【web連載#3-4】NG騎士ラムネ&40 FX
■公式外伝「NG騎士ラムネ&40 FX」
・原作・監修:葦プロダクション
・企画・制作:Frontier Works
・本編執筆:十一屋 翠
■第3話「反撃の糸口! 巨大ゲームで大特訓!」(その4)
「やった! 新しいステージだ!」
三つ面のステージをクリアし、再びステージセレクト画面に戻ってくると、そこにはこれまでなかった四つ目のステージが表示されていた。
「よーし! 行くぞー!」
「頑張ってラムネス!」
「ダーリンも頑張るじゃん!」
「おうよっ!!」
「もう時間がないミャー! 二人共気を付けるミャ!」
四つ目のステージに入ったラムネス達が見たのは、1体の巨大なロボットだった。
そのロボットは左右が白と黒に分かれてたカラーリングをしていた。
「これって……ホロボロスじゃないか!」
「なるほど、ようやくラスボスの出番って訳だな」
現れた敵がホロボロスにそっくりな外見をしていた事から、ラムネス達はこれが最後の戦いであると察する。
「ゲームの中だけど、リベンジ戦って訳だな!」
「良いぜ! 今度こそボコボコにしてやらぁ!」
ラムネスの駆る金色のロボットと、ダ・サイダーの駆る黒いロボットが画面の中のホロボロスに向かって行く。
ホロボロスが腕を振りかぶると、即座にラムネス達は回避行動を取る。
「その攻撃はもう見たぞ!」
モンエナ教授との戦いで見たホロボロスの挙動を思い出しながら、ラムネス達はホロオロスの攻撃の隙を縫って逆に攻撃を加える。
この辺りの動きの良さは流石歴戦の勇者である。
「ラムネスやるぅー!」
「カッコいいじゃんダーリン!」
その鮮やかな手並みにミルクとヘビメタコが歓声をあげる。
「へへん、どんなもんだい!」
「俺様にかかればこんなもんよ!」
「二人共油断しちゃ駄目だミャ!」
タマQの言う通り、一瞬の油断を突いてホロボロスが攻撃を仕掛けてくる。
それは先の戦いでは見せなかった挙動であり、それゆえにラムネス達は不覚をとってしまう。
「うわぁーっ!」
「ちっ、やりやがったな!」
しかしそこは戦い慣れた二人である。もうコンティニューは出来ないという緊張感もあって、最初のボスとの戦いで見せたような無様は晒さない。
冷静に敵の攻撃を回避しながら攻撃を再開する。
「くっ! このっ!」
「にゃろー! こうだ!」
次第に激しくなるホロボロスの攻撃をギリギリで回避しながら、ラムネスとダ・サイダーは攻撃を繰り広げる。
時にラムネスがホロボロスの攻撃を誘導してダ・サイダーが攻撃を加える。
またダ・サイダーが攻撃に晒された時はラムネスが攻撃を加えて敵の注意を引く。
戦いが激しくなるほど、二人は無自覚にゴブーリキと戦っていた頃の連携を思い出して攻撃に隙が無くなっていく。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「いっけぇぇぇぇぇっ!!」
ラムネスとダ・サイダーの連携攻撃が見事にハマり、ホロボロスの動きが一瞬止まる。
「これで! ラストだぁーっ!」
その隙を逃すかと放たれたラムネスの一撃を受けた瞬間、ホロボロスが音を立てて崩れだした。
そしてホロボロスが完全に消滅すると、画面に大きくコングラッチュレーションズとラムネス達の健闘を称える文字が現れた。
「やったー! ゲームクリアだぁぁぁぁぁぁ! オレは今! モーレツに達成感を感じているぅーっ!!」
「うぉー! オレ様達の勝ちだぁぁぁぁぁぁぁ!! やーってやったぜっ!!」
遂に試練をクリアした事で、ラムネスとダ・サイダーが勝利の雄叫びをあげる。
「キャッ!? ……もーっ!」
急に立ち上がって喜び始めた事で、肩に乗っていたミルクが慌ててキングスカッシャーにしがみ付く。
しかしこの時ばかりは彼女も怒りを治めラムネス達の健闘を称えた。
