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親愛なるシュバルツ・ベア様

『お元気ですか? わたしは元気です。えーと、それで、わたしは、あのですね。

とにかくは、シュバルツ・ベアさんが、お元気であられることを、深く深く願っており、ですね。はい。そういうわけで、お元気でいて欲しいのですね。 かしこ』

これを兄に確認のために見せたところ、赤ペンで0点と書かれて返ってきた。そうなのだ。わたしは、兄には全く似ずに、文才ゼロなのだ。

見兼ねた兄は、「自己紹介書けば?」とアドバイスをくれた。早速わたしは、

『わたしの家族は母と兄とわたしの3人です。父は訳あっていまはもういません。

母は、市内の福祉施設で働いています。趣味は編み物とお料理です。

兄は高校一年生で、学校ではバンドを組み、ギターを弾いています。兄は、ギターがとても上手で、作詞作曲も自分でやります。すごくいい曲です。

兄はいつもわたしに、「悩んでる暇があったら、とっとと動け!」と言います。目的地が決まっているなら、悩んでるだけムダ。さっさとそこ行きの電車に乗って、どんなに鈍行で、時間がかかったとしても、たどり着きたい気持ちが強ければ、必ずたどり着けるんだから!って。

兄はわたしの自慢です。わたしも兄のようになりたいなと、兄のマネばかりしているけど、到底追いつけません。

でも、いつか、わたしも頑張って、兄が行っている西浦高校に合格したいです!』

「これで精一杯なんだな?」兄は、わたしのこの手紙を読んで、力なく言った。「はい」わたしは力なく返事した。「俺のことばっか書きすぎだけど、まあいいか。最初だし。これでいけっ!」兄はブツクサ言いながら、わたしに手紙を返してきた。

なぜ宛名がシュバルツ・ベアかと言うと、佐伯くんが過って、この手紙を落としてしまい、誰かに読まれた時のことを考えたからだ。佐伯くんて、おっちょこちょいそうだから。

シュバルツはドイツ語で「黒い」という意味。ネットで調べて、英語でもいいかなと思ったけど、ブラックだと、なんか戦隊モノの悪役みたいに感じちゃうから。

シュバルツ・ベアは、黒いベア。黒いクマのくまモン。わたしが大好きなくまモン。

その辺は、この手紙を佐伯くんに託した時に、ちゃんと説明した。佐伯くん、ちょっとムスッとしてたけど。

そして、差出人のわたしの名前もペンネーム。何にしよっかなぁと、いろいろ考えたあげく、、、

                                  『あなたのジュディより』

続く



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