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#92 介護施設におけるろう難聴者支援の実態と専門職連携の重要性

日本の総人口における高齢者の割合は年々増加しています。また、日本に住む65歳以上高齢者の認知症発症率は約15%、6、7人に1人の割合であると報告されています。
このような傾向から、提供するサービスの内容によって差はあるものの、介護施設の数も増えています。その一方で、手話のできる介護施設は、全国で8法人10施設と依然として数少ないのが現状です。


にいまーるが拠点を構える新潟市江南区にも、ろう難聴者の受け入れを前提とした介護施設がないため、当法人の施設に通う利用者は、近隣の介護施設を利用されています。

当初は「聴者ばかりの介護施設には行きたくない」と拒絶されていましたが、数回の利用を経た今、「今日はお休みの日か、残念。行きたいなぁ」という反応に変わりました。

同じ介護施設に通われている聴者の方々とも、「隣の◯◯さん、入院したんだって。大丈夫?」「もうすぐ展示会があるから一緒に頑張りましょう」と雑談したり、簡単な挨拶や手話を教えたりと、楽しい様子が伝わってきます。



にいまーるとして、ろう難聴者専門の介護施設を設立できれば一番良いですが、それをすぐに実行するのは困難なので、既存の介護施設との協働という形で、間接的に介護サービスの提供を実現しています。

ろう者の介護で特に懸念されているコミュニケーション面については、当法人と介護施設とで知識を共有し、利用者さんの希望を確認しながら、孤独にならない環境作りを話し合いました。また、手話通訳派遣制度も活用しながら、ろう者自身が「介護施設とはどういう役割なのか」を理解し、必要なサービスを享受できるように何度も話し合いを重ねました。

ろう難聴者が介護施設を利用することで、ろう難聴者について理解してもらうきっかけにもなりました。介護業界における「耳が聞こえない」という言葉は、「耳が遠い」を意味することがほとんどです。そのため、初めてろう難聴の利用者を受け入れたときは、介護施設側としても戸惑いがあったようですが、現在では、手話を覚えたり、情報を紙に書いて用意したりとコミュニケーションの工夫がされています。

また、にいまーるとしても、他施設との連携によって支援の質を向上させることができました。手楽来家(B型)とかめこや(GH)では、毎日、利用者のバイタルチェックを行っていますが、あくまでも専門は障害者支援なので、特に、健康面に関して、自分たちの目だけでは気づきにくい部分があります。そこに介護の目線から意見をいただくことで、利用者に聞き取りをしたり、受診を促したりと、健康面での支援を充実させることができています。




既存の施設を活用するには、単に利用契約を結ぶだけでなく、ろう難聴者の背景について正しく理解してもらえるようなアプローチが求められます。どういう時に耳が聞こえなくて困るのか、聞こえないとはどういうことなのか、という身体的な感覚を言語化し、本人の希望とあわせて専門職同士で共通認識を深めていくことが大事になってくると実感する日々です。


参考)
#85 手話を使う介護施設で働いて

デイホームひまわり様
HP:https://himawari.homes/
X:https://x.com/syuwaru?s=21&t=9oUjR229NDnBM22006srwg



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文:臼井千恵

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