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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない / 桜庭一樹

タイトルと装丁が気になる!と思って軽い感じで手に取ったらとんでもなかった。

1ページ目でラストがわかる。分かったうえで、どうか救いのある話であってほしいと祈るように、食い入るように最後まで読んだ。

もしかしてファンタジーなんじゃないかと思う場面と、兄がする話はいつもリアルでその差が気持ち悪い。なぎさが兄は引きこもりだと認識しながら貴族だと平然と言うところもそれに似た違和感がある。けどそれがこの本のおもしろさだった。

あ、児童虐待か、と途中で思いながらもそれがはっきり文章でわかるとちょっと辛くて、人魚は砂糖菓子の弾丸であることが理解できた。自衛官も貴族も。

藻屑の「お父さんにしか殴られたことないんだから!」と感情を出したところ、ゾッとした。最近、現実世界でも児童虐待のニュースがあって。月9の「ミステリと言う勿れ」でもテーマになってて、子どもは親を嫌いになれない、とか、親はそれにつけ込んで、っていうセリフとが重なってなんともやるせない気持ちになった。

よく出てくる”砂糖菓子の弾丸”と”実弾”。なんとなく意味は分かるけど、咀嚼して咀嚼して読み終えるころになんとなく掴めた。

実弾を撃ってるつもりの山田なぎさも、十三歳でどこにも行けなかったのか。でも生き残って大人になれる。それがこの本の唯一の救いな気がする。

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