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「しゃべる一億円の。」/ショートショートストーリー

友達にばったりと会った。中学の同級生だった頃はよく遊んでいたが、彼が引っ越してそれっきりになった。

彼は飲みに行かないかと俺を誘った。俺は喜んだ。

当時、彼は突拍子もない話をしてはクラスを盛り上げる人気者だった。「しゃべる一億円」という小咄は特に奇想天外だった。その小咄は日曜日、俺の家で聞いたのだ。オチが最高だから、明日学校で話すよと言ったが彼は学校に現れず、担任は彼について引っ越ししたとしか言わなかった。日曜日に聞いておけば良かったと俺は後悔したものだ。

俺はずばり聞いた。

「しゃべる一億円の小咄だけどな。オチを教えてくれ。」

「まだ、覚えていたのか。」と彼はにやりとした。

「まずはトイレに行ってくるよ。」

だが、彼はなかなか戻ってこない。まさかと思って店員に聞けば既に勘定を済ませて帰ったと言う。俺は訳がわからない。

しゃべる一億円のオチって一体何なんだ。秘密でもあるのか。

彼の連絡先を聞いていないのをひどく後悔した。





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