「やったわねラムネス!!」
「へっ、オレ様を相手にするにはちょーっとばかし難易度が簡単すぎたようだな」
「よく言うよ。何度もやられてたくせに」
「なにをー! それはお前もだろ!」
「いやいや、オレの方が活躍してたから。ステージ2でダ・サイダーやられまくってたじゃん」
「ちっがーう! アレはお前の為に見せ場をくれてやったんだよ。大体それを言ったらステージ3はオレ様の独壇場だったろーが!」
「違いますー! あれは全然活躍出来てなかったダ・サイダー君の為に譲ってあげただけでーす」
「オレ様のセリフをパクるなー!」
「パクッてなんかいませーん!」
試練が終わった途端、いつも通りの光景を見せるラムネス達。
この切り替えの早さこそ、ある意味彼等らしいと言えるかもしれない。
そんな風に言い合っていると、画面の向こうで戦っていたロボット達が奥へと進んでいき、捕らわれのお姫様と思しき金の髪の少女と銀の髪の少女を救い出した所でスタッフロールが始まった。
「この子達も試練に何か関係あるのかミャー?」
勝利に浮かれてモニターの光景を見逃していたラムネス達に代わり、タマQは救われた少女達がロボットに抱きかかえられて故郷と思しきお城に戻っていく光景を眺めていた。
「あれ? もうクリアしたの?」
そんな風にラムネス達がワイワイ騒いでいると、レスカとペプシブが戻ってくる。
「カフェオレお姉様遅ーい! 良い所見逃しちゃったわよー!」
「別にあたしはそんなの気にしないからねぇ、それよりもこれからどうなる訳? これをクリアするとあのホロボロスを倒す力が貰えるんじゃなかったの?」
そうレスカが疑問を口にした瞬間。
パンパカパーン!
突然音が鳴りだしたかと思うと、部屋が振動に包まれる。
「わわっ!? 何だ何だ!?」
「何これ地震!?」
ラムネス達は突然の振動に警戒し、ミルク達を庇うように覆う。
「皆さんアレを見てください!」
するとペプシブが大きな声を上げて天井から釣り下がっていた巨大なラムネビンを指さす。
「あれは! ラムネ瓶の中身が光ってるぞ!」
ラムネスの言う通り、ラムネ瓶の中に入っていたものが光を帯びて輝いていたのだ。
そして天井が開き、これまた大きな複数の金属の塊が姿を現す。
すると、ポンッという弾けるような音と共にラムネ瓶の中身が勢いよく放出され、金属の塊に空いた小さな穴に吸い込まれていく。
「な、何が起こっているんだ!?」
そして天井からガコン、ガシュンと大きな音と共に熱が発せられる。
「なんだこの熱さ!? あのデカい金属の塊のせいか!?」
ラムネスとダ・サイダーは最大限に警戒しながら天井に注視する。
そして音が止み、部屋の中が静寂に包まれた。
「音が止んだ……?」
「それに熱さも収まってきた……」
次いでプシューっという音と共に、光を吸い込んだ金属の塊が次々と二つに割れていく。
「割れた? 何だ? 金属の塊の中に何かくっついてる?」
割れた金属の塊の内側には、確かに何かがくっついていた。
ラムネス達は一体何がくっついているのかと目を凝らすが、暗さを増した部屋では天井までは良く見えない。
と思っていると、金属の塊に張り付いていたそれがゆっくりと剥がれ始める。
「ん? んん……?」
そしてそのまま、地上に居るラムネス達に向かって落ちてきたではないか。
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「に、逃げろぉぉぉぉぉっ!!」
ラムネスとダ・サイダーは慌ててミルクとレスカ、それにペプシブを抱えるとダッシュで逃げ出す。
ガシャーンガシャーンといくつもの重くて大きい物体の落ちる音が部屋中に響き渡る。
「うるさーい!!」
キングスカッシャーの手の中で、ミルクが耳を塞いで文句を言う。
「な、何だったんだ一体?」
