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勇人#8「20世紀フォックスのインターン」

皆さんこんにちは!ロサンゼルス在住の勇人です。

さて、前回はカンヌ映画祭で目の当たりにしたアンジェイの雄姿とそれに引き摺り込まれた私の話をしましたが、今思うとACTコーチのグレゴアールといい、アンジェイといい、周りにこういったアグレッシブに動く仲間がいたので、自然と私もそういう風にできるようになったのかも。やっぱりアメリカの活動的な人はレベルが違う!特にエンタメ系はね。

さて、そんな恵まれた環境にいた私ですが、まぁ、私もアンジェイやグレゴアールまでいかなくても、自分なりに活動してた方だと思います。アンダーソンに来たばかりの頃から、いくら恥ずかしくても周りに自分は日本とハリウッドをつなぐエンタメの仕事をしたいんだと声を大にして言いまくってました。そうすると、エンタメ業界出身の心優しい同期が「ドリームワークスに勤めている日本人の友人がいるから話してみては」と言ってその人の連絡先をくれたりして、まだアメリカの携帯電話を持っていなかった私は学校の公衆電話からその見知らぬ人に電話をして話を聞かせてもらうなど、かなり健気でした。。。

UCLAのMBAだけあってエンタメ出身の同期もたくさんいて、色々と教えてくれたり相談に載ってくれたりしました。同期には女優や監督や軍人もいたりして、やはり多様性を重視するアメリカのMBAだなと思いました。

さて、ネットワーク、ネットワーク、ネットワーク!ハッスル、ハッスル、ハッスル!をグレゴアールに叩き込まれていた私は、そのマインドセットでMBA生活を過ごしきりました。エンタメ活動に精を出しすぎて学業が疎かになり、ちょっと成績的にやばい時もありましたが、なんとか乗り切りました。笑

そして、大事な大事なインターンを獲得するためにも、そのハッスル精神は必要不可欠でした。

ある日、20世紀フォックスからアンダーソンの卒業生が「Film 101」という特別授業を教えに来られました。これは映画業界の基本を二時間で教えてくれるスペシャル授業だったのですが、毎年人気の講義で、エンタメを目指している人にとってはめちゃ大事な授業。ちなみにアンダーソンだけあって、エンタメ業界を目指して入ってくる生徒は意外に多いのですが、卒業してから実際にエンタメ業界に行く人はかなり少ないのです。もちろん競争率が異常に高いというのもあるのですが、同じ職種(例えばマーケティング)でも、CPG (Consumer Packaged Goods 消費者向けパッケージ商品)など、他の業界に比べて給与がめちゃ低いのです。なので、MBAにかけた費用や学生ローン、金融やCPG業界でもらえる高い給与、MBAで習った事を活かせる仕事、等について考えると、やっぱりそっちに行った方が良いという判断になります、普通は。かくいう私もエンタメ業界に見切りをつけて他の業界に行こうと思った時期も正直あったのですが、他の業界説明会に行っても全くもってワクワクしなかったので、もう無理でしたね。金融の就職セミナーでまわりの同期が目をキラキラしながら聞いていた話も、私にとって退屈以外の何者でもなかったのです。

で、話がまた逸れたので戻すと、このFILM 101、誰もが知るハリウッドの映画会社である20世紀フォックスの人と仲良くなるチャンスだったので、めちゃめちゃ大事な授業だったのです。ハリウッド業界のしくみの説明のあと、グローバル市場がどれだけ大事かという話になり、国によってマーケティングのやり方を変えるという話になりました。当時、日本はまだ大きな市場だったので、もちろん日本の話題も出てくる。例えばアクション映画でも日本ではラブストーリーとしてマーケティングする、など。で、日本の話題になったときは、これでもかというぐらい手を挙げ、自分の意見を述べ、アピールしまくりました。授業が終わったあとは真っ先にその人の所に行き(ちなみにこの人の名前もクレッグ。縁だね!笑)、名刺交換をし(MBA生は自分の名前と卒業予定年度が書いてある名刺がもらえる)、今度コーヒーでもいかがですか、是非お話をお聞かせ願いたいと伝え、その夜、早速お礼メールを出す。

