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11月11日 わかりやすい記念日

2021/11/6

33歳の誕生日を迎えた。33年前の今日この世に誕生したわけであるが、母曰く、予定日を大幅に過ぎ、促進剤を使わなければならないと医者に言われた直後に陣痛が来たらしい。正当な範囲内で可能な限りだらけようという根性は胎児時代も現在も変わらない。

友人が旭川の実家に帰る道中、うちに寄ってくれた。私への結婚祝いとして、ハンドブレンダーを持って来てくれた。私がリクエストしたものである。「選ぶの大変だからピンポイントでリクエストくれて助かった」と言っていた。図々しくて褒められることもある。看護師である友人、2歳の娘を連れ、かれこれ一年半ぶりの帰省とのこと。「もういいよね」と言うので、「うん、もういいよね」と返すが、最前線でウィルスと向き合い続けた彼女の「もういいよね」と、ただ回避しながら生活してきただけに過ぎない私の「もういいよね」では重みが違い過ぎる。彼女が帰ったあとも、私の言葉だけが宙に浮いていた。

スーパーにて、サーモンかマグロかで迷う。夫が好きだからと思い一度はサーモンに決めるも、いや、今日は私の誕生日なのだからと思い直しマグロをカゴに入れた。その勢いで生食用の牡蠣と加熱用の牡蠣を両方買った。誕生日は何でもアリなのである。牡蠣酢と牡蠣のアヒージョとマグロのカルパッチョを作った。夫、うまうま言いながら食べていた。

夫がおつまみ用に買ってきてくれた白カビサラミが美味しかった。カビ、こんなにおいしいのに、食べてはいけない方のカビの印象が強すぎる。キノコと毒キノコのように、食べてはいけない方に毒とか付けて呼ぶようにしないと不憫ではないか。

2021/11/7

昨日友人がくれたハンドブレンダ―の中身を開封。パーツが色々。スーパー戦隊の合体ロボのおもちゃを思い出す。腕をカチャッとはめるように、本体にブレンダ―やホイッパーを付け替えられる。粉砕するのは敵ではなく食材。今日のところはとりあえず中身を確認して収納場所を確保するところまで。ロボ、格納。

夕飯について、冷凍庫に眠るハンバーグ、という案を思いついた直後、私の体に電流が走った。昨日のアヒージョのために茹でたブロッコリーと、カルパッチョに添えたベビーリーフの残り、そして冷蔵庫に一本だけ残された人参。これら全てがハンバーグの付け合わせになり得ることに気づいたのである。食材テトリス、全消し!

「有吉ぃぃeeeee!」に触発された夫が、クローゼットに仕舞っていた昔のゲームを取り出した。色々持っているのは知っていたが、懐かしいものや初めて見るものまで多様な品揃え。子どもの頃、ゲームをたくさん持っている友達の家に遊びに行った時の興奮が蘇る。つい夜中まで遊んでしまった。

2021/11/8

誕生日のお祝いということで、温泉に一泊。夕食に和牛の石焼ステーキが付くプランでの予約。プランの説明には「お肉で免疫力アップ!」などと書かれていた。このご時世における宿の必死さが伝わり泣けてくるが、我々はただ肉が食べたいだけである。

実は前日に宿から電話があり、我々の予約した和洋室の部屋が使えなくなってしまったため、同じ広さの和室に変更させてほしいとお願いされた。たいしてこだわりもなかったので了承した結果、どうみん割なども含めて半額以下にしてもらえた。有難い。しかしなぜ部屋が使えなくなったのか少し気になる。何か特別な事情があるのだろうか。記憶喪失になった人が以前泊まったその部屋にもう一度泊まることで記憶を取り戻そうとしている、とか。誰かうんこ漏らしたとか。

久々に露天風呂というものに浸かったが、こんなに気持ちの良いものだったか。旅行に行けない日々が続いていたせいなのか、その間に歳を重ねたせいなのか。昔は温泉に来た意味があるのかと問いたくなるほど早風呂だったのに、露天風呂でぼんやりしていたらあっという間に小一時間過ぎていたので驚いてしまった。ぼんやりするのが上手になったのかもしれない。