上を見てこれ以上何も降ってこないと確認したラムネス達は、キングスカッシャーとクィーンサイダロンを落ちてきた何かを確認する為に移動させる。
そこにあったのはいくつもの部品だった。
ただしそれらの部品は細い棒状の物体と連結しており、一つの塊となっていた。
他の落下物も同様に複数の部品が連結して一つの塊となっている。
「これって……もしかして」
地上に落ちたそれらを見たラムネスは、自分の良く知るある物を思い出す。
「プラモデルじゃないかぁーっ!!」
そう、それはまさしくラムネスの言う通りプラモデルだった。
いくつもの小さな部品を繋げる細長い円柱は、いわゆるプラモデルのランナーと呼ばれるものだ。
「なんでプラモデルが……それもこんなにデッカイ」
「もしかしてこれがホロボロスに対抗する手段?」
「いやいやいやいや、いくら何でもそれは流石に」
ラムネス達が途方に暮れていると、再び天井から音が響いてきた。
「うわーっ! プラモの部品はこれでおわりじゃなかったのー!?」
慌ててラムネスは逃げ出すが落ちてきたものはこれまでとは違うものだった。
大きなカーテンのようなものが二つ、バサリと軽い音を立ててゆっくりと地面に広がる。
「何だ? プラモの部品じゃないのか?」
一体何が落ちてきたのかと近づいたラムネスは、その表面に描かれた模様に驚きの表情となる。
そこに書かれていたのは、いくつもの部品の絵と、それらを組み合わせる順番だった。
「これ、もしかして説明書か!?」
そう、落ちてきたのは巨大なプラモデルの説明書だったのだ。
部品も大きければ説明書も大きい。まさにスケールが違うというヤツである。
「うわー、ほんとにプラモがホロボロスへの対抗手段なのかよー」
しかしこうなると一つ問題が出てきた。
「けどこれ、どうやって作ればいいんだ?」
「え? プラモデルなんだから、普通に作ればいいんじゃないの?」
ラムネスの言葉にそれがどうしたのと首を傾げるミルクだったが、問題を理解していたラムネスはため息を吐く。
「ミルク、プラモを作るにはどうしたらいいと思う?」
「どうしたらって、そりゃ工具を……あっ」
ラムネスの質問の意図を理解し、ミルクが声を上げる。
「そ。プラモはニッパーって工具を使って作るんだよ。パチンパチンと切ってさ」
「でもそんな大きな道具無いわよ?」
そう、それこそが問題だった。
この巨大プラモを作れる程の大きさの工具が無いのだ。
「じゃあオレ様達の武器で叩き切るのか?」
ダ・サイダーのクィーンサイダロンがハルバードを大きく振りかぶったのを見て、ラムネスが慌てて止める。
「いやいやいやいや、そんな雑なやり方じゃ切り残しが出来るか切っちゃダメなところまで切って大変な事になるだろ!」
「じゃあどうすんだよ?」
「それを悩んでいるんじゃないかー」
「「「うーん」」」
どうしたものかと悩むラムネス達の下に、救いの女神が現れる。
「それなら大丈夫ですわ~」
やって来たのはドリータンク・ジュニアに乗ったココアだ。
「お姉様! ドリータンク・ジュニアも! 直ったのね!」
「ええ、完璧ですわ~。それにこの人達も~」
ココアが後ろに手をかざすと、そこには照れくさそうなシンゲーンとケンシーンの姿が。
「シンゲーン! ケンシーン!」
「お前達もう大丈夫なのか!?」
「心配をかけ申した」
「されどもう心配ご無用!」
シンゲーン達は毅然とした表情でラムネス達に回復を告げる。
「ホロボロスとの決戦では全力で挑めるぞ!」
「然り! 我らの力、存分にお役立てくだされ!」
やる気に満ちた眼差しでシンゲーンとケンシーンが断言する。
「よろしく頼むよ二人共!」
「オレ様の足を引っ張るんじゃねぇぞ!」
「「応っ!!」」
遂に仲間が復活したと分かり、ラムネス達は明るい空気に包まれる。
「あっ……」
その光景を前に、ペプシブは足を踏み出そうと声をあげる。