クレッグはアンダーソンの中でもエンタメ業界の卒業生として有名で、とても面倒目の良い先輩でした。コーヒーのお誘いも快諾いただき、早速彼のオフィスがあるフォックスに赴くことに。まぁ、この場合のコーヒーと言っても、先輩の会社にOB訪問してお話を聞く、と言う感じですね。

そして、いざ、憧れのフォックスへ。フォックスは映画「ダイハード」に登場するナカトミプラザの元となった「フォックスプラザ」という35階建てのビルと、その横にある撮影所(スタジオ・ロット)の敷地から成り立っており、映画制作や劇場配給等「花形」とされる部署はこの撮影所の敷地内にあるのです。フォックスプラザの方はDVD/BD/配信等のホームエンターテインメント部門や、IT、法務、人事、管理等の部署が主に入っています。

で、フォックスプラザにはフォックス以外の会社も入っており、一回面白かったのは、フォックスのエレベーターはセキュリティーが少し厳しく、社員バッジがないと上に上がれないのですが(バッジをかざして初めてそのバッジが有効な階に上がれる)、ある日一般人のおばあちゃんがエレベーターを使って上に行こうとしても行けなかったので、誰かが「バッジがないと行けないよ」と伝えて代わりにバッジをスワイプして希望の階のボタンを押してあげたのですが、それでも不服だったようで「なんなのこのセキュリティーは。たかが映画のくせに(It's only movies...)」と言ってのけたのがすごくおもしろかった。他の乗客は皆んなフォックスの人だったので、皆んな笑いをこらえてました。確かに、機密性の高いハイテク技術を持ってる訳ではない。。。笑

さて、クレッグは映画の国際配給部門のVice Presidentだったので、オフィスは撮影所の敷地内にありました。フォックスプラザはモダンな感じなのですが、撮影所の建物は昔ながらのスタジオって感じでとても雰囲気のある3階建ての建物でした。古いから廊下を歩くと軋むという、なんとも言えないハリウッドチックな雰囲気で素敵でした。廊下にはフォックス映画のポスターがたくさん貼ってありました。

クレッグのオフィスでは、クレッグに映画業界について色々と教えてもらい、自分も映画業界に入りたいので何かありましたらよろしくお願いします的な事を伝え、最後に、自分は日本の映画市場のことはよく分かっていて(本当は何も分かってない)、日本語も英語もできるので(これは本当)、翻訳でもなんでもするので必要な時はいつでも声をかけてください、と言い残して帰りました。

そうしたらある日、なんと、クレッグから電話がかかってきたのです!実は日本の興行成績の順位表が日本語で書いてあって、その邦題を英語タイトルに訳してくれないかと頼まれたのです!すぐに必要みたいで、まだ日本のオフィスが開いてないという事で、私に電話したとの事。私のことを覚えていてくれたのです!もちろんオーケーしました。

で、邦題を英語のタイトルに変える、というのは単純に英訳すれば良いわけではなく、元々の原題を調べる必要があるので、少し時間がかかりました。クレッグの期待に応えようと必死に訳して、ちょうど送ろうと思った時にクレッグから先に電話があり、日本のオフィスが開いて英訳をもらうことができたのでもう大丈夫だと言われる。

ガーーン。。。。遅かった!

とショックを受けるも、クレッグから

「でも勇人は私が英訳を頼んだ時に何も言わずに二つ返事で承諾してくれた。英訳する代わりにお金をくれとかインターンをくれとか言わなかったので感心した。なので、冬のインターンをうちでやらないか」

と、なんと、その場でインターンをオファーしてくれたのです!!

嬉ちぃ!!!!

いやぁ、感動しましたよね。そういう事もあるのかと。って事でめでたく、20世紀フォックスでの初インターンをゲットすることができました。

インターン生のバッジは黄色!

