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Bruce Springsteen / Greetings from Asbury Park, N.J. (1973)

やがてアメリカン・ロックを体現する”ボス”となるブルース・スプリングスティーンが23歳のときにリリースしたデビュー・アルバム。

”ディラン2世”を探すレーベル側に「フォーク系SSW」のイメージを押しつけられるも、彼はその枠を飛び越え、ロックンロールの疾走感で駆け抜け、スケール感のある弾き語りで聴かせる。

盟友クラレンス・クレモンズらE・ストリート・バンドの面々も一部参加し、バンド・サウンドを基調としたロックンロールを主体に、ディラン譲りのフォーク・スタイルの楽曲も含んだ本作だが、やはり白眉はストーリーテリング。熱い歌唱とは対照的に、淡々と写実的に人や物や風景、出来事を切り取り、社会の片隅に生きる人々の物語として読み応えのある内容(アルバムの尺の割に詞の分量が多い!)。

その感情を押し出した熱唱と群を抜くストーリーテリングが、聴き手を楽曲の中にぐいぐいと引き込む。スタイル云々ではなく、彼の歌の力の普遍性を示した入魂のデビュー作。



半世紀前の今日、世に出た「ニュージャージー州アズベリー・パークからの挨拶」。

僕は”ボス”としてアメリカを代表するロック・スターとなる前の時期が特に好き。このデビュー作はメロディこそまだ粗いが、上に書いたように詩作は秀逸。読むだけでも引き込まれるのに、彼の声でやや不器用に、そしてときに感傷的に歌われ、その魅力が増す。その意味では(タイプは違えど)ディランに匹敵する存在感を放っている。特に③⑤⑨あたりは圧巻で、ひたひたと真に迫ってくる。

そのディランにレナード・コーエン、そしてブルースと、見出したのはいずれもジョン・ハモンド。凄い眼力。

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