刺身と肉をたらふく食べながら、夫と2021年の総括。二人共、今年は何かと前進した年だった。私は運が良かっただけだが、夫は努力が報われた。結婚式も挙げて、いい一年だったと思う。年末までにとんでもないことが起こらないと良いが。

2021/11/9

朝食バイキングほど興奮するものはない。破裂しそうなほどお腹いっぱい食べて、部屋に戻ってもうひと眠り。至福。

旅館を出発し、帰り道の途中、母方の祖父母の家に立ち寄った。二人とも相変わらず。祖母はあれやこれやと動き回る。祖父は信じられないくらい腹が出ている。たぶん私が生で見たことのある人間の中で一番腹が出ていると思う。まあ元気なので良し。祖母は食べ物を振る舞うのが好きなのでお菓子などを出したそうにしていたが、「朝食を食べ過ぎてこれ以上何か入れたら爆発する」と言ったら諦めてくれた。お茶だけいただいて帰宅。

2021/11/10

ハンドブレンダ―を使ってみることにした。手始めに、冷凍庫の中で長い眠りについていたカットメロンをジュースにしてみる。夏に一玉もらったが、私も夫もメロンに対してそこまで熱い気持ちがなく、半分食べたところで残りは冷凍庫行きとなった。そんな不憫なメロンを大きな音を立てて粉砕するハンドブレンダー。思った以上に強力で、メロンはあっという間にとろりと液状になった。半解凍だったので、フローズン的な感じもあっておいしい。来年の夏、またメロンが一玉やってきても、もう恐れることはない。私にはハンドブレンダ―がついている。

去年亡くなった父方の祖父の家を整理していたら、古いレコードプレーヤーが出てきたので、先日我が家に持ち帰った。私も夫も、レコードを聴く、ということへの憧れがあったので、捨てるくらいならと譲り受けてきたのである。劣化していたゴムをネットで買って交換し、今日、夫がリサイクルショップで安いレコードを手に入れてきたので、はじめて試してみることにした。一応動いて、音楽が鳴った。しかし、何だか音が歪んでいるというか、音程が揺れるというか、聴いていると不安になる音色であった。これはプレーヤーの問題なのか、元からこういう音楽なのか(とりあえずお試しでと思い謎のラテンミュージックのレコードを100円で買った)、よくわからないが、とにかく長時間聴いていると頭を抱えて叫び出しそうなくらいヤバい音色だったので、敢え無く停止。ジャイアンのリサイタルというのはこういう感じなのかもしれないと二人で納得した。

2021/11/11

夫が仕事で山に行った。弁当はおにぎりがいいと言うので、朝おにぎりを握った。おにぎりを持って山に行くという絵面を想像してウケた。童謡かよ。

11月11日が結婚記念日という夫婦は多い。11月22日(いい夫婦の日)も多い。考えてみると、結婚記念日というのは人生において唯一、自分で日付を決められる記念日かもしれない。誕生日は勿論のこと、サラダ記念日も「この味がいいね」と君が言ってくれなければ制定できない。君次第である。

ゾロ目の「わかりやすさ」に対する謎の反抗心があり、いつか結婚することになったら、二人だけにその価値がわかるような、ゾロ目でも何でもない日を結婚記念日にしようと心に決めていた。しかし結果的に、私と夫の結婚記念日は7月7日になってしまった。なってしまった、などと言ったら夫に悪いが、付き合い始めた日がたまたま7月7日で、ちょうど入籍しようとしていたタイミングが7月だったので、そうなるとあえて付き合い始めの日を無視する方が不自然なのではないかという結論に至ったまでなのである。決して、ゾロ目だから決めたわけではない。と主張したところで、傍から見れば「ゾロ目」「ラッキーセブン」「七夕」と担ぎのオンパレードで、記念日を言うと何となく相手がニヤニヤしているような気がしてならない。更には思いつきでゾロメ日記などはじめてしまい、もうこうなっては私の人生、ゾロ目から逃れられそうにない。88年生まれだし。


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