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80年前の「君たちはどう生きるか」の大事な部分だけまとめてみたら、2020年に通ずることがありすぎた話。【前編】

この記事はこんな人に向いています。

・GWで何か本を読みたいけど、1冊読むほどの気分ではない。
・人間心理の普遍的なことをキャッチしたい。
・「君たちはどう生きるか」の重要な部分をさらっと読みたい。
・座右の銘とかいい話が好き。
・糸井重里さんや、松浦弥太郎さんが好き。


このGWで、積読していた「僕たちはどう生きるか」(吉野源三郎 (著), 羽賀翔一 (イラスト)マガジンハウス出版)を読むことにしました。

原書は、今から約80年前、1937年に山本有三編「日本少国民文庫」の第5巻として刊行された吉野源三郎の児童向け長編小説。2018年に漫画化され、改めて注目されることになりました。

2年前、本屋で平積みになっているのを見かけ、どう考えても大切なことを教えてくれそうなタイトルに心ひかれ、購入を決めたのでした。購入した日には20ページほど読み進めた、が、そこから約2年、一度も開かず今日にきてしまったという...。(どういうことやねん)

ということで、このGWで改めて、というか初めてちゃんと読もうと思ったのでした。そして第3章まできて、

「え、いいこと書いてありすぎじゃん....(笑)」

となったので、まとめながら読むことにしたのです。
ほぼ私のメモのようなものだが、誰かの「読んで良かった」にもなりますように。なお、重要な部分をなるべく本文そのままに抜き出し、一言感想を添えるスタイルでいきます。

冒頭に、叔父さんからコペルくんに当てた手紙

今、大きな苦しみを感じる理由。
それは正しいみちに向かおうとしているから。

ー深い。悪いことに感じる罪悪感も、良いこととは何かを知っていて、そこに向かおうとするからですよね。

ものの見方について

人間が自分を中心としてものを見たり、自分を考えたりしたがる性質というのは、根深く、頑固な物だ。

コペルニクスは、自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると考え(地動説)、周囲の人は、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと座り込んでいると考えた。(天動説)

自分たちの地球が宇宙中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができなくないでいてしまう。

ー今も、「え?何言ってんの?」と思うような常識を覆す意見も、見方を変えると私たちが歴史で学んだことのまさにど真ん中にいるようなもので、でもその時はわからないことがほとんどなんだよなぁと改めて思いました。

真実の経験について

世間には、他人の目に立派に見えるように振る舞っている人がずいぶんある。自分が人の目にどう映るかということを一番気にするようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい、お留守にしてしまう。

人間が集まってこの世の中を作り、その中で一人一人が、それぞれ自分の一生をしょって生きてゆくということにどれだけの意味があるのか、どれだけの値打ちがあるのか、ということになると、僕はもう君に教えることができない。

だからこういうことについてまず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。
そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、くりかえすことのないただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それが本当のその人の思想だ。

人間の結びつきについて

君が生きてゆく上に必要な、いろいろな物を探ってみると、そのために数知れないほどたくさんの人が働いていたことがわかる。それでいながら、その人たちは、君から見ると、全く見ず知らずの人ばかりだ。

人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない。そして、それが、本当に人間らしい人間関係だと、ーコペル君、君はそう思わないかしら。

ーこれは純粋に、うちの会社の理念の「幸せから生まれる幸せ」を思い出した。採用担当をしていて、これに共感した学生さんに多く出会すが、みなさんそれを肌で実感しているのかもかれないですね。

人間であるからにはー貧乏ということについてー

ー今まで割と感想あっさりだったが、特にこの章は、考えさせられることが多かったです。

人間の本当の値打ちは、いうまでもなく、その人の着物や住居や食物にあるわけじゃあない。どんなに立派な着物を着、豪勢な屋敷に住んでみたところで、馬鹿な奴は馬鹿な奴、下等な人間は下等な人間で、人間としての値打ちがそのためにあがりはしないし、高潔な心を持ち、立派な見識を持っている人なら、たとえ貧乏していたってやっぱり尊敬すべき偉い人だ。

