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料理ってなんだっけ?

僕が店を始めて丸8年。8年前は日本酒の店で海外の料理出してるような店ってあまり無くて,それで色んな国の料理の本を読んだり食べたりして見よう見まねで作ってました。そこから2011年の震災もあり日本中が日本酒が美味しく変わっていた事に気づき,需要が上がり一気に増えた日本酒の店。
日本酒バル特集なるものにうちもよく入れて頂き,ありがたさもありつつ,洋食をそろえた日本酒の店が増え,自分がここにいては良くないと考え店の方向転換を測ったのはもう5年前くらい。そこからまたさらに変遷を遂げ今に至るという感じです。目新しさを追わなくなり,なるべく普遍性のあるものを。そこに季節感を足して日々の違いを作っていくという考えは今でも料理を作るうえで大切な自分の方向性です。素材ありき。これは人と話すときにまず相手ありき。なのと一緒ですね。相手の方が目上であれば,友達であれば,好意を持っている人であれば,当然話し方は変わりますよね。料理も会話も同じ表現ですから素材を見て変わるわけです。誰に対しても同じ接し方はしないです。そこで自分はどういう表現を,料理をしているか最近振り返ってみました。先ほども言った通りまず素材ありき。これが絶対になりますね。素材がとても良く満点であれば手を加えなくても良かったりします。よく言いますよね塩をふって焼くだけで旨い。でも,これをずっと続けていくとどうでしょう?毎日単純な組み合わせでそれを食べ続けたら。僕は心が貧しくなっていってしまいそうです。食事ではなく餌。というと大げさですね。これが大自然の中で日々の生活を感じながらであれば可能でしょう。でも街で生きていきながらそんな生活をするのは好ましくありません。気づかないうちに心がすり減りそうです笑 そうならないために料理ってあると思います。そのまま食べても美味しいもの。塩をふって焼くのが満点であればそこに手を加えつつ,その満点を崩さないよう調理する。調えるというやつです。これってなかなか難しい。そんなとき食べてほしい相手を浮かべて作ります。こんなのが好きなお客さんはこの人だな。とか。そうしてできたものに色んな方が共感してくれればそれは良い料理になるでしょう。食材を仕入れるとき,仕込むとき,なるべくそうしています。素材を活かす時の指針としてこれほどまっすぐなものは無いんです。ちなみ,素材はいつも満点ではなかったりします。ここにプロの仕事があると思っています。微調整ですね。素材をなるべく活かす範囲で味を加えていく。これこそ料理をする人の本領発揮なわけです。耳が不自由な方にいつもどおり話しかけませんよね。泣いてる人にいつも通り話しかけませんよね。飛び上がって喜んでる人にもいつも通り話しかけません。こうして同じ素材でも日々の違いを感じ取り,調整する事が料理の一番大事な事だと思います。

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