ナイス害

短歌結社なんたる星所属

ナイス害

短歌結社なんたる星所属

最近の記事

分光器でちゃんと測れるもの

瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』をサラッと読んだんだけど、私家版歌集が相変わらずアンソロジーで紹介されていない事に絶望しちゃう。 誌面で紹介されてる歌集はとても素敵だし、持っている歌集もたくさんあるし、この本が短歌を始める人のとっかかりになればいいと切実に思うし、買ったほうが良い。 その一方でモヤモヤするのは、私家版の歌集でもめちゃくちゃクオリティが高くて素晴らしい歌集はあるし、全くセンスもないのにコネだけで出した歌集より倍も売れてる私家版の歌集もある(と聞いてる)のに

    • チャコのこと

      実家でネコを飼っていて、茶トラの、名前はチャコという。 山形を出てからは数ヶ月に一度しか会うことはなく、帰省の喜びの大半はこのチャコとの再会だ。帰ってすぐは、誰だおまえと訝しがっているが、何度か声を聞いて、撫でてもらうと思い出してくれる。 私が実家にいた時はなるべく外に出さないようにしていた。猫エイズだの、グレー色のボサボサ毛の野良猫のボスだの、外には危険がいっぱいある。 その点、母は昔から外飼い派であったため、玄関先でチャコがニャアとひと鳴きすれば、杖を器用に使いどうぞど

      • レギュラーのあるある探検隊のネタは短歌になり得るか

        レギュラーのあるある探検隊のネタが七五調であることに今更気付いて、飛び起きた。 もしかして、短歌の一部を切り取ってあるある探検隊のリズムに乗せたらおもしろくなるんじゃないか…。 1人でやるのは難しく、壁に手をついて足を鳴らした。 まず自分の短歌から、二句目と三句目だけで完結してるものを選んだ。レギュラーのネタはほぼ終止形なので、それを参考にした。 意外と少なくてしょんぼりしてしまった。あるにはあるけど、初句があっての二句目だったり下の句へ繋げるために助詞で終わっていたりするか

        • 初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』

          立っていて 光の中に さかなかえるわにはとわんこぼく走ってく 初谷むいの歌集『花は泡、そこにいたって会いたいよ』は、とてもとてもまぶしい歌集だった。 そのまぶしさに目をつぶってしまうこともあったけど、読み進めていくことで目が慣れていって、光のあたたかさも感じ取れたところで「この歌集の中の愛は生きているなあ」と思った。 カーテンがふくらむ二次性徴みたい あ 願えば春は永遠なのか ふたりの夜は麦茶がわらうくらい減るふたりでいちばん人間になる わたし

        分光器でちゃんと測れるもの

          おとなの手遊び

          人は無意識のとき、手が「グー」じゃなく緩い「パー」になっていて、指と指もくっ付いていない。どうしてなんだろう。 なんたる星1月号の迂回の連作『手遊び禁止』の感想を書いていきます。 ゆっくりと力をぬいて息を吐き指先はほんとうにありますか 痛みや痒みでもない限り、身体の部位が「ある」ということを意識して生活していない。意識することは、愛情だなと思う。ほんとうにありますか?という聞き方をされると、不安になる。ビット数の少ないゲームの会話のよう。 空港が全部乗ってる薄い

          おとなの手遊び

          ゆっくり明るくなる

          気がむいたらいく植物園 加子のなんたる星10月号連作から歌をいくつか引きます。 くすぐったいところにできる外国の宝石ぐらいあおいろの痣 痣の説明なんだけど、ただの痣じゃなく思えてしまうのは、「くすぐったいところ」の普段見せない場所というか、ちょっとえっちいとこ感が効いているのと、「外国の宝石ぐらいあおいろ」の、価値を与えられたような痣への肯定、だと思います。 痣を受け入れているかのような気がして、そういうプレイの一種を経ての痣、なのかなと読みました。 鍵盤は舐め

          ゆっくり明るくなる

          歌集を出します!

          東京文フリ(G-05〜06)にて、ナイス害歌集【フラッシュバックに勝つる】を上梓いたします。 新作50首を含む242首。大喜利なしです。 表紙と挿絵をはらだ有彩さんに。 跋文を、雪舟えまさんに書いてもらいました。 めちゃくちゃ最高に決まっています。 よろしくお願いします。 勝ちに行くよ。

          歌集を出します!

          ウカイさんの連作の評

          おう、こんにちはだよ。ボビーだよ。 ボビーは短歌のことよく分かんねえけど、なんたる星のコレ、なんかおもしろそーだから読んでいくよ。 http://p.booklog.jp/book/116420 ウカイさんの「なんの違和感」ってタイトル、なんのってオレが知りてーよ! なんの違和感 丸なすをボウルで洗い浮いてくるほんの産毛も水だと思う 資料が渡されたけど、ウカイさんは普段から料理するんだってよ。すげーじゃん!オレなんか家でなんもしてねーもん! 丸なすに産毛

          ウカイさんの連作の評

          「ファ」飽きた

          なんたる星6月号スコヲプ連作評 ビッグ・オー         スコヲプ **ルールなど知らない駒があるとして今日は知らない駅に降りよう 人類は光だったと勘違いしてしまうほど銀色の塔 わからない人らは様にさえなれば凄いと言うさ 無言の咆哮 ビルの谷までも追われる夏虫のいのちを吸って浮かぶ陽炎 僕の名はフローチャートの3番目ぐらいできっと非優先事項 コンビニだ そう言ってから出て来ない次の言葉のための処分場 エクストラバージンオイルを振

