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勇人#9「ハリウッド就職事情①」

皆さんこんにちは!ロサンゼルス在住の勇人です。

さて、今回はハリウッドでの就職活動についてお話できればと思います。

何度かハリウッドの就職事情をお話したかと思うのですが、おさらいをすると、基本的にはポジションが空いた時に応募があり、金融のように夏にインターンをやって、その際に内定が決まり、次の年の夏に就職するという形を取っていません。社会人の転職という意味ではポジションが空いた時に応募するのは何も支障がないのですが、学生にとっては、卒業後あるいは卒業直前に就職活動を始めないといけなく、なかなかタイミング的に大変な部分があります。

ネットワーキングやインターン等、卒業前にできる事はたくさんあるのですが、実際の就職活動となると卒業のタイミングでやらざるを得ない状況となります。運よくその前後のタイミングでポジションが空き、募集があり、それに応募し、書類が通り、何段階もあるインタビューのプロセスを突破し、給与の交渉をし、合意し、めでたく就職する、という流れになります。とはいえ、これで安泰という訳でもなく、ハリウッド業界はレイオフ(一時解雇)を頻繁に行っているため常にそれを肝に銘じながら仕事をしないといけないのです。

さて、ハリウッドでの就職はアメリカ人でさえ大変なのに、ビザサポートが必要な日本人となればなおさらです。特にMBAを卒業してビザを取ろうとすると、取得条件にそれ相応の給与をもらう事が必須となっています。すなわち、エンタメの経験がないからアシスタントとして就職したいと言っても、ビザの条件的にそれが許されないのです。まず、給与がMBAの水準に達してないのと、職種もアシスタントなので、なんでMBA卒業してアシスタントなのか、となる訳です。職種や役職はなんとでも言えるとしても給与をごまかすことはできません。また、なんでアメリカ人ではなく、日本人である私を採用しなければいけないのかという理由づけも必要となります。エンタメのバックグラウンドがないだけではなく、このビザというハードルを超えなければならず、覚悟はしてましたが、想像以上に大変でした。

まず、表面的にはどの会社も採用情報のページに行くと、どれも「ビザは出しません」と書いてあります。そう書いてあっても出してくれるところはあるよと聞くものの、おもいっきり「ビザサポートはしません。アメリカで働くステータスのある人のみ応募してください」と書いてある会社に「ビザ必要なんですけど、採用してくれますか」となかなか聞きにくいのが現状。

基本的にアメリカの企業はビザを出すのを嫌います。色々と面倒ですし、わざわざ日本人を採用しなくてもアメリカ人で十分だからです。また、企業がビザを出してくれると言っても、出す出さないを決めるのは国の移民局なんで、せっかく会社がビザ申請をしてくれても、落ちる、という事も全然あり得るので企業としてはリスクでしかないのです。よっぽどその人材が必要と判断しない限りは取り合ってくれません。そもそも一般のアメリカの会社の人事部はビザについてよく分かってない事が多いです。

日系企業であればビザ事情についてよく把握しており、アメリカの会社に比べてまだ出してくれる可能性が高いのですが、給与面でビザ取得規定で定められているMBA卒業生の最低基準に満たすところがほとんどないので、ここでも壁にぶち当たる訳です。

まぁとはいえ、やるしかないのでいろんなところにレジメを出しまくって面接を受けまくって頑張りました。

ちなみに、アメリカにはOPT (Optional Practical Training)たるものがあり、これはF1ビザ(学生ビザ)の延長で、学校を卒業して1年間(期間は学校や専攻による)は働くステータスがもらえるというもので、この1年の間はビザサポートがなくても合法的に働けるのです。

いきなり採用してビザをスポンサーする(保証人になる)となると、企業側にもリスクがあるので、まずは試用期間を儲け、気に入ったらビザをサポートする、という企業もいます。なので、OPTはアメリカで働きたい留学生の必須アイテムなのです!そしてこのOPT期間中が勝負!

ただ、留学生側も気を付けないと、ビザサポートをそもそも最初から考えてない企業も多く、1年間OPTで一生懸命認めてもらうべく働いたあと、やっぱりビザサポートできませんとなったら、今更他のところを探す時間もなく、もう最悪。なので、本当にビザサポートしてくれる気があるのかを見極める事も必要なのです。色々と大変なんですよ、留学生は!

