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りんごジュースはお好き? 〜弐七農園のりんごジュースについて〜

弐七農園では毎年りんごジュースを作っています。こだわっていることはいくつかあります。

○りんごの品種ごとにしぼる。なので年間6〜8種類のりんごジュースができる。
○小瓶(180ml)の飲み切りサイズをメインに製造・販売。
○酸化防止剤無添加。時間の経過とともに味や風味が変わるけれど、りんごそのものの味と風味にこだわっている。
○アートワーク(=ラベル)とタイトル(=商品名)をCDジャケット風にデザインする

当たり前すぎて今まであまり記載したこともなかったのですが、もちろんりんご100%でその他のものは何も加えていません。というのも、ネットショップなど、よそのりんごジュースが売られているのを見ると「砂糖を加えていません。りんご100%でこの甘さです!」とうたっているものが多く、あれ?当然だと思っていたけれどこれはちゃんとアピールするべきなのか?どうなのか?と不思議になったのが最近のこと。考えてみれば、りんごはジュースにしてもかなり甘みが強いので「砂糖は入っていない」と断りがあった方が丁寧なのかもしれませんね。
……甘いもの、糖度の高さがもてはやされる風潮に懐疑的な部分を持ち合わせている私たちではありますが、農家の「当たり前」がそのまま通用するわけではないのだなぁとハッと気づくこともあるというわけです。

小瓶へのこだわり

当園でも大瓶(1000ml、ファミリーボトルと呼んでいます)は作っていますが、メインは小瓶です。なぜか。これはお客さんに言われた言葉がきっかけです。

おいしいものを、欲しい分だけ、常にフレッシュな状態で飲みたい。

あ、それ、当たり前だけど案外抜け落ちていた視点だなぁと気づいて、以来小瓶メインに変えました。たくさん飲むならファミリーボトルでいいじゃない、と思いがちですが、小瓶を沢山!でもいいわけですね。「大は小を兼ねる」その発想はもう古いのかもしれない。そんな気づきのあったコメントでした。
小瓶だと「ちょっとおみやげに」「ちょっと喉がかわいたから」そういった“ちょっとだけニーズ”に応えられるのも嬉しい。大瓶を開けたけど飲まないうちに傷んじゃった……というリスクもない。
直売所のお土産コーナーに、そして温泉施設の売店冷蔵庫にも置かせてもらっております。もちろんこちらは直送もしております。

酸化防止剤無添加

酸化防止剤とはいわゆるビタミンCというやつです。これを入れると長い間、色は綺麗にキープされます。出来上がりの色もくっきりはっきり澄んだ印象。だけど、後味がどうも気に入らない。りんごをそのまま楽しんでもらいたいという思いで作っているので「見た目」よりも「味」にこだわりました。搾汁から時間が経過すると、確かに色のキリッと感は落ちます。そして品種によってはそれが顕著にあらわれるものもあります。なんだかくすんでいるというか。でも、時間の経過とともに味わいもまろやかになるのもまた事実。そのあたりも含めて楽しんでもらうのも悪くないかもしれない。そんなことを意図しております。搾汁から日が浅いと、いい意味でのりんごの青臭さというかフレッシュ感が活きてます。

品種ごとにジュースをつくる

これはこだわりというよりも、もともとは苦肉の策でした。私たちの農園ではりんごを貯蔵しておく冷蔵庫を持っていません。なので、夏から収穫が始めて11月に最終の収穫を終え、さあ取っておいたりんごをミックスさせてジュースをつくろう!ということができない。そこまでりんごをストックしておくことができない。なので、1品種収穫を終えるごとにジュースを作ってしまおう、最初はそんな必要に迫られて始めた取り組みです。

実際に品種ごとに作ってみると、味の違いがまぁまぁ出て面白かったので続けております。そして「りんごを楽しんでほしい」という想いでこの仕事をやっていることもあり、「りんごっていろんな種類があるんだ!」ということをジュースを通じてお話しできるので助かっております。

アートワークへのこだわり

ラベルといえばいいものを「アートワーク」だとか「ジャケット」と呼ぶあたり、なんだかなぁと思わなくもないですが。ラベルはデザインから印刷、貼るところまで農園でやっております。