「ところでこの巨大プラモなんだけど、ココアには何か良いアイデアがあるのかい?」
しかしラムネス達の話題がホロボロスへの対抗手段に移ってしまった事でペプシブは話しかけるチャンスを失ってしまった。
「はう~」
「ま、チャンスはまだまだあるよ」
落ち込むペプシブをそっと励ますレスカ。
「は、はい~」
そんな二人を尻目に、ラムネス達の話し合いは続いていた。
「はい~、こういう時の為のドリータンク・ジュニアですわ~。ポチッと」
ココアがドリータンク・ジュニアのコクピットに取り付けられたボタンを押すと、機体の上面が開いて中から巨大ニッパーがせり出してくる。
「おおっ! ドリータンクからニッパーが!」
「ドリータンク・ジュニアは、万能工作メカですから~、こんなこともあろうと巨大ニッパーを用意しておいたんですのよ~」
「こんなこともって……まぁいいや。助かるよココア! よーし、それじゃあ皆で巨大プラモを組み立てるぞー! ふっふっふっ、遂にクラスの皆から『モデラーラムちゃん』と呼ばれた俺のスペシャル模型テクニックを見せる時が来たようだな!」
「「「おおおーっ!!」」」
「ミルク、説明書を読んでオレ達に組み立ての指示をしてくれ!」
「まっかせて! えーとまずは……ってこの文字なんて読むの!?」
「プラモの説明書なんだから、数字を読みあげるだけでどの部品か分かるだろー?」
「その数字が読めないのよー」
ミルクが困るのも当然であった。
我々がマジマジワールドのとある国家で使われている4、四、Ⅳの文字を見て、これは同じ数字を現しているんだなと理解できるのはそれを習ったことがあるからだ。
しかしこの説明書に書かれた文字や数字は未知の言語。
それが数字であろうと予測を立てる事は出来ても、意味や読み方が分からなくては指示の出しようが無いのだ。
結果ラムネス達は説明書に書かれた文字を模様と認識して同じ部品を探しだす必要があるのだった。
「これは②でこちらは⑥ですね」
「え?」
それはペプシブの言葉だった。
壁画の古代語を読めた彼女にとって、同じ言語で使われている数字を読み解くなど朝飯前だったのだ。
「そっか、ペプシブちゃんなら読めるのか! ペプシブちゃーん! 指示を頼んでいいかーい?」
「はい! 任せてください! ココア姫様、まずは②と⑥、ええと、そっちの……」
しかしペプシブにだけ番号がわかっても、受け取る側のココアが分からないと意味がなかった。
「ねぇ、ペプシブ。この説明書に書かれている数字を順番に並べてくれない?」
そこに何かを思いついたのか、ミルクがペプシブに数字を教えてくれと頼みこむ。
「え? あっ、はい。ええとまずこれが1、そしてこれが2です」
「ふむふむ」
そしてペプシブから教わった0~9の数字のメモを取ると、ミルクはドリータンク・ジュニアに乗り込んでいく。
「お姉さまー! 数字のメモを持ってきたわ! これを見ればペプシブの指示もバッチリよ!」
ミルクのやった事は数字の翻訳メモを作ることだった。
あまりにも簡単な解決法ではあるが、意外と人間困ったときほどシンプルな方法を思いつかないもののようで、ラムネス達はそりゃそうだと感心の声をあげる。
「助かりますわ~ミルク」
「ええっと、お姉様、②はあそこよ!」
「はいはい~、では切りますわよ~」
ココアがレバーを引くと、ドリータンク・ジュニアの機体両側面に設置されたロボットアームが動き出し巨大ニッパーを使って部品のカットを始めた。
「ラムネス、ダ・サイダー、その部品をはめ込んで!」
「分かった!」
「おう!」
ラムネスとダ・サイダーはキングスカッシャー達に部品を持たせると、お互いに部品を押し込む事でパーツを組み立てようとする。
しかし何故か部品が上手くはまらない。
「あれ? おっかしいなー」
「どうなってるんだ? おいミルク、ほんとにこの部品であってるのか?」
