ギャング・ヴァイオレンス・オール・グリーン

 その時、俺はダチとベロベロになるまで呑んでいた。カスみたいな居酒屋で、低学歴の馬鹿な半グレ二人で。「いやぁ金が無ぇ金が無ぇ」と馬鹿みたいに喋っていた。
「いっそタタキでもすっか!」
 俺がそう言うとダチは「やるかぁ!」と乗ってくる。中卒の俺達は地元でもそこそこ名の知れたワルだった。ガキの頃は自販機をバールでこじ開けて小遣い稼ぎをしていた。怖いもの無しだった。
 決行当日になって、ダチが金のある家を見付けてきて、俺達は真っ昼間に押し掛けた。其処に住んでる爺さんをふん縛って転がしておいた。それから金目のモノを探そうとしたところで、玄関が開く音がして、俺達はぶん殴られて気絶した。

 タタキをトチッた俺とダチは車のトランクに放り込まれ、別々の輸送用コンテナに連れて行かれ、俺は夜になるまで屈強なオッサン達に徹底的に殴られた。歯が幾つか粉々になって口から出て行った。
 虫の息で椅子に縛り付けられている俺の前に、五十がらみのオッサンが現れた。かなりタッパがデカくて、和服姿で、首元から和彫りの見切りが覗いていた。
 ヤクザだ、と俺は思った。俺達が襲った家はこのヤクザの身内だったらしい。そのヤクザは俺を見て噴き出した。
「映画とか小説みてぇだな。馬鹿が馬鹿やってひでぇ目に遭うっつー感じの」
 ヤクザに合わせて周りの男達が笑う。
「そんで、馬鹿やった阿呆のお前。どうする? 人生の瀬戸際に立ってんだけどよ」
「ふゅんまふぇん、ふゅんまふぇんふぇふぃふぁ。ゆゆふぃふぇ、くふぁらい」
「何喋ってんのか全然分かんねぇや」
 笑ったヤクザは銜えた煙草に火を点けさせて、その煙草を俺の額に押し付けた。バタバタと暴れる俺にヤクザは言った。
「今んとこ、お前には二択しか無い。俺の仕事を受けるか、お友達の屑みてぇになるか。どっちが良い?」
 ヤクザの言葉の後に、男が台車に乗せて何かを運んできた。トランクに押し込められたダチの死体だった。



つづく(799字)

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