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『異境備忘録』の研究(39) -天狗界の修行- ●

#00354 2015.5.15

「小童君に伴はれたるより故ありて川丹先生を師と仰ぎ奉る。川丹先生の命じて杉山僧正等に伴はれ心易くなりて、折々は諸所へ行けども、杉山僧正等の界に入らぬは生涯の仕合せなり。
 然(しか)りとて天狗界を世の人悪しく云ひて譏(そし)り等するは極めて宜しからず。その仔細(しさい)は夜中一人往来の節深更(しんこう)に及び、山中にて天狗を悪しく云ひ譏りて試みるべし。その験(しるし)多くは速やかに来るなり。たとひその時来らずとも一月を経ぬ間には来るものなれば、必ず何も云ひ且つせぬが宜し。
 現世人は疑ひ多くして信ぜず、かゝる事は世にはなきものと疎かに思ひたる人もあれど、幽冥は畏(かしこ)るべきものにて、譏り笑ふ人間も死して後には合点行きて後悔するなり。」(『異境備忘録』)

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