ダ・サイダーに聞かれたミルクはすぐさま説明書に視線を戻して組み立ての手順を確認する。
「えーと、ちゃんと⑥番の部品……あっ、ごめん! それは⑨の部品だわ! ⑥はそっち!」
「おいおい、勘弁してくれよ」
やはり間違いだったと分かり、ダ・サイダーはため息を吐きながら正しい部品をドリータンク・ジュニアから受け取る。
「な、なによー! 私だってミスくらいするわよ!」
「まぁまぁ、誰にでもミスはあるって」
叱られた事で怒りだすミルクだったが、ラムネスに仲裁されて何とか堪える。
そんなトラブルがあったものの、一行は順調に部品を組み立てていった。
「ラムネス~。その部品すこし切り残しがありますから~、削っておいてくださいまし~」
「おっけー」
ラムネスはキングスカッシャーの剣で器用に切り残しを削り落とす。
「ダ・サイダー、そっちの部品は周りが邪魔で切りにくそうだから、ランナーっての? それごと切って細かい所をココアに任せな」
「おう、任せとけレスカ!」
レスカの指示を受けたダ・サイダーが切断しづらそうな部品をランナーごと切ってココアのドリータンク・ジュニアに差し出す。
いわゆる二度切りという手法だ。
「シンゲーン、そっちの部品持ってきて!」
「承知!」
「おーいケンシーン、この部品ちょっとデカイから手伝えー!」
「分かり申した!」
シンゲーンとケンシーンも加わって、巨大プラモ作りはどんどん忙しくなる。
そうして数十分が過ぎた時、ようやく巨大プラモ作りに終わりが見えてきた。
だがそこでペプシブの指示が止まる。
「ペプシブちゃーん、次はどのパーツを組み立てれば良いのー?」
「あの、それが、最後にはめるパーツに番号が書かれていないんです」
「部品が書かれてない?」
どういうことかとラムネス達が説明書を見に行くと、確かに最後にはめ込むパーツだけ番号が記載されていなかった。
「どういう事? 印刷ミス?」
「エネルギー不足で明かりも危ういし、その可能性が高いかも。こうなったら直接探そう!」
書いてないなら直接見て探せばいいと、ラムネス達が巨大なランナーから部品を探し始める。
けれどどれだけ探してもお目当ての部品は見当たらなかった。
「どこにも無いわよ?」
「まさか、説明書に印刷されてないだけじゃなく、部品そのものが作れなかったんじゃあ……!?」
「ま、まさか!?」
恐ろしい推測にラムネス達の顔が青くなる。
「あらあら~、困りましたわね~」
そんな時だった。何かが詰まるような音が上から響いてきたのだ。
「何だ?」
全員が上を見上げれば、天井から吊り下げられていたラムネ瓶の中に入ってビーダマがグググッ押し出されようとしていた。
そしてシュポンッという良い音と共に、地上に落ちてくる。
「うわわわわっ!?」
ラムネス達が慌てて逃げ出すと同時にビーダマが床に落ちる。
そしてポコンという音を立てて二つに分裂した。
「ビーダマが二つになった!?」
「っていうか割れたのに何で丸いんだ!?」
不思議と二つに割れたはずのビーダマは丸い形をしていた。
「一体何でまた……」
何故ビーダマが落ちてきたのかとラムネス達が首を傾げていると、それを見たペプシブが大声を上げる。
「こっ、これです! 説明書の最期に書かれている部品と同じ形をしています!」
「ええーっ!? このビーダマが最後の部品!?」
まさかの展開に驚きの声をあげるラムネス達。
「よ、よし、それじゃあ試しにやってみよう!」
ラムネス達はビーダマを抱えると、巨大プラモにそれをはめ込む。
するとビーダマは丁度良いサイズで巨大プラモにはまった。
「おおーっ! ホントにはまった!」
そして最後にビーダマを固定する蓋のパーツをはめ込むと、巨大ロボットの目が鈍く輝き、目覚めを告げるかのように低い起動音が鳴り始める。
巨大プラモの完成である。
