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初めてのお見合い。①

実話です。
相手は公務員。給料よき。婚暦なし。年上で頼もしい男と紹介された。
でも私は独身主義。親の要求でお見合いに行くだけ。
優良物件とも言われそうな男は、私のポリシーを破る大ピンチになるのかな?

事前連絡

親と親の知人を通して、連絡方法を交換して、お互いをコンタクトに追加した。簡単な自己紹介して、(嫌でも)会うことに関して、話し始めた。

私から予め伝えたことは「食事の制限があって、外の食事はできませんので、その日は散歩だけ。」
嘘ではない。ただ、もう一つの本音は「仕事以外でよく知らない人と二人きりの食事はごめんだ!」
だって、食事をするぐらい、リラックスさせてほしい。

彼からは特に何の要求とかもなかった。会う場所は私にお任せだっただけ。

では、どうしよう。親の知人の紹介とはいえ、初対面の人に警戒しないと危ない目に遭うかもしれない。それにもし相手が危険な人物であれば、会ってから逃げられようにしておかないと。

その時、ピンと来るのがあの駅とあのルートだ。
実は、私はゲーム『Ingress』(イングレス)のプレイヤーなの。Ingressは拡張現実技術を利用したオンラインゲームで、位置情報ゲーム。プレイするには現実的にあっちこっちを歩く必要がある。ので、ゲームスポットの多い場所やその周辺の駅は私はよく利用するんだ。

それで決まった。待ち合わせの場所はゲームのためによく利用する地下鉄の駅にした。散歩のルートも、ゲームするとき、よく歩いたルートにした。
理由は主にこの三つ。

・馴染んだ環境なので、何があったときは、逃げれる場所や路線は確保しやすいだ。
・ゲームの仲間もよくここで歩き回るので、助けが欲しいときは知り合いにSOSしやすいだ。
・ここは観光地でもあり、博物館、花畑、テレビタワーなど、話題になりそうな所がいっぱいある。

完璧だわ。

待ち合わせ

いよいよこの日だった。

結婚したくない、恋したくない。もちろん、お見合いはただの時間の無駄だと、嫌がってるわ。
でも、相手は今日のためにわざわざ時間をあいて、私に会いに来るから、適当な姿で現すのも失礼の極みだ。そう思いながら、私は自分の美学を表現できる、私なりに正式なプライベート服装を選んだ。

薄く化粧した。ちゃんと巻いてる髪に鈴付きの簪を挿した。少し華麗めな黒いブラウスにカフリンクスを付けた。取って置きの(人工)ファー付きの黒いロングコートも着て、ヒールありのブーツで出かけた。
あ、その日は冬の真ん中で、結構寒かった。

ちょっと早めに駅に着いた。正直、すごく緊張で心配した。
「相手が不細工だったらどうしよう」みたいなことではなく、
「もし相手はすごくかっこよくて趣味の合う人だったどうしよう」の心配だった。惚れちゃって、うっかり結婚しちゃって、子供まで生まれて、自分の人生プランをぶっ壊したらどうしよう。

で、不安してる真っ最中に、相手が目の前に現れた。

スポーツ刈り。細い黒縁のメガネ。上着はダークワインレッドの革ジャケット。ズボンは、まぁ、普通なズボン。靴はカジュアル系の革靴だった気がする。

どうやらお見合いに対して、相手のスタンダードと私のスタンダードは違うみたいですね。もし、これが私の期待していた男の「初めてのデート」の装備であれば、私はきっと怒って帰ったと思う。

でも、これは私が嫌いなお見合いだ。相手がかっこよすぎたらどうしようと、心配しているんだ。不安だった私はこの光景を見て、まるでもう家に帰ってアニメを見てるように、安心した。

「大丈夫だ。この男なら、惚れない自信がある。」

そして、私はその日一番大きい過ちをしてしまった。

自分でも自覚あるほど、すごく明るい笑顔が、私の心の底から顔に浮かんでしまった。

(続く)

次回はコチラです:


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