          「ファ」飽きた

          初谷むいさんの「愛スペ」を読んだよ

          春の愛してるスペシャルを読んで、ああ初谷むいは雪舟えまだ、と思った。 ユキフネーゼが言うんだから間違いない。 初谷むいは雪舟えまだ。 理由は、地球をきちんと愛してるからだ。 雪舟さんが死んだら地球も死ぬ。と本気で思っているんだけど、もし初谷むいが死んでも、地球のどっかが死んでしまいそうですごく怖い。 カーテンがふくらむ二次性徴みたい あ 願えば春は永遠なのか どこででも生きてはゆける地域のゴミ袋を買えば愛してるスペシャル 生きるなら笑ってほしい あたし環

          初谷むいさんの「愛スペ」を読んだよ

          ムシトーークで本当に伝えたかったこと

          note あんな場に出るとどうしてもふざけたくなって、これ堂本剛症候群って自分では呼んでるんですけど、常にボケていないと緊張感に押しつぶされそうになって耐えられないんです。その結果、マイクをTシャツの顔に向けたり、短歌結社ナウシカ論とかその場で思いついたボケを延々喋って、爪痕どころか自分の心に傷痕を残しただけになったんですけど……。 その後自分をフォローするように話した内容はほとんど覚えてなくて、「ハイブリッドな大喜利短歌で戦っていきたいーーー!」って、働くおっさん劇場

          ムシトーークで本当に伝えたかったこと

          山中千瀬さんの「さよならうどん博士」を読んだよ

          2016秋の東京文フリの最大の目的は、山中千瀬さんの歌集を買うことだった。 抱き合わせで販売していたトリビュート本も欲しかったから駆け足でブースを探した。 姿勢の良い山中さんを見つける。 目の前には立てず、斜めから歌集を買い、自己紹介をしたらハッとしてくれて、そっと握手をした。 そのとき、リプリルフールをまとった唇を盗み見た。 ガチゴチに緊張してしまい、初めて雪舟さんに会ったときと同じような気持ち悪さを出してしまった。悪い癖。 どこかで書いたことがあるけど、初めて出したネッ

          山中千瀬さんの「さよならうどん博士」を読んだよ

          谷じゃこさんの「ヒット・エンド・パレード」を読んだよ

          好きだった歌を数首引きます。 習っててよかったねみんな幸せな時はちゃんと幸せと書ける じゃこさんが作る前向きでハッピーな短歌にほんと弱い。ハードロックバンドが歌うバラードみたいな狡さ。ハーゲンダッツの歌も良いけど、こっちも良い。 気持ちだけいただこうかと思ったら気持ちの方が空っぽやんか この気付き、この気付きができるのがじゃこさん。「空っぽやんか」の120点な関西弁の結句に、いつも嫉妬する。 一人旅。という葉書を送るためやってきましたえげつない寺

          谷じゃこさんの「ヒット・エンド・パレード」を読んだよ

          かたゆまちゃん×ナイス害 R-2ぐらんぷりの全部

          チーム名「語り描写うざっ隊」 そうですか、かたいお米が好きですか。さよならですね (悲) 虫の音が心音さらう まっくらな悲壮区貯水記憶湖のなか 毒りんごオブザイヤーを受賞する 「悲願でした」と涙がかゆい 飛ばすわよ、流線型で速いわよ 悲恋は進化して未練へと 愛されてクックパッドはもう見ない だけど悲しいはないちもんめ 左利きの縄文人の恋煩い たたく石器の悲痛な音色 少し高い悲哀ラーメン君と食う マシマシにした夢がのびてく 出

          かたゆまちゃん×ナイス害 R-2ぐらんぷりの全部

          歌会でめちゃくちゃふざける奴

          ジャルジャルのコントみたいなタイトルなんだけど、オレは歌会でとにかくふざける。 その理由は、緊張と語彙のなさを誤魔化すためだ。 緊張と緩和が笑いを産む方式に則れば、歌会はそれの最たるものだと思う。 オレがふざけなくても、歌会のピンと張り詰めた空気の中では、少し意識してふざければたいてい笑いが起きる。 歌会で笑いをとる必要は当然、ない。 ないんだけど、笑いが起こることによって場がフラットになったり、意見を言いやすい状況を作ることもある。 なので、「なんだこいつ、ウザい」思うだろ

          歌会でめちゃくちゃふざける奴

          カコカコ(コジコジのイントネーションで)

          加子の平和という連作タイトルなんだけど、悪夢や銃殺刑や犬の死なんていうワードが出てきてしまうから、不条理さがウケにウケているコジコジの世界に迷い込んだ感覚になる。 そういえばコジコジがいる教室に加子も座っていたらめちゃんこカワイイし、コジコジと一緒に次郎くんを弄って楽しんでいるに違ぇねえ!! これ以上ないセックスのあとでみる悪夢はバランスがとれている これ以上ないセックスランキングって作りません?恋人同士で。あの時のセックスが1番良かったけど、今回のはあの時のよりは良かっ

          カコカコ(コジコジのイントネーションで)