「「「で、できたーっ!!」」」
遂に完成した巨大プラモを前に、ラムネスは大きな感動に包まれていた。
「完成ですわ~」
「これがホロボロスに対抗する手段なのね」
大きく口をあげながらミルクが金色の超巨大ロボットを見上げる。
「それにしてもデッカいなー」
ラムネスの言う通り、このロボットはとにかく大きかった。
何しろキングスカッシャーを始めとした守護騎士達の誰よりも大きいのだ。
それこそキングスカッシャーがロボットの頭に収まる程のサイズ差である。
しかもそれだけではなかった。
「まさか、もう一台あるとはぁ」
そう、巨大プラモで完成したロボットは一機ではなかった。
もう一機、黒い超巨大ロボットが完成したのだ。
「説明書には、金色のロボットがグランスカッシャー、黒いロボットがアウトサイダロンと書いてあります」
クィーンサイダロンが二つに割れたビーダマの片割れをはめ込むと、アウトサイダロンと呼ばれた超巨大ロボットがギターのような甲高い音を立てて起動を始める。
「名前までキングスカッシャーとクィーンサイダロンに似てるな」
「それに姿も」
またしても自分達の相棒と似ていることに、ラムネス達は首を傾げる。
「説明書によると、この巨大ロボットはナノマシンの集合体と書かれています」
「ナノマシン?」
ミルクが首を傾げると、ココアがペプシブに代わって説明を始める。
「目に見えない程小さなロボットの事ですわ~。この巨大ロボットがキングスカッシャーとクィーンサイダロンに似ているのも、きっとそれが理由なんですわね~」
「どうやらその様です。この試練では私達がホロボロスに対抗する手段を持つに相応しい実力を有しているかだけでなく、戦士の戦闘スタイルやどんな武器を使うのかといった事も調べていたみたいです。そうして十分なデータを集めた後で、その時代の戦士達に最も適した装備の形にナノマシンが合体する仕組みだと書かれてあります」
「なるほど、つまりオレ達は守護騎士で戦うから」
「そのナノマシンってのが守護騎士によく似たロボットの形になったと」
「そういう事ですわね~」
ペプシブとココアの説明を聞いたことで疑問が晴れたラムネス達はスッキリした顔になる。
「よーし、何はともあれ、これでホロボロスにも対抗できるようになったぞー!」
「ねぇ、でもコレ本当に完成したの?」
しかしそこでミルクが皆の喜びに水を差すような発言をする。
「え? どういう意味だよミルク?」
「だってほら、あのプラモ、部品がすっごい余ってるわよ」
ミルクが指さした先には、巨大プラモのランナーの残骸が散らばっていた。
見れば確かにミルクの言う通り、巨大プラモのランナーには多くの部品が余っている。
「「うっ」」
ラムネスとダ・サイダーの目があらぬ方向に泳ぐ。
実のところ二人も気になっていたのだが、言うべきかどうか悩んでいたのだ。
「けど確かに、あれだけ余ってると気になる……」
「なぁペプシブ、本当に大丈夫なのか?」
「は、はい! 説明書を見た限りでは今回使った部品だけだったんですけど……あっ!」
ダ・サイダーに質問されて説明書を読みなおしていたペプシブは、ある記述に気付いた。
「ありました! どうやらそれは余剰パーツみたいです!」
「「余剰パーツ?」」
「はい。施設がエネルギー不足の為に、全ての部品を新規設計する余裕が無かったみたいです。だから一部の部品は当時のものをそのまま流用しているそうです。古代の機械はこの超巨大プラモのように纏めて一気にランナーを成型する方式を取っていたみたいで、今回はそのせいで使わないパーツが余ってしまうけど気にしないでって隅っこに書いてありました」
その説明を聞いたラムネス達は、プラモデルの金型を流用する為に一部のパーツのみが違う『〇〇仕様』などといったバリエーションキットをいくつも作る手法を連想して呆れてしまう。
