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オッドタクシーの面白さをビジネスで語る【ODDTAXI】

 先日『ODDTAXI』というアニメを見たら思わず感動したので、転職エージェント的にキャリア視点でちょっと語ってみます。

 作品紹介は、公式YoutubeのPVを見ていただくのが早いかと思います。ストリーミング再生して、気になったら読み進めてください。

 Amazonプライムビデオで、無料で全13話が見れます。

※はじめに
①:画像は公式サイトから引用しています。
②:重要なネタバレはしません。前情報ナシで見たい方はそのままAmazonへGOです
③:古のオタクにしか分からない表現が出てくるかもしれません。

✔︎【集客観点】演出としての動物は、「見やすい、触りやすい」

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≫ストーリーはこんな感じ。

≫作中人物の相関図はこんな感じ。

 未視聴の方は上記だけ見ても「なんじゃこら」だと思いますが、とりあえず「タクシー運転手のセイウチを取り巻く、喋る動物が出てくるアニメ」だと認識していただければOKです。

 このnoteにたどり着く方は、普段の生活でも広告を「広告だ」と認識しながら消費するタイプだと思います。つまりネットリテラシーが高くて、何かを売りつけられそうになったら適切に察知・警戒できると思うのですよね。(そういう方しか読まない設計を私も意図的に作っています)

 さて、そういう新規の方を取り込む上で、コンテンツの作り手は何を考えるかというと「親しみやすさ」を演出するわけです。ちなみに下記の言葉のニュアンスを全部ひっくるめて、親しみやすいと表現しています。

・難解で面倒くさそうではない
・ウザくない
・自分の日常で関わったことがある
・「売りに来てる」感じがしない

 トラウマを抱えた一部の方をのぞいて、動物は親しまれます。大雑把に言えば、動物が登場するコンテンツに対して、ペットを飼ったことがある層は抵抗感を持たずに見てくれます。

 他人が儲けることを嫌う性質を持つ方も少なくありません。古の掲示板では「嫌儲」(けんもう)と読んだりしていましたが、つまり妬み嫉みというのは多くの人間が自然と持つ感情です。リアルの人間が出てくるよりデフォルメされた漫画や動物がフォロワー以外にリーチしやすいことの要因ではないかと察しています。

例)
・Twitterでは4コマ漫画が拡散されやすい。でも拾い画などのネタツイにはアンチが湧きやすい
・Instagramではペットや風景の写真が拡散されやすい。でも美男美女の自撮り投稿には不審者やアンチが湧きやすい
・TikTokでは猫や犬の投稿が拡散されやすい。でも人気者になりたい実写投稿には否定コメントもつきやすい

 コンテンツの認知度を上げるためには滞在時間を延ばす必要があるのでアンチも養分で…みたいな話は割愛します。重要なのは「同じ脚本を人間じゃなくて動物としてキャラデザしたことで、新規ユーザーが手に取りやすい」ということです。

 「41歳のセイウチがタクシードライバーで、承認欲求が強いコビトカバの大学生を相手にボソボソと正論パンチでぶん殴ってる」「セイウチの友達は医者のゴリラと貧乏なサルで、カンガルーの女将が切り盛りしてる居酒屋で喋ってる」とか。これが人間であるよりも動物として描いた方が手に取りやすい感覚は伝わりますよね?

✔︎【脚本とキャスティング】『オリジナルアニメ』の良さを最大限に活かしている

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 オッドタクシーは『P.I.C.S.』と『OLM』の共同制作アニメです。テレビ放送直前にコミックも出版されましたが、要はよくある「週刊誌や月刊誌で連載されてた漫画がアニメ化した」ものではなくて、映像制作会社によるオリジナルアニメです。

 ピクスとオーエルエムは、いずれも持株会社が『IMAGICA GROUP』です。めっちゃ簡単にいうと、グループ会社のシナジー効果で「アニメ制作・営業広報・コミカライズ」などをスムーズに行えるわけですね。マニア向けに紙でもKindleでもコミックが用意されているので、ハマった方はぜひ支援を。

 さて本筋ですが、たとえば「漫画原作があって、舞台化や実写映画化することには反対!」という気持ちの方がいます。制作側の都合で演出が変わることに疑問を抱いたり、「あのキャラクターはこの俳優が演じるのって、全然イメージと違う!」みたいなことが反射的に起こるんですよね。つまり原作愛が強いのです。

 一方のオリジナルアニメですが、比較対象となる「原作」がない(または認知されていない)ので、上記のような否定感情が生まれづらいです。難しさとしては「作品の認知度がないので、初動で集客しづらい」ことですね。


 …ここまでが一般論で、ここからが掘削した捉え方です。オリジナルアニメの「オッドタクシー」は、クリエイターがエンタメを追求した作品になっています。どういうことかというと、たとえばキャスティング。声優の起用を「主柱を本職の声優、芸人役は本職芸人、素人役や端役には俳優と声優と芸人を織り込む」といったスタイルにしています。

声優のキャスティングが与える印象
・声優のみで構成:声優目当てのファンは見るが、それ以外の一般層にリーチしづらい。オリジナルアニメとしては拡散力が欲しいところ
・声優以外の芸能人のみで構成:アニメーション作品としての完成度に支障をきたす。
・本職声優もいるが、主演を声優以外の芸能人に充てる:集客目的が見え透いてしまい、半端な作品が生まれてしまう

