで優先的に・限定的に送るというスタンスは変えません。そんなことを思っております。

りんごにまつわる「表現」と「規格」を見直す

りんご農家の「当たり前」をお客さんの「当たり前」だと思わないこと。これも2021年に痛感したことでした。

そもそも「規格外」って何?というお話です。規格って考えてみれば、流通させたい側が勝手に作り出した枠組みでしかないんですよね。私たちが勝手に「このりんごは売るにはちょっと……」と思いすぎて、売り控えしていることにも気づきました。もちろん、既存の規格で見ているからそういうことが起こるのであって、規格はその状況ごとに定めて、私たちとお客様がお互いに納得できるよう、その機会づくりをそもそもするべきだな……そんなことを考えています。なので極力「規格外」という言葉を避けてやっていきたいなぁと決意しました。

また規格にまつわる表現としては、直送している家庭用規格の「ハネだし」という表現も来年は見直す予定です。

情報発信の方法を考えることと重なる部分もあるのですが、例えばりんごジュースの「りんご100%、砂糖を加えていません」や、「長野県のりんごは樹上完熟です」などなど、農家にとって当たり前じゃん!とかこの辺の農家はみんなそうだよ!そんなことわざわざ言うなよ!というあたりの邪念はさっぴいて、きちんと言うべきところでは言おうと思いました。(その「言うべきところ」の区画整理、まずはがんばりま〜す)

2022年もよろしくお願いします

まだ少し残っている事務作業などは細々とやる予定ではありますが、そろそろ年末にもなりますので、思い切ってしばらく冬休みとさせていただきます。12月26日〜1月6日あたりまでは、発送などは止めさせていただき、お問い合わせへのお返事も遅くなりますことをご了承くださいませ。

来年のプチ目標としては、畑及び農作業の時間はしっかりと確保しつつある程度オンオフのメリハリをつけられればなぁというところもあります。

そしてきっちり納品をすること!手を出した仕事やプロジェクトはきちんと追っていくこと・放り出さないこと!などなど、どうしても基本の「き」ばかりが頭に浮かびますが……。まだまだ伸び代があるということですね、きっと。

2021年、ありがとうございました。2022年もよろしくお願いいたします。





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