余談だが、ラムネスはその手法にしっかりハマってしまい、自室の棚が大変な事になっていたりする。いつの世も、モデラーの多々買いは終わらないものだ。
「ほんとにプラモみたいだな……」
「なんだかもったいないわねー」
「そうですわね~。何かに流用できれば良いのですが~」
そう言いながら、ココアは余った部品の山を見つめて何かを考え始める。
「ともあれ、そういう事なら改めて……ゴホン。ホロボロスに対抗する手段を手に入れたぞー!」
「イェーイ!」
「やってやったぜ!」
今度こそ全部の疑問が解決した事で、ラムネス達は再び喜びを満喫しだす。
じゃっかん全員の顔に白々しさへの照れが混じってはいたが。
「はっはっはーっ! これでもうホロボロスなんざ怖くないぜーっ!」
だが、その時だった。
突然施設が激しい揺れに見舞われたのだ。
「何!? またプラモが降ってくるの!?」
「それとも地震!?」
突然の非常事態に浮足立つラムネス達。
「いや違う。この揺れはどっちでも無ぇぞ!」
ダ・サイダーの推測通り、すぐに施設内が赤いランプの輝きと警報音に満たされる。
「これは~、どうやら誰かが地上から地下道へ攻撃をしているみたいですわ~!」
のんびりした口調ながらも焦りを感じさせるココアの様子に、ラムネス達は彼女が本気で危険を感じているのだと察する。
「この状況で攻撃してくる相手……モンエナ教授か!」
「ようやく来やがったか、あの爺い。丁度良いじゃねぇか、新しい力が手に入ったんだ。返り討ちにしてやるぜ!」
「ああっ! 反撃開始だっ!!」
「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」
ここに、滅びの巨人と勇者達の最終決戦の幕が開かれたのであった。
――かつて、どこかにあった刻4――
「デバッグ終了。マスターアップだ」
広い空間の真ん中で一人、主任は立っていた。
彼の立つ空間の真上には、巨大なラムネ瓶に酷似した物体が見える。
「ウロボロスに対抗できる切り札。何とか準備できたな」
ようやく全ての準備が完了したと、大きく息を吐く主任。
しかしその眼差しは口調とは裏腹に今もって脱力してはいなかった。
「無限のエネルギーを持つホロボロスと戦うには、並大抵の実力じゃあ無理だ。ただ強いだけの武器じゃ出力の差で負ける可能性が高い。だから絶対に必要なのは立ち向かう戦士のプレイヤースキル。想定しうる最高の実力を越えた更なる高みにたどり着ける実力と、不可能を可能に変える勝利への執念」
主任は手にした二つの星形メカを見つめてから立ち上がる。
「まともな奴にはこの試練をクリアする事は不可能だ。だからこそ、これをクリアできた奴になら託すことが出来る。この逆転の鍵を、な」
天井から釣り下がる巨大なラムネ瓶を見つめながら、主任は言葉を続ける。
「ウロボロスが再びこの世界に姿を現すのはいつになるか分からん。だからこそ何時、誰が、これを起動させても良いように考えうる限りの仕込みは済ませておいた」
主任はいつか現れるであろう試練に挑む戦士達に語りかける。
「最初のゲームはただのチュートリアル、隠しステージからが本番だぜ?」
その口元が楽しそうに吊り上がる。
まるでクリアできるかと言わんばかりに。
「頼んだぜいつか来るどこかの誰か。俺の、俺達の心残りを頼むぜ!」
それだけ言うと、主任は灯りを消して部屋を出る。
その入り口にはこう書かれていた。
『ネオ・ガーディアン・オブザーバーの間』
「さぁ、次は時空間のこじ開けだっ!! 待ってろよ二人共!」
疲れ切った体を休めることなく、男は新たな戦場に向かって歩き出した。
~第4話へつづく~ ※次回は8/18(水)更新予定です
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