ご挨拶

山村先生(以下、山村):それでは、メンバーが集まったところで、今日も姫桜高校心霊ホラー研究会として活動していきたいと思うんだけども……ん? なに、そのジトッとした目つき、通称ジト目は。

西脇真奈美(以下、西脇):色々と言いたい事があるんですけど……まず、此処は先生が不当に占拠している空き教室じゃなくて、その「心霊ホラー研究会」とかいう非公認サークルの部室なんですね?

山村:えっ、説明したでしょ?

西脇:私が教室を出ようとしたところを呼び止められて、此処に連れて来られるまでの間、先生は「ちょっと」と「いいから」以外発言してませんよ。

山村:ふぅん、そうなんだ。

西脇:誰目線の返事なんですか。それで、メンバーが集まったとか言ってましたけど、どう見てもこの教室内には私と先生しか居ませんよね。

山村:えっ、ひょっとして貴女、教室の隅にもう一人、居ない筈の生徒が見えたりしてるの!?

西脇:話を明後日の方向に誘導しないで下さい。あの……私、そんな冗談みたいな名前の非公認サークルに入部した記憶は一切無いんですけど。

山村:そうね。でも、このサークル名簿にはハッキリと貴女の名前があるわけですよ。

西脇:……「顧問・山村依里子」と同じ筆跡ですね。

山村:へー、本当だ。こんな偶然ってあるんだね。

西脇:そろそろ帰っていいですか。

山村:まあまあ、いいじゃん西脇ちゃん。あなた、万年帰宅部で、いつも授業が終わったら速攻で帰っちゃうけど、特に塾に通ってるわけでもないみたいだし、家に帰ったら帰ったで、特に趣味も無さそうだから、暇を持て余してるんでしょ。多分。きっと。恐らく。まず間違いなく。確実に。

西脇:人を見た目で判断しないで下さい。ま、まあ……否定はしませんけど。

山村:だったらさ、この非公認サークルを存続させるために力を貸してよ。サークル活動をしているって事で、貴女の内申点も一つプラスになるわけだしさ。貴女にも旨みがないわけじゃない。うひひひ。

西脇:やらしい事を言いますね……。

山村:活動って言っても、貴女の仕事は、私の話へ相槌を打つくらいだから気楽でしょ。あとは、お菓子を食べながら、小一時間ほど教室に屯してれば良いんだから。……へぇ、たむろ、ってこんな漢字なんだねぇ。

西脇:唐突に第三の壁を越えないで下さい。分かりましたよ……。此処に置いてあるお菓子を摘みながら、先生の取り留めのないお喋りに付き合っていればいいんですね?

山村:うん!ありがとう。初めて会った時から、西脇は押しに弱いタイプだと思っていたんだよ!

西脇:全っ然嬉しくない。それで、何についてお喋りするんですか。

山村:心霊物のDVDとか、怪談本の感想だね。ほら、ウチは心霊ホラー研究会だから。「劇場版・のび太の結婚前夜」とか「剣客商売の渡部篤郎が出てたシーズン」の話とかしても仕方ないでしょ。

西脇:それはそうですね。例えが極端過ぎますけど。なんですか、渡部篤郎が出てたシーズンの話って。

山村:敵を斬る時に、ちょっと狂気をチラつかせるんだよね、渡部篤郎の大治郎は。それは渡部さんの持ち味だし、あくまでチラつかせるだけで前面に出てるわけじゃないんだけど、原作では大治郎ってベタな堅物キャラなわけだから、その辺の兼ね合いがね。

西脇:しなくていいんですよ!

山村:まあ、こんな感じで次回から私の与太話にお付き合い願おうというわけ。御理解頂けましたか。

西脇:……よく分かりました。

山村:では明日は、「たんけんぼくのまち」で、教育番組なのに主人公が宇宙人にアブダクションされちゃうエピソードの話をするね。

西脇:心霊の話をして下さいよ!








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?