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「親の育て方のせい」じゃないらしい

子どもの問題は親の育て方のせいなのか?

 私たちは、当たり前に「子供は親が育てたように育つ」と思っている。

 教員として働いていた時、「結局家庭だよね」という話になることが多かった。学校でどんなに勉強を教えても、家で勉強する習慣がなければなかなかできるようにはならない。どんなにお説教をしても、親が先生を軽視した態度を取れば子どもは言うことを聞かない。

 子供が繰り返し問題を起こした場合に「親の育て方のせいだ」と、言葉にはせずとも内心思っている人は多い。「親の愛情不足のせいだ」と言うような先輩教員にも出会った。

 また、親も、「自分のせいなのではないか」と引け目に感じてしまい、自分を責めてしまう。(逆に攻撃的になる人もいたけれど)

 気持ちはよく分かる。

 だからこそ、子育てをする上で、自分は親としてきちんと子供を育てられるのか不安になる。私も子育てに関する本や記事をたくさん読んだ。子供が幸せに生きられるよう親としてできることはしてあげたいと思う。


親の育て方の影響はほぼない

 しかし、この本に、「子育てや教育は子どもの成長に関係ない」という衝撃的な事実が書かれていた。

 この本は、教員になるような人は読まないのではないかと思う。むしろ、保護者はこんな本を読んでいる教員は嫌かもしれない…。でも、だからこそ、あえて紹介したい。

 運動神経や音楽の才能、背の高さと同じように(それ以上に)、IQや性格も、遺伝による生得的な部分が大きいそうだ。だから親のせいだということではなく、「親の育て方のせいではない」ということだ。IQや性格も、親たちからの遺伝子のうちどれかを受け継いだその子が、生まれ持った個性なのだ。

もう少し詳しく書くと

 こうした研究は双生児のデータを集めることによって進められてきた。例えば、養子に出され別々に育った一卵性双生児も、似た職業につき、似た人生を歩むことが多いそうだ。

 IQの遺伝率は77%、性格の遺伝率は35〜50%、また発達障害も遺伝することは知られている。

 ちなみに残りは、いわゆる「友達関係」が大きく影響するそうだ!これについては別の記事に詳しく書く。

 私は、子供が問題行動を起こした時、「親の育て方のせいだ」と責められたり、責任を感じて苦しい思いをすることが無い世の中になってほしい。

親(お母さん)万能説に陥っていないか?

 私が1年生を担任した時、クラスに配慮が必要な児童がいた。保育園からいきなり小学校に大きく環境が変わり、慣れないフォーマルの服を着て、入学式では大人しく座っていなければならない。でもその子は入学式が終わるまでよく頑張っていた。

 入学式後の写真撮影で、児童、教員、保護者みんなが並んだ後とうとう癇癪を起こしてしまった。そのときカメラマンは当たり前のように「お母さん出てきてください」と言った。でも、なかなかお母さんが出てこない。不思議に思っていると後ろからボソッと「出ていってどうしろっていうの…」と聞こえた。

 その後出てきてなだめようとしてくださったが、 やはりどうにもならなかった。新人教師だった私は、恥ずかしながらその時初めて「親も困っているんだ」と気づいた。

 みんな「お母さんならどうにかできる」と思っている。確かに、赤ちゃんの頃から面倒を見てきて、その子のことを1番分かっているのは親だ。でも、それは経験から学んできただけで、お母さんは全てのプロであるわけじゃない。

 そして今になると分かるけれど、癇癪は起こさないことが大事…。

結論 親も困っているかもしれない

 冒頭で書いた、先輩教員の「親の愛情不足」という言葉を私は今でも許せない。言われた子は不登校だった。シングルマザーの家庭でお母さんは忙しそうだった。

 私は、力のある先輩教員のその言葉を、当時、否定することはできなかった。お母さんは部屋から出てこない子供との関係に、悩み疲れていて、「私のせい」と言っていた。当時、適切な支援ができなかったこと、本当に申し訳ない。

 その子はちょっと心が不安定だったり、勉強が苦手だったり、他にもいろいろあったのかもしれないと思うけれど、それらを全部まとめて、原因は「親の愛情不足」なんて言ってしまっていいのだろうか?

 なんでも「親(の育て方)のせい」にするのは、やめよう。

 大変な子の親こそ、「自分の育て方のせいなのではないか」と悩み、困っているはず。

 「親のせいじゃない」とまずは伝えて、親子のサポートができる教員になりたい。

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