ちなみにちょっとまた脱線しますが、日本人のMBA学生の卒業後の進路として大きく分けて3つあります。
1。社費派遣の場合、帰国して元の会社に戻る
2。日本で就職する
3。アメリカで就職する

鼻息荒くしてハリウッドに挑戦してやる!と意気込むのは良いのですが、上記のエンタメおよびビザの厳しさはアメリカに来てからひしひしと実感し始めていたので、まず、同時並行で日本での就職の可能性も残しておくべきかどうか、真剣に考え始めました。

海外の大学に留学している日本人学生の最大の就職イベントといえば、ボストンキャリアフォーラム。大学生に限らず、MBA生もこのフォーラムで就職先を見つける事が多く、11月に行われるこのイベントのためにみんなかなり気合いを入れて準備します。なので生半可な気持ちで挑むことはできません。

でまぁ、色々考えたのですが、自分の性格でもあるのですが、あまり選択肢を残してしまうと中途半端になってブレてしまうので、自分を追い込む必要があるなと思い、ボストンキャリアフォーラムは結局行かないことに決めました。そう、日本での就職の道が閉ざされれば、アメリカで就職するしかないのです。正に背水の陣!!!笑

ということでボストンキャリアフォーラムの準備に費やすべき時間をエンタメ企業でのインターンやネットワーキング活動に費やしました。やはりあまりにも時間がないので、全ての時間をアメリカに残って就職するための活動に費やすしかないと思った次第です。日本とアメリカの両方で就職活動をする器用さは自分にはなかったのです。

さて、話を戻すと、実際にハリウッドでの就職の厳しさに直面すると、あの背水の陣作戦は正しかったのかなと迷う事もありましたが、日本での就職の道を閉ざしてしまっていたので、ここに120%集中するしかなかったのです。

いやぁ、あの時の精神力は自分でもすごいなと思います。若気の至りですね、完璧。あの当時の自分、頑張ってくれてありがとう!笑

で、色々と就職活動をするも、全く採用の気配がなく、貯金もどんどん減っていき、ついには次月の家賃が支払えない状況にまで追い込まれました。

一瞬、日本に戻って就職活動を始めようかと觀念しそうになったのですが、まぁ、一ヶ月早く帰国したところであまり変わらないので、貯金がゼロになるあと一ヶ月先まで頑張って続けてみようと思った次第です。

まぁ、そんな四面楚歌の状態で就職活動を続けていると、ある日20世紀フォックスで働き始めたばかりのMBA同期から電話があり

「フォックスで日本語と英語ができて、ファイナンスができて、映画業界に興味がある人を探しているんだけど、興味ある?」と。

「なぬぉっ!!!!!!!!????」

救世主現る!?

次回に続く。。。

おまけ

就職とは直接関係ないですが、アンダーソンでは卒業論文の代わりにAMR(Applied Management Research)たるものがあり、グループを組んで実際の企業のコンサルティングプロジェクトに関わり、コンサルティングの結果と提案のレポートを提出する、というものがあります。私は当然エンタメのグループに入り、エンタメに興味あるめっちゃ優秀な人たちのグループに入れてもらいました。ぶっちゃけ劣等生だったのでなんで入れてくれたのかは分かりませんが、みんな優しい。。。

我々は通常の企業のエンタメプロジェクトではなく、エンタメマーケティングのSanjay Sood教授の特別プロジェクトを担う事になりました。ちょうどインターネットマーケティングが出始めたころで、映画公開のテレビ広告に比べてインターネットマーケティングの効果はどうなのかというリサーチをすることになりました。ハリウッドメジャースタジオのマーケティング担当にインタビューしたり、デジタルマーケティング担当にインタビューしたり(当時まだまだ部署としては小さかった)、実験で複数人の生徒にウェブサイトを見てもらって色々テストしてみたりと、かなり本格的に取り組みました。

で、最終的に出した結論は、テレビCMは広い層に認知させるのに向いているが、チケット購入までは行かず、逆にウェブサイトだと幅広く認知させるのには向いてないが、来た人に対してはエンゲージメント(親密度や愛着、関心度)が高くなるのでチケット購入に繋がる確率がテレビより高いという事でした。なので、映画の一番効果的な宣伝方法はテレビのCMの最後にウェブサイトのURLを掲載する、という結論に至りました。

テレビで広く宣伝して、そのあとウェブサイトに行かせ、そこで更に興味を沸かせチケットを購入してもらうという2段階方式が良いと。信じられないかもしれませんが、当時、どのスタジオもこれをやってませんでした。ただテレビで宣伝して、終わり、みたいな。

なのでこの提案はかなり画期的なことでした。当時スタジオ内ではテレビ広告等のトラディショナルマーケティング(従来のマーケティング)部門が幅を利かせており、新しく出始めたデジタルマーケティング部門に関しては否定的でした。なんかよく分からないイロモノの部門としてぐらいしか捉えられていませんでした。

で、この結果を発表した直後、Spider-Man 3のテレビCMが出て、なんと、CMの最後にその映画のウェイブサイトが記載されていたのです!!それまではそんな事全然なかったので、初!!もちろん我々の研究論文を読んで決定した訳ではないと思うのですが(でも協力してくれた方達には論文を送ったのでひょっとしたら?)、少なくとも我々の研究結果は間違ってなかったということだったので、そのCMを見たときは感激しました。

いやぁでも皆優秀すぎて大変だったわ。。。基本、ミーティング中、私は沈黙してます。。。笑

優秀でやさしいAMRのチームメイト達と

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では、#10でまた会いましょう!

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