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いま、着地型観光がおもしろい!既存観光地での新たな挑戦

地元の人たちが知恵を出し、工夫をこらし、その地のことを深く知ることができる魅力的な観光プログラムをつくる。全国各地で増えてきた「着地型観光」が加賀でもスタートしようとしている。「暮らしを魅せるスローツーリズム」プロジェクトだ。古来より温泉地として旅人を迎え入れてきた地で、どう新しい価値を生み出していけるのか。プロジェクト関係者に話を聞いてみた。

「加賀温泉」という温泉はない!あるのはポテンシャル

特急列車の停まるJR加賀温泉駅。電車で加賀に来る多くの旅人が利用することになる。加賀温泉駅と聞くと「加賀温泉」という名の温泉地があるように思えるが、実はそうではない。加賀にあるのは山中温泉・山代温泉・片山津温泉の3つの温泉であり、駅近に一つの「加賀温泉」があるわけではないのだ。
「たまに旅人から「加賀温泉」に行きたいと言われるんです」そう話すのは駅中の観光案内所でインバウンド・コーディネーターとして働くアレクサンドル・ルロワさん。本プロジェクトのパートナーの一人で、事業に必要な技術や知識を提供してくれる。仏・英・西・伊・日・露・独の7ヶ国語を操る彼の元には外国人観光客がよく立ち寄る。多くの旅人と話すなかで「加賀観光にはポテンシャルがある」とルロワさんは感じているという。

「東京や大阪、金沢から加賀に来る旅人は、ここに来てやっとゆっくりできたと言います。温泉+αでどこかまわってみたい、特に欧米人はトレッキングやハイキング、サイクリングなどの「アクティビティ」を楽しみたいという声も結構ありますね。加賀は静かな場所なのでゆっくり楽しみたい人が多いのだと思います。ただ長期間安く泊まれるゲストハウスのようなものが加賀にはない。いろいろなところに行きたいと思っていても長くは滞在できない。『加賀にはよいところありそう』と感じながらも、それらを充分に体験できないまま帰っていく人が少なからずいるのです。日本を発見しようとする意欲のあるそうした人たちのためにも、将来的にはスローでオーセンティックなツーリズムをやりたいです。いろいろな宿泊施設もあるとよいですね。なんでも多様性があるのはよいことです」


多様性が価値を生む

このプロジェクトはNext Commons Lab加賀事務局も一緒に事業を立ち上げることになる。暮らし方や働き方など、生き方の選択肢を拡大したいとNext Commons Labに参画した事務局の田中美紗斗さんは、バックパッカーでもある。このプロジェクトでは「旅の選択肢を拡大したい」と語る。

「温泉旅館に泊まっておいしい料理に舌鼓を打つのも旅の楽しみの一つですが、もっと多様な加賀の楽しみ方があればよいと思います。加賀は海・山・川・潟などの自然が豊かで、温泉文化や伝統など本当にたくさんの資源がある。春夏秋冬それぞれ全く違う顔を見せてくれるのも好きです。でも短期間で観光施設を巡るだけでそれら全てを味わうには限界がある。新しい加賀の楽しみ方を提示することで、これまでの観光との相乗効果も生まれるのではないでしょうか。例えばこれまで「温泉」が目的だった加賀に、ルロワさんの言う「アクティビティ」という新しい付加価値をつければ、それを目的に旅館に滞在するということも出てくると思います。あとはこれからNext Commons Lab加賀で始まる他のプロジェクトからのアイディアも含めて、新しく生み出すものと今までの伝統をかけ合わせることもしたい。山中・山代・片山津・橋立・大聖寺・動橋の地域間をつなぎ合わせて、加賀全域を楽しんでもらえるような仕掛けをつくりたいです」

このプロジェクトでは旅の選択肢を増やす方法として、土地の暮らしを身近に感じ「異日常」を気軽に体験できる旅プログラムの構築や滞在拠点を確立していく。プロジェクトパートナーには前述のルロワさんの他、山代温泉で旅館を営む萬谷浩幸さんも共同創業者として参画する。多様なメンバーで構成されたこのプロジェクトチームに、さらに素敵な化学反応を起こしてくれるラボメンバー(起業家)を募集している。


宿=旅の拠点

萬谷さんは「新しいことをどんどんやっていかないと」という気持ちから、ゲストハウスや着地型の体験観光に積極的に取り組む考えだ。素泊まりや連泊する人が増えてきていて、新しい滞在方法を提示する必要性を感じているという。

「昼間に館内をふらふら歩いている人をみると、なにか過ごし方の選択肢を提案しないといけないのではという義務感を覚えたりもします。Web上で送迎を手配・決済しアクティビティを楽しむということは海外や北海道・沖縄ではできているけれど、これからはそれが求められるのではないかな。先日ニセコに行ったらホテルにもアクティビティセンターあって、他の宿に泊まっている人がアクティビティに参加していた。ホテルが一つの拠点として機能していたんです」

今募集しているラボメンバー(起業家)は、萬谷さんと一緒にゲストハウス事業の立ち上げを行うと同時に、そこを拠点にどう温泉街や加賀市全域を周遊してもらうかという旅プログラムを企画することになる。将来的にはそのゲストハウスのオーナーになってもよいし、立ち上げの経験を元に別のゲストハウスを複数立ち上げてもよい。関わり方はその人次第だ。旅プログラム開発に比重をおいて、アクティビティの拠点としての宿をプロデュースするという方法もあるだろう。

日常に潜む宝を魅せる

旅プログラムの開発には、山中塗や九谷焼など加賀の「ご当地」にそこまでこだわる必要はなく、その土地や人に触れられるものであればよい。それよりも重要なのは、普段見落とされがちなものを新たな視点で再編し、発信していく感性だ。地元の人にとっては何気ないものだったり、普段の生活に溶け込んでいるものなど、その地に根ざした日常の中にこそ意外な宝物が潜んでいる。そうしたものの発掘には時に地道な活動も必要だ。

萬谷さんは語る。
「今回募集するラボメンバーにはマーケティング視点と経営感覚を持ち合わせていてほしいけれど、なにより地に足をつけて活動できる人に来てほしいです」

地域をまわり、人と会い、素材を見つけ、暮らしの中での魅力を発掘するためには、独自の土地柄を受け入れ地元のネットワークを広げていくことも必要になるだろう。だがそれはその人自身が加賀を再発見し、知られざる魅力を味わい尽くす体験そのものにもなるはずだ。市内でも地域ごとに異なる歴史と豊かな暮らしのある加賀でどんな新たな体験ができるようになるのか、楽しみだ。

「暮らしを魅せるスローツーリズム」プロジェクトについて

【説明会】
第4回 : 2017年6月18日(日)14:00〜16:00 (東京) FabCafe MTRL (ファブカフェマテリアル)東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア2F 
第5回 : 2017年6月19日(月)19:30〜21:30 (大阪) ハローライフ大阪 大阪府大阪市西区靭本町1-16-14
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