
遺留分を放棄させられないの?【遺言と遺留分侵害額請求】
父の死後、遺言書が出てきました。「私の財産は、すべて長男に相続させます」とあります。
父の考えは、長女には、結婚のときや、住宅の新築のときに、十分な支援をしてきたので、遺産は、後継ぎの長男に任せたいとするものでした。この説明が家族で共有されておらず、死後に突然出てきた遺言書で知ったものです。
長女から「私は何ももらえないの?不公平です!」とありました。長女としては、一円も相続できないことには不満があります。
民法では、これに対して、法律上認められた最低限度の取り分が定められています。これを遺留分といいます。この遺留分をじゃまされたときには、一年以内であれば、金銭で請求することができます。強い権利で、一方的に消滅させることはできません。
財産のほとんどを一部の相続人に承継させたいとするならば、少なくとも、遺留分侵害額請求への配慮や覚悟は必要です。
遺留分の放棄
遺留分のある相続人は、相続の開始前、つまり生前に、家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ遺留分を放棄することができます。相続放棄は亡くなった後にするものですが、遺留分の放棄は、生前にすることができます。
遺留分の放棄をしてもらうことで、遺留分侵害額請求を排除することができます。
ただし、この手続をするには、遺産をもらわない相続人が自分でしなければならず、他人が勝手に権利を奪うことはできません。たとえば、生前に十分な贈与や生活資金の援助を済ませておき、これと引き換えに遺留分放棄の手続を促すことが現実的な方法となるでしょう。
遺留分の放棄の許可を求める申立書の中に、理由を書くことになっています。家庭裁判所に事情を説明して、遺留分を放棄するための許可を得るものです。
遺言書を書く前に相談を
相続がもめないように遺言書を作成したつもりが、書き方に配慮がなかったために、争いごとの火種となってしまいます。
グラーティア司法書士法人では、相続対策として、遺言書作成や生前贈与のアドバイスをしております。
遺言書や生前贈与に取りかかるときには、税金のことも気をつけながら進めなければなりません。始める前に、専門家に相談することをおすすめしております。