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この夏は島根で”熱い”体験を!奥出雲で1000年受け継がれる「たたら製鉄」とは?

日本遺産普及協会では、日本遺産の各地域の歴史や活動について学ぶ「日本遺産勉強会」を定期開催しています。今回は、島根県の日本遺産「出雲國たたら風土記」の勉強会レポートをお届け。

島根県東部の出雲では、約1400年前から「たたら製鉄」と呼ばれる砂鉄と木炭を用いる鉄づくりが盛んに行われていていました。江戸時代後半から明治にかけての最盛期には、全国のおよそ8割の鉄が、当地を中心とした中国山地の麓でつくられていたそうです。最近だと、ドラマ『VIVANT』ロケ地として話題になりました。また、ジブリの人気アニメ『もののけ姫』に出てくる"タタラ場"のモデルになったと言われています。

そこで今回は、日本遺産「出雲國たたら風土記」の継承活動を行っている、鉄の道文化圏推進協議会 事務局長の高橋千昭さんに、たたらの歴史と取り組みをお話しいただきました。その一部を要約してお届けします。

ー島根の魅力と観光スポット


島根県には現在、7つの日本遺産があります。今回ご紹介する「出雲國たたら風土記」はその一つ。舞台となる島根県東部にある安来市(やすぎし)、雲南市(うんなんし)、奥出雲町(おくいずもちょう)には、歴史や文化が色濃く残り、これらの地域は「鉄の道文化圏」として、古くからのたたら製鉄の伝統を継承しています。まずは、安来市、雲南市、奥出雲町の魅力についてお話しいただきました。

「島根県は多くの自然と文化の魅力を持つ地域です。安来市には、日本の庭園の名所として有名な足立美術館がありますし、どじょう料理が有名で、伝統的な“どじょうすくい踊り”もこの地から生まれました。

雲南市は斐伊川(ひいかわ)沿いに位置し、日本のさくら名所100選に選ばれるほどの美しい桜の景観が見られ、春には多くの観光客が訪れます。また島根は、日本酒の発祥の地とも言われており、田部竹下酒造さんをはじめ、多くの酒蔵が点在しています。

そして、たたら製鉄の伝統を受け継ぐ唯一の地域である奥出雲町には、出雲神話にも関連する多くのスポットがあります。たとえばおろちループと呼ばれる観光スポットがあり、山の中を二重にループする道路が、まるで『ヤマタノオロチ』の姿を連想させます」


「ちなみに、『ヤマタノオロチ』を英雄スサノオノミコトが退治した神話は、奥出雲を流れる斐伊川が舞台となっており、ヤマタノオロチを退治したスサノオが妻となるクシナダ姫と住まいを構えた、日本初の宮とされる須我神社は雲南市にあります。ここは、和歌発祥の神社としても知られています」

「また、安来市、雲南市、奥出雲町は温泉も豊富で、圏域内に12か所もあります。日本三大美肌湯の一つとされる『斐乃上温泉』もおすすめです。もちろん食も豊富で、日本三代そばの一つ『出雲そば』や、金賞13回獲得のブランド米『仁多米(にたまい)』。2022年の『和牛オリンピック』とも呼ばれる全国和牛能力共進会で肉質部門1位を獲得した『しまね和牛』などもぜひ味わってください」

ーたたら製鉄の歴史と技術


続いては、日本遺産「たたら製鉄」について、お話しいただきました。「たたら製鉄」とは約1000年前に中国大陸から伝わり、日本独自の製鉄技術として進化してきたもので、中国地方を中心に発展しました。

「古代から中世にかけて中国大陸から伝わった製鉄技術が基となり、日本国内で独自に発展しました。出雲地方はこの技術を発展させた中心地として知られ、古来から鉄の産地として栄えました。紀元前の縄文時代から弥生時代にかけて、鉄鉱石の輸入が難しい日本では砂鉄が主な原料となり、たたら製鉄が広ったのです。

たたらは、砂鉄、木炭、粘土といった自然由来の材料を用います。粘土炉に木炭を燃焼させ、1300℃まで温度を上げた後、砂鉄を投入し、三日三晩続けて操業します。この過程で、3トン程度の鉄の塊が得られます。

こうして、たたら製鉄が日本刀の製造にも大きく寄与してきました。たたら製鉄で得られる玉鋼は、全国の刀鍛冶に供給され、日本刀の材料として使われます」

ー「たたら製鉄」の活用について


そんなたたら製鉄は、「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」として、平成28年に日本遺産として認定されました。日本の歴史と文化を象徴する重要な技術であり、今後も伝統を守り続けることが期待されています。

「日本遺産認定以前から、たたら製鉄に関連する観光地や施設が整備され、年間を通じて多くの観光客が訪れます。地域には、たたら製鉄の歴史と技術を学べる多くの施設もあります。たとえば、奥出雲町には『奥出雲たたらと刀剣館』があり、たたら製鉄に使われる炉の実物を見ることができます。この施設では、たたら製鉄の炉の地下構造や内部を見ることができ、その複雑な技術を間近で学べます」

「たたらのストーリーを中心に、鉄づくり・産業の物語が楽しめる『産業観光』をはじめ、出雲神楽などの文化・信仰を感じられる『文化観光』、農業体験などができる『グリーンツーリズム』、温泉や登山が楽しめる『ヘルスツーリズム』などにも力を入れています」

「また、地域の子供たちがたたら製鉄に触れる機会として、学校の授業の一環で炭焼き体験などが行われ、実際にたたら操業を体験しています。こうして次世代にも、たたら製鉄の技術と文化を受け継ぐ活動にも力を入れています」

 

ーこの夏は島根で”熱い”体験を!


いかがでしたか。
このように、さまざまな切り口から、たたらのストーリーを堪能することができそうです。迫力たっぷりの「刀鍛錬実演見学」「包丁作り体験」などが現地で楽しめるようですので、まずは実際に体験してみることで、1000年の歴史を感じられるかもしれません。たたら製鉄に温泉に、この夏は、島根・奥出雲で熱い体験をしてみませんか?


協力:鉄の道文化圏推進協議会


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