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リトルマーメイドはなにも気持ち的なつながりを生まない


先日とても興味深い記事を読んだ。

【Inside/Outside】観光の終焉を宣言したコペンハーゲンの歩き方

英語で45ページにわたる宣言は、「"観光時代"に別れを告げて新たな時代を築きます。2020年、その先に向けて」の一文からはじまり、観光マーケティング担当であるはずの彼ら自己批判的な内容を交えてリズミカルに展開される。
・観光客として扱われたい観光客は激減した
・観光客は一時的な市民として接するべき、コミュニティに貢献できるはずであり、それがきっと魅力になる
・コペンハーゲン市民の生活こそが観光資源
・リトルマーメイドはなにも気持ち的なつながりを生まないが、市民は生んでいる
・マスメディアでキャッチコピーを届けることより、市民ひとりひとりからストーリーが伝わっていくことが大切
・ひとりひとりの体験が伝わっていくことがコペンハーゲンのブランディングの成功指標となる
内容としてはSNS時代を前提としたブランディング理論に基づいていて、先進的な街では他でも語られていそうな内容であるものの、メッセージ性が強く、これ自体がしっかりと目的地としてのブランディングになっている。

デンマーク・コペンハーゲンが2017年、観光地としての自らを改めて定義し直した、というものなのだが、これを読んでふと「採用コミュニケーションも、これと同じ思想で設計すべきなんじゃないかな」と感じたのだ。


観光客として扱われたい観光客は激減した

求職者は、“よその人”として外側から企業を見るのではなく、“中の人”となった未来の自分を想像しながら、企業を見ているはずだということ。自分の今のスキルセットでこの会社のこのプロジェクトに入ったら? この人たちとの日常的な会話って? 仕事を通して自分はこの会社にどう溶け込んでいくのか? を知りたい(願わくば体感したい)。


観光客は一時的な市民として接するべき、コミュニティに貢献できるはずであり、それがきっと魅力になる

まだその会社に入る決意はなくても、一時的にその会社やそこで働くメンバーと接することで、その人自身が会社や会社の人間性のことを理解すると同時に、社内の人たちに対しても刺激を与えることができる。そうして内と外が相互に刺激し合うことで、会社そのものも変化し、なんなら新しい事業の芽もそういうのがきっかけになるかもしれない。


コペンハーゲン市民の生活こそが観光資源

働く一人ひとりの日常こそが、求職者に対する魅力要素。下手に着飾るんじゃなく、いたって普通のやりとり、仕事の生々しさ、そんなリアルが伝わらなければ、人はやって来てくれない。


リトルマーメイドはなにも気持ち的なつながりを生まないが、市民は生んでいる

上に同じ。カウンターバーもマッサージルームも気持ち的なつながりを生まないけど、そこで働く「人」こそがつながりの核である(カウンターバーとかマッサージルームは確かに羨ましいが)。


マスメディアでキャッチコピーを届けることより、市民ひとりひとりからストーリーが伝わっていくことが大切

そのまんま。外部の何某によるステキなコピーじゃなく、働く人たちが発することば、それが求職者に届くこと。会社のコントロール下にないメディア、例えばTwitterでもInstagramでもTikTokでも、自由に発信してる会社なんかは、その端緒が感じられる。ただしそもそも働いている人が会社を仕事をどう感じているかが、そのメッセージの質に影響するので、なかなか踏み出せない。


ひとりひとりの体験が伝わっていくことがコペンハーゲンのブランディングの成功指標となる

リファラル採用はまさにこれが肝だったりする。採用は人事の仕事ではなく、自分たちの日常になっている状態。「ブランディング」ってなんだかカッコいい響きなんだけど、つまり「あり方」ということなんで。働く仲間が自身の体験をどう語っている状態が、自社が目指す姿か、を描いておく必要がある。

・・・

僕の経験上、求人広告や採用広報の仕事をしている人は、ややもするとリトルマーメイドをつくりたがる。僕自身もそうだったし。

だけど、本当にやらなきゃいけないのは、届けるべき人に、届けるべきタイミングで、市民の声を正しく伝えることなんだよなあ。
ちゃんとやらなきゃいけないよなあ、ということを感じたお話でした。

#採用コミュニケーション #リアリスティックジョブプレビュー #RJP #求人広告

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