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海外で実感する日本人としての矜持

私は日本にいるとき、どちらかというと左寄りだった。
しかし、一歩外に出てみると、自分に愛国心というものがあったんだなあと思った。

私のプライベートの生徒さんはまあドイツ人が多い。
(完全日本人と、継承語の日独の人も多いけど)
それから、本人はドイツ国籍で両親がルーマニア人(国籍が今どうかは知らない)が二人(偶然)、ドイツロシアのハーフの子もいる。

これがギムナジウムに行くと、純粋ドイツは一人だけ!
後期は前期取った人だけに限定したので12人しかいなかったけど、10パーセント以下だ!
うちの子たちもハーフだし、ドイツスペインハーフが一人、ドイツトルコハーフが一人、トルコ系(両親はトルコ人、本人はドイツ国籍。ひょっとしたら両親ももう二世でドイツ国籍かも)が3人、インド系オランダ国籍(見た目はインド)、中国系ドイツ国籍(両親は中国人)、パキスタン系ドイツ国籍(両親はパキスタン人)、ポーランド系ドイツ人(両親はポーランド人)という感じ。

もう「なに人?」というくくりってなんだろう?!と思う。
そして、この子たちはそれぞれ両親(ひょっとして祖父母世代)の故郷の国への愛着もある。
言葉もまあ話せる。

ドイツ国籍両親ルーマニア人の子に、「ヨーロッパカップでどこを応援してるの?」と聞いたら、「ドイツとルーマニア」と言っていた。
(トルコ系の子は結構トルコしか応援してないw)
「もし、ドイツとルーマニアの対戦だったら?!」と意地悪を言ったら、ちょっと悩んでルーマニアと言っていた。
「弱いから」とw
分かる、うちの子たちもドイツ対日本なら日本を応援すると思う。
(柔道とかならドイツかもね)

パキスタン系ドイツ人(血筋でいうと100パーセントパキスタン)の子はパキスタンに一度も行ったことはないという。
遠縁はいるらしいけど。
それでもパキスタンに郷愁を感じるわけだ。
自宅での文化習慣はまあパキスタン風なんだろうしね。
離れているからこそ、愛国心というのは強まるんだろうなあと思う。

一方で大学には外国人(ドイツ人じゃない)である留学生もいる。
今のクラスにいるのは、インドネシア人、韓国人、中国人、ギリシャ人など。
留学先で別の言語を学ぶってすごいよね?!

中でも今、韓国人の子が「先生、先生」となついてくれている。
ヨーロッパに来ると、日本と韓国って似てるなあ!と思うんだよ。
だから、彼が日本、日本人にシンパシーを感じてくれるのがよく分かる。
何か日本の話題を出すとあとから「韓国も同じです!」と言ってくれることが多い。
もちろんたまに違うこともあるけど。
(中国と韓国の学校は夜9時くらいまで授業があるらしい!
日本はそこまでじゃなくてよかったよね。まあ塾とかはあるかもだけど)

この間は「『青い珊瑚礁』を知っていますか」って聞かれた。
もちろん知ってるし、なんで彼が聞いたかもわかったので、「この間New Jeansが歌ったんだよね!」と答えた。
ちょうど、そのときの練習が「子どものとき・・・ました」だったので、「子どものとき、聞きました」って言っておいたw
「先生が子どものときですか!」ってこの曲の古さに驚いてたけどね。
でも、ハニの動画をそのあと見たけど、古く感じないというか、古さが新しいというか、かわいかったね。

ともかく、私は授業をしていて、みんなが日本を好きになってくれたらうれしいと思うし、この生徒学生らにとって、自分が日本人を代表しているということをとても意識している。
つまり、私がいやな人だったら、「日本人ってやだなあ」と思われるんじゃないかということだけど、ああ実際にはドイツ人生徒学生はそう思わないだろう。
「この先生いいな」か「この先生やだな」と思うだけだろう。
その国を代表するなんてこれっぽっちも思ってないw
そりゃ、思いすぎだよってことだね。

そういう意味では気は楽だ。
「この先生やだな」「この人やだな」と思われても、「日本人やだな」にはならないから。
でも、もちろん「学生のときの日本語先生はやさしかったな、おもしろかったな、いい人だったな」とポジティブな感想を持ってもらうことは、必ず「日本って面白いな、いい国だな」のあと押しの一要素にはなるだろう。
アニメも好きだし、ラーメンも好きだし、日本語も面白かったし、日本は好きだな、と。

自分が日本人の代表だなんて自意識過剰なんだろうけど、私の知っている日本の教育はそういうものだった。
学校の制服を着ていれば「〇〇学校の生徒としての自覚をもって」云々かんぬん、会社の社章をスーツの襟につけていれば「〇〇の社員として恥ずかしくない行動を」云々かんぬん、オリンピックに出るなら「日の丸を背負い、日本を代表して!」、社用車を運転していれば、「〇〇の会社の人が路駐していて迷惑だった!」と会社に告げ口が入る。

今は個人情報うんたらで、社章の文化は廃れたみたいだけど。
ちなみにドイツだと通勤で会社の制服を家から着ていくんだよね。
うちは空港に近いので、空港行きのバスは制服の人が多い。
この人ルフトの人だ、この人ショップの人だ、この人は警備かな、と分かるw

それで、そのルフトハンザの人が何かひどいことをしたとしても、それでルフトハンザにクレームが行くことはないだろう。
その場でその人に注意はするだろう、でもそれで終わりだ。
それは個人の問題で、会社の話じゃないから。
それが日本とドイツの差だと思う。

日本人としての矜持はあって、それがポジティブにも働いているけれど、外に出てしまうと、日本って狭くて生きにくい国だなあとも思う。
だから、この子たちが日本を旅行するくらいならいいけど(きっと「日本はいい国だった」って思ってくれるだろうけど)、住むとか言い出さないといいなと思う。
がっかりしないように・・・
まあ、それは授業でもよく言っている。
「日本は旅行する分にはいい国だけど、暮らすにはドイツのがいいと思うよ」と。

それでも私は生徒学生たちにとって、日本人の代表だとしてあり続ける。
ドイツ人はもちろん、留学生の韓国人や中国人やインドネシア人が「日本はよさそうだ、好きだ」と思って、自国に帰って、周りに伝えてくれるかもしれない。
それが将来の両国の関係にプラスに働くかもしれない。

そういう草の根レベルの国際交流を、私は日々行っているという自負を持ち続けるつもりだ。






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