本が好きな人におすすめしたい文学50選

僕は文学が好きだ。文学が嫌いだという人も少ないだろうから、より正確な言い方をすれば、他のどの藝術よりも、文学について考えている時間が多い、と思う。言語化できない知覚は、この世に存在できないと考える僕にとって、自らの世界の解像度をあげるために、これまで、本当にたくさんの作品を読んできた。本屋に行き、ただタイトルが気に入ったから買うことも、ふと思い出した好きな小説家の別作品を買うことも、立ち読みして、最初のページに、いいなと思う表現を見つけてしまって買うことも、もう、何回も何回もあった。 

ぱらぱらと読む。綺麗だなと思った表現に線をひく。書けないなと思った表現のあるページに折り目をつける。初めて見る表現に出会ったら、小脇に抱えた辞書で調べる。飽きたら他の本に移る。1ページ目から読み進めないといけないなんて誰が決めたんだ。本棚に残っていればいい方で、もう会わなくてなってしまった人に貸したままの本や、行かなくなってしまった場所に置いたままの本も、ざらにある。いくつ読んだかなんてわからない。作品との交錯は、僕にとっていつまでも、その度唯一つの永遠に接続されていた。 

今に至るまでたくさんの作品に触れてきて、題材への好みの濃淡はあれど、それ以上に、自分が好む作品同士に傾向が見られたと思う。つまり、情報密度の高いテキストで編まれているかどうか。大量の情報が緻密に編み重なって凝縮されたコンテンツを、僕は何よりも好む。当然それは、それ以前の作品群によるコンテクストの十全な理解と、人類の普遍的な心の挙動を素直に受け取る感受性がないと成しえない営為である。そしてそれが、文学の域を超えて、すべての領域における姿勢として正しいものだと、僕は信じてやまない。 

前置きが長くなった。僕がこれまで読んだ作品のなかで、みんなにおすすめしたいものを50本集めた。なるべく小説家の被りを除き、ベタな作品は除いたつもりなので、つらつらと書いてきたぼくの嗜好と似ているな、と思うあなただったら、もしかしたら参考になるかもしれないです。ぜひ。



1.物質的恍惚 ルクレジオ
2.青い花 ノヴァーリス 
3.ドリアングレイの肖像 ワイルド 
4.さかしま ユイスマンス
5.トニオクレエゲル トーマスマン
6.夢のなかの夢 アントニオタブッキ
7.存在の耐えられない軽さ ミランクンデラ
8.アルゴールの城にて ジュリアンブラック
9.はつこい ツルゲーネフ
10.四季をめぐる51のプロポ アラン
11.追憶 ゴーリキイ 
12.溶ける魚 アンドレブルトン
13.ケルト妖精物語 イェイツ
14.恐るべき子供たち ジャンコクトー
15.シェリ コレット
16.愛の妖精 ジョルジュサンド
17.うたかたの日々 ボリスヴィアン
18.赤と黒 スタンダール
19.氷 アンナカヴァン 
20.チャタレイ夫人の恋人 ローランズ
21. 聊斎志異 蒲松齢
22.日夏耿之介詩集
23.マラルメ詩集
24.フランシスジャム詩集 
25.蘇東坡詩選
26.ワーズワース詩集
27. 中原中也詩集 
28.珠玉 開高健 
29. 文章読本 丸谷才一
30.ダスゲマイネ 太宰治
31.魔都 久生十蘭
32.春昼 泉鏡花
33.死者の書 折口伸夫
34.雲の行き来 中村真一郎
35.美徳のよろめき 三島由紀夫
36.或る女 坂口安吾
37.月光とピエロ 堀口大學
38.夢の遠近法 山尾悠子
39. 一千一秒物語 稲垣足穂
40.雪国 川端康成
41.一草一花 川端康成
42.紫苑物語 石原淳 
43. 驟雨 吉行淳之介
44.雨月物語 上田秋成
45.居心地の悪い部屋 岸本佐知子(訳)
46.悪い仲間 安岡章太郎
47.白い人・黄色い人 遠藤周作
48.詩を読む人のために 三好達治
49.草の花 福永武彦
50.恋をしに行く 坂口安吾


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