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筋肉は嘘をつかない

筋肉は裏切らないと言ったのは、NHK番組『みんなで筋肉体操』における近畿大学准教授の谷本道哉だけど、精神と肉体は別物という考えが主流であった時代に三島由紀夫が『若きサムライのために』の中で心と身体はつながっている、ということを書いてます。

精神の存在証明のためには、行為が要り、行為のためには肉体が要る。かかるがゆえに、肉体を鍛えなければならない。

本作にも登場するこの言葉、主人公の身体と精神の変化もおもしろい小説です。

フェイク・マッスル  日野瑛太郎

たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たしSNS上で、ドーピンのkg.グを指摘する声があがる。入取材を文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜命じられ、大峰がオープンしたジムへ入会し、潜入取材を命じられる。

講談社

第70回江戸川乱歩賞受賞作品で、筋肉が本物か偽物か誰が糸を引いているのかミステリーなのだけど、主人公の松村のキャラのせいか明るく、軽快でポンポンと読め、おもしろい。漫画のように目に浮かぶおもしろさ。ドキドキハラハラしたり、くすっと笑えたり、えっ?と驚いたり、心と頭を動かせて楽しめます。

わたしは、トレーニングマシーンのレッグプレスとかショルダープレスとか基本的なものはやるけど、重たいものをつけて持ち上げるウェイトはやりません。やらなくっちゃだけど。

そのウェイトのやり方とか、筋肉を大きくするための食事、休養等、筋肉の勉強にもなり興味深かったです。

筋肉は奥が深い。かわいがったりいじめたり休ませたりして育てていくもので、魅せる(見せる)筋肉、使える筋肉、生きるための筋肉があり、心(精神)もそうなのかな、人の多面的なものも、育てていくものなのかも。生きるための筋肉があれば、心も生きることができるかな。

巻末の江戸川乱歩賞の各審査員の選評もおもしろく、お得感があります。東野圭吾、綾辻行人、有栖川有栖、辻村深月、湊かなえと豪華!