だから、自分の人間としての値打ちに本当の自信を持っている人だったら、境遇がちっとやそっとどうなっても、ちゃんと落ち着いて生きていられるはずなんだ。

世の中を正しく知るためにも、決して失ってはならない大切なものなのだ。

なぜかというと、今世の中で、大多数を占めている人々は貧乏な人だからだ。そして大多数の人々が人間らしい暮らしができないでいるということが、僕だちの時代で、何よりも大きな問題となっているからだ。

ーこの物語が書かれたのは、1930年代。1929年に世界恐慌が起き、30年代には日本でも昭和恐慌が起きた時代です。現代ではそこまで格差は感じられないかもしれませんが、それでも年収600万以上の日本の人口が約10%しかいないことを考えると、全体の水準が上がっただけで、当時とそこまで比率は変わらないのかもしれないですね。

それだのに、残念な話だが今の世の中では、からだをこわしたら一番こまる人たちが、一番からだを壊しやすい境遇に生きているんだ。粗悪な食物、不衛生な住居、それに毎日の仕事だって、翌日まで疲れを残さないようになどお、ぜいたくなことは言ってられない。

ーもうこの文章を見て真っ先に思い出したのが、今回のコロナウイルスの発症の原点になった中国の武漢でした。ここまで感染を広めた一つの要因に、公衆衛生レベルの低さが挙げられていますが、実際、感染の1人目が見つかった武漢華南海鮮卸売市場の衛生環境は劣悪。普段は、おびただしい種類の野生動物が販売され、路地裏には動物の死体や内臓が廃棄、下水道は「長年にわたって掃除されていない」とのことです(多維新聞)。中国では、野生動物を食用や医療目的に利用する習慣が深く根付いているため、生活に必要なことなのでしょうが、からだを壊したら困る人たちが、からだを壊しやすい境遇に生きている、というところは、原書が出版され今なお80年が経っても、変わっていないのですね。

見方を変えると、あの人々こそ、この世の中全体を、がっしりとその肩にかついでいる人たちなんだ。(中略)あの人々のあの労働なしには、文明もなければ世の中の進捗もありはしないのだ。(中略)いまの君にしっかりとわかっていてもらいたいと思うことは、このような世の中で、君のようになんの妨げもなく勉強ができ、自分の才能を思うままに伸ばしてゆけるということが、どんなにありがたいことか、ということだ。(中略)君のような恵まれた立場にいる人が、どんなことをしなければならないか、どういう心掛けで生きてゆくのが本当か、それは、僕から言われないだって、ちゃんとわかるはずだ。

ーここでとりわけ思い出したのは、株式会社ボーダーレス・ジャパン。社会問題をビジネスで解決する、ソーシャルビジネスしかやらない会社です。

ー主幹事業であるビジネスレザーファクトリーは、バングラデシュの貧困問題を解決する一つの形として、バングラデシュの革工場で貧困層を直接雇用し、日本の自社ブランドとして販売することで、安定的な収入かつ高賃金を実現しています。ボーダーレスのメンバーとバングラデシュのメンバーでも格差は大分あるのでしょうが、叔父さんの言う、「君のような恵まれた立場にいる人が、どんなことをしなければならないか」をまさに体現していると感じました。


と、ここまで読み進めてきて思うのは、1930年代に書かれている内容にもかかわらず、色あせるどころか、色鮮やかに今の時代を映し出しているという点です。(だからベストセラーになったのでしょうね。)

後半は、次回に続く。

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ちなみに私の会社で、noteを使ったGW期間中の企画も行っている。

①この状況だから
②本当は書こうと思っているけれど、実は出来ていない人への環境を提供したい。

とのことです。そちらもぜひに!






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