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まちがいだらけの遺言書【カッコつけるとスベる!】

遺言書には、さまざまなルールがあります。ルールが守られていない遺言は、ときには書いたとおりの効力が発生しないこともありますから、十分に気をつけたいものです。

中でも、全部自分で書く遺言、自筆証書遺言をつくるときに、よく見かけるうえに、専門家を困らせるものを取り上げます。

任せる、託す

「○○の不動産は、長男に任せます。」
「○○の不動産は、長男に託します。」

このように書いている方を見かけますが、残念ながら、この書き方では、相続があっても長男に権利を移すことはできません。不動産の所有権を譲渡したいのか、管理を任せたいだけなのか、一時的に預けたいだけなのか、考えがはっきりと読み取れないためです。

これは、不動産の名義変更ができない遺言の典型例です。

自宅をあげる

「△△市△△△番地にある自宅を次男にあげます。」

これも、難しいところです。自宅建物を相続させたい意思は伝わりますが、敷地のことが書かれていません。不動産は、土地と建物は別物扱いですから、正確に書きたいところです。

また、これを相続か遺贈か、いずれと読み解くことになりますが、名義を変えるのに必要な登録免許税が5倍も違いますので、やはり相続させると書くことをおすすめします。

あげると書いて大失敗の事例もあります。

全財産をあげる

遺言とは異なりますが、死因贈与契約の事例で、裁判になったものがあります。私もあまり気にしたことがなかったところですが、あらためて読むとなるほどと思いました。

一般に、預貯金には、他人に譲渡することを禁止する特約がついており、他人にあげたり売ったりすることはできません。預金口座に入っている現金を引き出して譲渡することはできても、預金口座ごと譲渡することはできないのです。

「私が亡くなったら、全財産を長男にあげます。」

この死因贈与契約が、譲渡禁止特約に違反するものとして無効であり、金融機関が払い戻しを拒絶したことが、信義則に反しないと裁判で判断されたことがあります。(東京地判令和3年8月17日)

つまり、この書き方では、現金を引き出すことができなかったわけです。なぜ、死因贈与契約を選んだのかわかりませんが、難しいことをせずに、「全財産を長男に相続させます。」と遺言に書けばよかったことではないかと思います。

○月吉日

遺言書には、作成した日付を書かなければ、無効となります。

吉日では、どの日付に作成したのか特定できません。その点、多少の誤字や、「○年○○の誕生日」、「還暦の日」としたものが有効と判断されていることがあります。これであれば、具体的な日付を特定できるからでしょう。

基本に忠実に

結論を申し上げますと、カッコつけた遺言が、だいたいスベって使い物になりません。専門家に相談することや、遺言の書き方を解説した書籍を読んでいただき、そのとおりにすることがもっとも確実です。私たち専門家こそ、過去の事例を調査しながら、慎重にことばを選びます。堅苦しいかもしれませんが、たった一文字のことで、効き目がなくなるのが遺言の怖いところと心得ているからです。

料理でもスポーツでも、マニュアルどおりにやらずに、ちょっと気まぐれでアレンジしたときに大失敗するものです。特に、形式面が重要な遺言では、妙なオリジナリティを出さずに、素直に取り組んでいただくことが望ましいと考えます。

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野田啓紀@よく食べる司法書士

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