第8回ヘッダー

そしてこの「冬のインターン」が、フォックスの他部署での「夏のインターン」につながったのです。20世紀フォックスのインターンの募集はご想像のとおり競争率がかなり高く、しかも劇場配給のマーケティングという花形(撮影所内)の部署だったので、なおさら。レジメを送ったあと、早速クレッグに連絡をし、夏のインターンに応募したので後推ししてくれないかと図々しくもお願いしたのです。そうしたらクレッグはそこの部署にわざわざ連絡をして、私を推してしてくれたのです!クレッグぅ。。。泣

その結果。。。

夏のインターンをゲットぉ!

アメリカではインターンとか就職、転職の際、応募用紙にRecommendationsという欄があり、そこに推薦してくれる人の名前を書かないといけない事が多いのです。大体3人ぐらい。なので、転職の場合、前職のボスと喧嘩したらそのボスの推薦をもらえないので(ボスの名前を書いても、連絡したら悪い事を言われるのでいずれにせよけんか別れしたら書かない方が良い)、周りと仲良くする事は大事。まぁ何よりも良い仕事をすれば推薦してくれるので、何事もきっちりやることが大事ということですね。飛ぶ鳥跡を濁さずとはよく言ったものです。アメリカでも通じます!

クレッグはインターンだけではなく、就職活動の際も快く推薦してくれ、そのおかげでMBA卒業後、フォックスでコンサルタントとして勤務することもできました。この時の事はまた別途詳しくお話します。

クレッグとはその後も関係は続き、ロサンゼルスで「LA EigaFest」という日本の映画祭を立ち上げた際も、クラウドファンディングビデオに出演していただいたり、コンペの審査員になってもらって、優勝者を表彰していただいたりしました。フォックスの役員が審査員だったらやっぱり箔が付きます。グリーンカード申請の際もクレイグに推薦状を書いていただき、もう本当に何から何までお世話になりっぱなし。

第一回目LA EigaFestゲストの山田孝之さんにクレッグをご紹介

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さて、インターンつながりでお話しますと、フォックスでの冬のインターンが終わり、今度は春のインターンを探している時に、ロボコップ等で有名な「Phoenix Pictures」という製作会社で冬のインターンをしていたアンダーソンの同期から声がかかったのです。彼女は冬のインターン先で気に入られ、春のインターンにはまたアンダーソンから来て欲しいので誰か推薦してくれないかと言われ、勇人は興味あるかと声をかけてくれたのでした。もちろんあると言ったら、その製作会社の次のインターン生として私を推薦してくれたので、無事春のインターンもゲーット!やっぱり恥ずかしくても自分が何をやりたいのかを声高に周りに伝えることが大事なんだなと実感しました。

さて、この会社でのインターンは本当にクリエイティブなインターンで、脚本を読んだり、電話番をしたり、社長好みのコーヒーをオーダーして社長室まで持って行ったりと、めちゃハリウッドって感じで面白かったです。ヘッドショットが脚本の隣に山住みされている部屋とかがあり、そこにはナタリーポートマンやニコール・キッドマンのヘッドショットが無造作に置いてあったりしてすごく興奮したのを覚えています。ここが前回お話した、ある部屋を覗き込んだらそこにハリウッドの大物の変わった息子がいて、目が合ってしまったというインターン先です。

まぁ、そんなこんなでこうしてみると、これらのインターンで初めて実際のハリウッドと触れ、ハリウッド童貞を捨てた(捧げた)時だったんだなと改めて思いました。

という事で、今回のおまけは禁断のフォックス撮影所内の写真!(もう時効という事で)

入り口

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受付

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ランチできる内庭

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ザ・シンプソンズ!

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スターウォーズ!左後ろに見えるビルがフォックスプラザ

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歴史あるスタジオビル。廊下が軋む!

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実物大屋外セット。スケールがでかい!

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まるで本物!

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マリリンさん

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ダイナー!

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インターン仲間。彼はUSCのMBA生

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夏のインターン時のボス

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インターン仲間

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スタジオビルの中はこんな感じ

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インターン時の私の机

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ではまたVol9で!

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