お蔵出し!文芸研究会・実話系ホラーシリーズ『群夢』

山村:さあ、通信量をオーバーして手足を捥がれたバカな語り手が、唯一出来る事をやって許しを請うコーナーが始まりました。

西脇:許してあげて下さいよ!

山村:これは語り手が所属していた文芸研究会で、適当な筆名で発表した原稿を再録したものです。荒い部分はご容赦下さい。あと、そんなに創作してません

西脇:ヤバいじゃないですか。

山村:禍話で話したかどうかも覚えてません。

西脇:いや、そこは確認しろよ!

 深夜に携帯電話が鳴った。大学の後輩である鴨志田からである。後輩といっても直属のそれではなくて、友人の通っていた他県の大学に遊びに行った際に知り合ったのである。
 話があるのですが、と言って、後日、わざわざ小倉駅まで出向いてきた彼が、駅中の喫茶店で、青ざめた顔で話してくれたのが以下の話である。
 長らく連絡の途絶えていたサークルの先輩(男性)から、相談があるのだが、と携帯電話のメールで呼び出された鴨志田は、大学近くの喫茶店で彼と待ち合わせた。
 やけに顔色が悪い先輩は、開口一番、
「最近、変な夢ばかり見るんだ」と、言った。鴨志田は当惑しつつも、コーヒーを啜りながら、彼の話に耳を傾ける事にした。
 先輩曰く、夢の中で眼が覚める。ぼんやりとした頭で天井を眺める。知らない部屋である。どうやら自分は床に敷いた布団の上に横たわっているようで、掛け布団は無い。起き上がろうとすると、動けない。金縛りに遭ったような感覚である。
 すると、耳元で、ざわざわざわざわざわざわ、音がする。次第に大きくなっていく。目だけは開くので、眼球を四方八方に移動させてみた結果、
「はっきりとは見えないんだけど、僕の周囲を、蟻くらいの小さな生き物が、うじゃうじゃと取り囲んでいるらしいんだ」
 首筋が、むず痒くなるのを感じながら、鴨志田は、話の続きを促した。
何物かの群れは、やがて、先輩の顔によじ登ってきて、そして、口や鼻、耳の中にじゃりじゃりと入っていく。次から次へと。止め処無く。
「痛くないんですか、それ?」
何気なく聞いた質問に、先輩は過剰なまでに反応した。
「そう! それなんだよ! あんなにたくさんの生き物がさ、ボクの穴という穴から入ってくるのに、ぜんぜん、ちっとも痛くないんだ! なんでだよ? おかしいよねぇ!」
他の客の視線を痛いほど感じながら、鴨志田は何とかして先輩を落ち着かせようとした。
「宥めても賺しても、駄目でした。痛みや痒みが有る筈だ、納得できないって、エキサイトする一方で」
 生き物の正体よりも、自分の反応に得心がいかない様子だった。
「そのうち、急に黙っちゃって、下を向いたまま動かないんですよ。
どうしたのかな……って思って黙っていたら、突然、顔を上げましてね。やけに明るい顔になっていて、今日は色々と話を聞いてくれて、ありがとう! って、そのまま立ち上がって、帰って行っちゃったんです」
 先輩は鴨志田以外にも、同じサークルの連中を捕まえては、同じ質問を繰り返していた。
「特に仲の良かった同期の先輩に対しては、もっと詳細に話していたみたいです。その、生き物についてね。なんでも……時々、耳を済ませると、ざわざわざわっていう音の中に、あれ、今のって、人間の言葉じゃないのかな、っていう瞬間があるんだとか……」
 先輩は大学四年生、元来、生真面目な性格である。卒業論文と就職活動のダブルヘッダーで、少し参ってしまっているのだろう、というのが大方の意見だった。
「ところがね、先輩、それからすぐに失踪しちまったんです。一人暮らしをしていたアパートに荷物をすべて残してね」
「何か、犯罪に巻き込まれたんじゃないの、その人」すっかり生温くなってしまったアイスティーを啜りながら、私は内心とは裏腹に、務めて冷静な感想を述べた。
「そうかもしれません。それが一番理屈に合いますからね。携帯も財布も残して雲隠れなんて、普通、ありえませんよね。ただ、そうじゃないんじゃないか、とも思うんですよ。尋常じゃない何かが起きたかもしれないってね……」
「と、言うと?」
「先輩、失踪する前日に、サークルのメーリングリストを利用して、部員全員に、同じ内容のメールを送っているんです。ご覧になりますか?」
 鴨志田は、やけに暗い顔になって、携帯電話を操作していたが、やがてお目当てのメールを見つけたらしく、さらに苦みばしった顔になり、ディスプレイを私に向けた。
件名は、
「何も感じない理由が分かりました」。
本文は、
「僕は奴らの巣だっタノデス。巣ハナニモカンジマセン。カンジルワケガアリマセン ダッテスナンダカラ。セラチント、マハミエ。サンナユヨキンアクミチトナリニクトナリトヲコシ」(以上、原文ママ)。
メールを読み終えた私は、ゆっくりと息を吐いた。
「この終盤の……ええと、滅茶苦茶に書かれたであろう部分だけど」
「はい」
「血となり肉となり、って書いてあるよね」
「……そうです、よね」
「……いや、チラッと、そう思っただけなんだけど、ね」
「…………」
「…………」
先輩の消息は不明のまま、だそうである。

山村:はい、怖かったですね。ハチャ―、群れられたら、タマランなあ。皆さんも気をつけて下さいね。それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!

西脇:何劇場なんだよ!

山村:こんな調子でドンドン、パソコンに眠っていたやつをアップしていくんで、許して下さい本当にすいませんでした

西脇:急にまともなコメントするなよ!あ、あと、もともとやる筈だった、心霊怪奇モノの感想も随時あげていきますから、宜しくお願いします!

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