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休日にあくせく映画館に通っては、くたくたになるまで映画を観て終わることを繰り返していま…

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休日にあくせく映画館に通っては、くたくたになるまで映画を観て終わることを繰り返しています。ときには映画祭のために遠征も。日本映画を、自主作品を含めて鑑賞することが多いです。あと、ラジオも聞きますし、呑兵衛です。

最近の記事

またここで会おうと今日の素晴らしき夜明けに群青のファンファーレ

はじめに これから、ここ数年考えてきたことを書こうと思う。毎年書いている映画のレビューは、最後にしようと思っている2022年のものがいまだ書きかけの状態なのだけれど、何を考えてどう生きてきたかをまとめるのにちょうどいいタイミングが訪れた。あくまでも個人的ではあるのだが、140字でまとめるのには無理があるため、代わりに1万字にしてみた。何のために何を書こうとしているのかも覚束ない。それでも、書き残しておきたいことがある。 生きることには理由がいる 2023年の映画シーンに

    • 2023年に観た映画

      『福岡』『柳川』『群山』『近江商人、走る!』『ハッピーニューイヤー』『餓鬼が笑う』『終末の探偵』『浦安魚市場のこと』『死を告げる女』『Blind Mind』『恋のいばら』『嘘八百 なにわ夢の陣』『とべない風船』『ファミリア』『非常宣言』『サーチライト-遊星散歩-』『世界は僕らに気づかない』『よりそう花ゝ』『マリッジカウンセラー』『白獣』『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』『ひみつのなっちゃん。』『そして僕は途方に暮れる』『チャロの囀り』『78:22』『CODE-D

      • 2021年の映画を振り返る

        はじめに 文章中にネタバレがいろいろと含まれておりますので、予めご了承ください。また、敬称が省略されている部分が多いことも予めご了承ください。なお、ほぼ全文を無料で読むことができますが、かなりの労力を要しましたため、少額ながら有料設定をしております。ご納得いただければ課金にご協力いただけますと幸いです。 大きな物語と敗北たち 昨年(2020年レビューを書いた2021年のこと)はたしか3月ごろにこのシリーズを書き終えたのですが、今年、ようやく一行を書き始めたいまはすでに6

        有料
        100
        • 2022年に観た映画

          『明け方の若者たち』『雨とあなたの物語』『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』『夫とちょっと離れて島暮らし』『なれのはて』『ドント・ルック・アップ』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』『決戦は日曜日』『DANCING MARY ダンシング・マリー』『弟とアンドロイドと僕』『こんにちは、私のお母さん』『マニアック・ドライバー』『喜劇 競馬必勝法 大穴勝負』『春原さんのうた』『帆花』『静謐と夕暮』『無聲 The Silent Forest』『なん・なんだ』『相対

        またここで会おうと今日の素晴らしき夜明けに群青のファンファーレ

          13年前のロシアより祈りをこめて

          昨今のロシア政府の狼藉は嘆かわしいばかりですが、2009年の正月にサンクトペテルブルクを訪れたことがあり、最近そのことを思い出しています。あの頃はプーチンが長期独裁化を狙って院政を敷いていた時期で、日本より景気がよかったのか、街がとても煌びやかだったことを覚えています。 政府は恐怖的だったのかもしれませんが、現地の人びとはとても素朴で、共産圏っぽい不愛想で不器用そうな人もいますし、とても純朴そうな親切で気のいいお嬢さんにも何人も出会いました。みんなものすごい宵っ張りで、あま

          13年前のロシアより祈りをこめて

          「おかえりモネ」論 その8 還るべき場所へ(終)

          あの日あのとき、私は東京の九品仏にあるカフェにいました。勤め先のプロジェクトで、お客さんを集めて自社サービスについてインタビューする催しをしていて、それももう終わろうかとしていたとき、ガタガタと尋常でない揺さぶりが始まりました。慌てて外に出ると、商店街の電信柱がゴムのようにゆらゆらとしていました。同僚のワンセグでは、大量の海水が流れ込む仙台空港の滑走路を映し出されていました。 地震は断続的に続いて街の機能が戻ることがなく、帰れそうなお客さんを帰し、無理な方には別の同僚の家ま

          「おかえりモネ」論 その8 還るべき場所へ(終)

          2021年に観た映画

          『ポケットモンスター ココ』『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』『詩人の恋』『FUNAN フナン』『新感染半島 ファイナル・ステージ』『尊く厳かな死』『Swallow/スワロウ』『大コメ騒動』『瞽女 GOZE』『チャンシルさんには福が多いね』『ひとくず』『分断の歴史~朝鮮半島100年の記憶~』『おとなの事情 スマホをのぞいたら』『血観音』『国葬』『粛清裁判』『旧支配者のキャロル』『冥婚LOVE』『純情No.2』『検見川奇襲作戦』『ほぞ』『極東のマンション』『マリコ三

          2021年に観た映画

          「おかえりモネ」論 その7 おかえり、カンちゃん

          (本稿にはある作品の決定的なネタバレがあることを予めご了解ください) 『おかえりモネ』は東日本大震災から10年というタイミングで、震災前よりも震災後を生きる時間が圧倒的に長い人びとが、何を考えどう生きるのかを切り取った作品だったと思います。10年経ったからと言って世界が変わるわけなどないですし、むしろそれで区切りがついたと思われたくない向きもあると思いますが、何か区切りをつけないとやっていられない人には、いわゆる「時薬(ときぐすり)」が必要な人には、それなりに意味のある区切