 めちゃくちゃ主観ですよ。でもこちとら古のオタクをやっていて、中立の立場で長年いろんなメディアミックスを見ている中で、検討外れな意見ではないと思っています。
 「そんなもん気にしないで見るわ!」というライト層は、本記事をご覧になっているリテラシーが高い皆さま(想定読者)じゃないので、気にせずお話しています。ただ、不快に思われた方がいたらスミマセン。

 さておき、オッドタクシーがオリジナルアニメとして認知拡大に努めつつ、プロモーションや原作に縛られずアニメーション制作会社(作り手)の意志をダイレクトに作品へ反映させることができた。言ってしまえば「アニメーションとしての融和点」をしっかり見出して世の中に出した作品だと思っています。

 「なぜ芸人を起用したのか?」「なぜ独立したての俳優を起用したのか?」この辺りは声を当てているキャラクターと照らし合わせながら見るとドチャクソに面白いので、百聞は一見にしかずですね。

※noteの仕様で「Amazonで購入する」と表示されているかもしれませんが、プライムビデオで無料で見れます。(2021年8月現在)

✔︎余談:脚本の此元和津也氏は『セトウツミ』の作者【限界オタクの小話】

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 本作の脚本は此元 和津也(このもと かずや)氏です。オリジナルアニメで初めて脚本を務められました。此元氏は2018年からピクス社に所属していますが、2013〜2017年は漫画家として『セトウツミ』を連載されていました。

 セトウツミは個人的にコミックスが好きですが、実写映画ではまだ爆発的に売れていなかった頃の菅田将暉さんや池松壮亮さん、中条あやみさんなどを起用していましたね。

 実写の映画と実写のTVドラマが「同じ原作で、別のキャスティングで」届けられることは往々にして起こります。セトウツミも例に漏れずでしたので、ドラマファンは一部「うーん」という感じだったかもしれません。そんなテレビドラマファンにお伝えしたいことが一つ。

セトウツミの主役がひとり「内海想」をTVドラマで演じた高杉真宙さんは、オッドタクシーの声優としてキャスティングされています。

 これが此元氏による意思のあるキャスティングだとすれば、所属事務所との契約を解除した高杉さんの長年のキャリアが制作サイドに評価されたことにもなり、喜ばしいことですね。


 芸能ゴシップには明るくないのですが、高杉さんと菅田さんは2013年に『35歳の高校生』というTVドラマで共演されていた際の演技が好きでした。野村周平さんと3人でカーストトップの男子を演じていましたね。山崎賢人さんや新川優愛さんが爆発ヒットしたきっかけも、この作品だったような気がします。


✔︎【作品のメッセージ】視聴ターゲットは『スマホネイティブの現代社会人』

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 オッドタクシーは「日常であり、群像劇」という表現がしっくりきます。主観ですがこの辺りの作品を面白いと感じる方は好きかと思います。

『夏雪ランデブー』『デュラララ』『新世界より』『PSYCHO-PASS』『さよなら絶望先生』『まりあ†ほりっく』

※白くまカフェを入れないことはヒントであり私の意思です。

 たとえば1話ではタクシーに「コビトカバの大学生」が乗客として登場します。カバはSNSでバズっている人が羨ましくて、自分もバズりたい!と主人公のセイウチに語りますが、セイウチは「なんでバズりたいんだ?」「それって意味あるのか?」と淡々と気持ちを伺っていきます。
 承認欲求を言語化しつつ、悪意なく皮肉になってしまう描写などは痛快さもあり、生き急いではやる視聴者が思わず冷静になるでしょう。そして、そんな人はスマホネイティブの現代人にごまんといる訳で、視野が狭まっていることに気付いたりするかもです。

 視点を変えたり視座を高める機会を「教養を身につける」と表現することがありますよね。教養というのは一般に勉強で得られる印象ですが、時間や気持ちに余裕のない疲れた現代社会人でも接触しやすい、ゆるふわっぽいビジュアルで描かれたオリジナルアニメが思わず教訓になってしまう…。この現象をエンタメと呼ぶことが、実は面白いな〜と捉えたりしています。

 さて、ネタバレせずにここまで語ってみました。告知画像にもキャストの名前がひっそり混ぜ込まれていたりして、「大人の遊び心が垣間見えると楽しいよな〜」と思います。

 どうでしょう、見たくなりました?

 私は制作者が次のエンタメをやるための資金集めの足しになればいいなと思っているクチですので、気になった方は隙間時間でご覧くださいませ。

一応コミックスも再掲。

書いてる人:仁井 貴志(にい たかし)
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本業:転職エージェント/キャリアアドバイザー
個人:ブログ/エッセイ/音声配信など
専攻:産業・組織心理学

ありがたいことに、キャリア相談実績は3,100名を超えました。はたらく系の問題解決は、ブログや音声配信などでも行っています。(活動のまとめリンクはこちらに。)

noteは雑記ですが、カテゴリは大きく3つです。
①:「はたらく」系のコラム
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③:生活の備忘録や体験レポ
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仁井貴志でした。ではまた〜!

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