私たちには「せっかく農家をやっているんだから」「せっかく自営業なんだから」というよく言うセリフがあって、仕事の中に多分に私的な思いや楽しみを込めようとする癖があります。これを会社組織の中でゴリゴリと他の人たちに浸透させようとするとたまったものではありませんが、自分の仕事の範疇の中であれば悪いことではないと思っています。なので、デザイン楽しそう〜という妻の趣味と、昭和レトロなレタリングが好き・音楽好きなのでCDジャケットっぽく、タイトルも曲っぽくという園長の趣味を形にした結果、このようなスタイルになりました。特にThe Beatlesはよくエッセンスとして取り入れております。

毎年デザインを刷新するわけではありませんが、結局のところ夫婦どちらかの「飽きた」の一言で2年くらいおきにそれぞれデザインが変わっている気がします。女の子のイラストが取り入れられることもありますが、これは一度出来心で作ってみたら売れ行きが好調だったので、気を良くしてデザインしてしまった(けどそろそろ飽きた)だけなので、今後は違うテイストでやっていきたいなぁと思っております。

課題もあります。印刷の質は家庭用プリンターでは限界があって、ラベル紙選びにも苦戦。おそらくネット印刷に出した方がコスト的にも質的にもいいことはわかっているのですが、なにせ品種ごとにしぼっているためにロットがクリアできない。1枚あたりにかけられるコストを考えるとレーザープリンタになり、そうすると選べるラベルは限られる。温度差によってシワができてしまったり、印刷がクリアになるとは限らなかったり、うーんと思うところは多々あります。そしてデザインだって趣味の範囲を抜けきれていないので、どこか垢抜けなさがあるというか素人感が滲み出ているというか。そのあたりも徐々に抜け出せればいいなぁと思います。

ただ、自分たちでラベルを作っているのでマイナーチェンジが可能なのはメリットです。例えば友人の内祝いラベルを作ったりということが可能。このあたりのカスタマイズに関しては今後もう少しきちんとやっていく予定です。

ジュースを作ってみて思うこと

当園のりんごジュース作りは「小瓶・小ロット・多種類」展開なので加工は嫌がられます。そして手間もかかります。なので加工所が限定されるという壁にもぶつかりがちです。特に2021年はいつもお願いしている加工所が事情あって使えず、方々にかけあって形にすることができました。

りんごジュースは、りんごを選別して(ここまでは農家マター)洗い、りんごを刻み潰す→濾す→煮る(アクをとる、濾すなど加工所次第)→瓶詰め ざっくり言うとそういう工程でつくるので、小ロットだと割りに合わない、小瓶だと面倒臭いというのは容易に想像できます。そして万が一何かあった場合のことを考えると「酸化防止剤」を入れて味をキープしておいた方がリスクが抑えられるのも事実。(加工所でクレームが発生するとものすごくシビアな現実が待っていると思われます。)そういうわけで、加工所の世界では大瓶・酸化防止剤使用という作り方がまだまだメジャーです。小瓶を作れる、そして酸化防止剤を使わずに作れる、そして小ロットでも受け入れてくれる加工所、実は少ないのです……。

そして農家側だって、加工品を大々的に推しだそうとはしていない。余ったりんごをとりあえずもったいないからなんとかして、まぁ作ったジュースは自家用+αでいいや……というところも結構ある印象です。だから小瓶だろうと大瓶だろうとそんなに大きな問題ではない。

感じるのは、「もったいないから」の視点で物事をどうにかしていたのはちょっと前で、今は「もったいない」のその先まで考えないといけないよなぁということ。それでSDGsとなるわけですね、きっと。
「もったいない」の結果としてなんらかの形にしても、それが必要とされなければ自己満足でしかないわけで、きっかけは「もったいない」でもその先の消費活動は「これ良い◎これ素敵◎」であってほしい。私たちはその努力をしないといけないなぁと思います。ジュースを作りながら考えるのはそんなことです。
そういうわけでゆくゆくは地域に加工所を、という野望がちらつきはじめた就農8年目です。

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