          「おかえりモネ」論 その7 おかえり、カンちゃん

          「おかえりモネ」論 その6 林業のはたらくくるまとその仲間たち

          ドラマ本編が今週で終わるって本当ですか。あと半月ほどあると思っていました。放送中にもう何回か書くつもりでしたが、終了後にも書き続けることが確定してしまいました。個人的な問題にすぎませんが。録画しっぱなしになっている数週分もそろそろ観ないといけませんね。 さて先日、伊勢長之助監督の映画『森と人の対話』(1972)を観ました。東海パルプ(当時)のPR映画で、静岡県井川にある広大な社有林に住み込みで従事する作業員たちと、井川山林の自然を捉えた作品なのですが、これが本当に面白かった

          「おかえりモネ」論 その6 林業のはたらくくるまとその仲間たち

          「おかえりモネ」論 その5 森林組合とは何なのか

          タイトル以外すっかりドラマ本編と関係なくなってしまっているこのシリーズ。それでもドラマ序盤は物語の舞台をやんわりと周回しているつもりでした。それが、こちらが忙しくて書くのをおろそかにしているうちに、百音が上京してしまい、たくさんの出来事とたくさんの経験を経て、なんとUターンしてしまったではないですか。おそらく視聴者がもっとも注目したロマンスをすべてスルーして、こちとらまだ序盤の続きを書いています。というか、このシリーズはたぶん東京に行くことはありません。気象のことは分かりませ

          「おかえりモネ」論 その5 森林組合とは何なのか

          「おかえりモネ」論 その4 山の所有と利用の関係

          我が国の森林のうち、「私有林」は、森林面積全体の約6割、人工林総蓄積の約7割を占めており、林業生産活動に主要な役割を果たしている。(平成22年度 森林・林業白書) 保有山林面積規模別にみると、保有山林面積が10ha未満の林家が88%を占めており、小規模・零細な所有構造となっている。(中略)なお「1990年世界農林業センサス」によると、保有山林面積が0.1~1ha未満の世帯の数は145万戸であり、現在も保有山林面積が1ha未満の世帯の数は相当数に上るものと考えられる。(令和2

          「おかえりモネ」論 その4 山の所有と利用の関係

          「おかえりモネ」論 その3 林業政策のはなし

           前回、「流域管理システム」という言葉をご紹介しました。劇中の龍己さんが山に木を植えることの意味を語るシーンを見て、まずは「森は海の恋人」が口を突いたのですが、同じぐらい瞬時に「流域管理システム」を思い出してもいました。実際、わたしが学生だった頃は、循環型の林業を流域で捉えるというのは常識になっていました。それは、百音が小学校に上がるよりも前の話です。  ところが、「流域管理システム」についてあらためて調べようと思っても、林野庁のサイトの当該ページが消滅しています。なのにリ

          「おかえりモネ」論 その3 林業政策のはなし

          「おかえりモネ」論 その2 森は海の恋人

           書くことを自分に課すためにとりあえず1回目を書いたはいいものの、何かを書く時間を取れない状態がしばらく続いていたのですが、ドラマはすっかり8週目も終わってしまいました。それでも物語の時間が2年ぐらいしか進んでいないのが救いです。  ところでこの『「おかえりモネ」論』のヘッダーに使用している写真は、私が2015年に撮影した石巻の夕焼けです。かつて東北に住んでいたこともあり、縁を感じて三陸沿岸には何度か足を運んでいます。ドラマにも登場したBRTに乗って気仙沼から陸前高田を通っ

          「おかえりモネ」論 その2 森は海の恋人

          「おかえりモネ」論 その1 震災後を生きるということ

           いま、朝ドラ「おかえりモネ」を、皆勤賞を目指して頑張って観ています。集中力のない私は連ドラが苦手ですぐ挫折してしまうのですが、1回目を観てすぐに、これはただものではない作品ではないかと感じてしまいました。そこには、私なりのシンパシーも大いにあると思っています。そんなわけで、「あまちゃん」(2013)以来の集中力で視聴を続けており、観るにつけ、何か書かねばという謎の衝動に駆られております。そこで、書いてはアップすることを繰り返すので全体構成が自分でもさっぱり分かりませんが(途

          「おかえりモネ」論 その1 震災後を生きるということ

          『馬搬日和』と西埜君のこと

          少し前のこと。どうしても暇つぶしをしなくてはいけなくてスマホを見ていたら、「馬搬」と書かれたバナーを見つけました。馬搬が何なのかはあとで書くとして、馬搬で思い出せる人物がひとりしかいなかったので、まさかと思いつつもリンク先の短編ドキュメンタリーを見始めたら・・・そのまさかでした。(リンク上) その後、新聞記事にもなったようで、うちの親から写真が届きました。(リンク下) 映画の主人公、西埜君とは20年来の友人です。お互い北海道の出身で、大学の学科と専攻が同じだったのです。全部

          『馬搬日和』と西埜君のこと

          『狼をさがして』騒動に思うこと

           最近、『狼をさがして』という作品の上映を予定していた映画館が、政治団体の街宣活動が予定されていることで警察署から連絡を受け、周辺の商店への影響を鑑みて上映を断念するという出来事がありました。そして、ある意味では予想通りに、そのことに抗議する意見が映画人たちから出されることになりました。ただ、言いたいことは分かるもののどこか違和感があり、思ったことを投稿することにしました。緊急的に書きましたので、一時的な掲載に留めるかもしれません。まずはどんな作品であるかを書いたうえで、起き

          『狼をさがして』騒動に思うこと