見出し画像

[レポート]障害のある人の表現と伝統工芸をめぐるリサーチシリーズ|ジュエリー(竹工番外編)


6/23(木)GJ! Center KASHIBAにて、京都の高野竹工より井澤葉子さんをお招きし、ジュエリーに関するレクチャーをしていただきました!

画像11

高野竹工さんは、京都府長岡京市を拠点に茶道具から日用品に至るまで多彩な商品を製作しています。昨年度開催した「障害のある人とサポーターのための素材をめぐるリサーチ・ツアー」「素材をめぐる、障害のある人とサポーターのためのワークショップ」にも関わっていただき、メンバーと共に竹の生態系や素材としての竹の可能性について考えを巡らせました。

今回は、番外編として井澤さんからジュエリーの考え方やものづくりへの思いについてのレクチャーをしていただきました。

’ジュエリー’とは?

古くから貴金属や宝石などが栄えてきた海外では、植民地などの争いの歴史もあり、戦火でも持ち運べる「財産」として美しいジュエリーが文化として発展してきたそうです。一方で、日本では歴史的な背景から、’財産’としてのジュエリーが古くからあるわけではなく、帯留めや簪(かんざし)などの「機能」が装飾としても用いられる点が特徴だそうです。

元々彫金をやっていた井澤さんがジュエリーを勉強しにイギリスに行かれた際、改めて日本独自の美しさに気付いたそうです。

井澤さん「フォークやスプーンとは違って、お箸は使わなければただの棒。風呂敷も使わないときは平面で、使う時だけ立ち上げる。人とモノが一体化して機能が生まれるところに、美しさがあるー」

井澤さんが専門とされているのは「コンテンポラリージュエリー」と呼ばれる分野で、自己表現に近いものだそうです。

画像2

身に着けられるもの、そして身体と一体化するものがジュエリーであり、自由な表現ができることが分かりました。

日本のものづくり

井澤さんが魅力に感じていると仰っていたのが、日本で「土地でとれるもの」のものづくりが盛んである点。土地から得られるものがあることの偉大さに着目し、素材を見直し自然に近付きたいという思いをもちながら、現在も竹工に携わっているそうです。

ジュエリーの可能性

井澤さんが当日つけられていた素敵なブローチ。これは、京都にある就労継続支援施設・西陣工房とコラボレーションしたものだそうです。メンバーさんが組紐の練習のために使う組紐を再利用し、繋げてブローチにしたもので、参加者はかたちの決まっていない自由なデザインに興味深々でした。

井澤さん「余ったものやかたちにならなかったものを利用することに意味があるー」

留め金の部分は井澤さんはご自身で製作されたそうです。そのデザインの美しさは、ブローチ自体の素敵な印象にも関係していると感じました。お話を聞くと、ヨーロッパではジュエリーの留め金までオリジナルで製作されているのが一般的だとか。日本では既存のものが使われることが多いそうで、ジュエリーに対する考え方の違いの面白さも感じました。

画像3

画像4

そして井澤さんの作品も、手に取って見せていただきました。

画像5

画像6

伸縮性のある布に包まれた優しいジュエリー。手に取るのが楽しく、思わず様々な角度からじっと見つめたくなりました。

普段から既存のものとものを組み合わせて表現することが好きなGood Job!センターのメンバーの池田永遠さんが自分で作ったプラモデルと井澤さんのジュエリーをコラボする場面も。

画像7

画像8

さらに池田さんは井澤さんのネックレスに刺激をうけ、値札シールをつないだ創作物をもってきて、みなさんに披露。井澤さんからは、「これもコンテンポラリー」と言葉をいただきました。身につけられる一面も。

画像9

画像10

様々な質問が笑顔で飛び交う、とても和やかな時間になりました。

新しいものづくりのあり方を模索して

今回は、高野竹工より井澤葉子さんをお招きし、お話を伺いました。

身に着けること・自己表現であること・自由に美しさを見いだせること。今まで持っていたキラキラしたイメージとはまた違う、ジュエリーの考え方を学び得ることができました。

今後も「伝統工芸」や「福祉」の観点から、新しいものづくりの在り方を模索していきたいと思います!

井澤葉子さんプロフィール
英国ロイヤルカレッジオブアートでジュエリーを学び英国を拠点にジュエリー作家として活動ののち帰国。素材とモノづくりの在り方に疑問を感じていた時に高野竹工と出会い、地元の竹の整備を始め手間暇かけて材料とする姿勢や役目を終えた古材を使ったモノづくりに感銘を受け2019年より高野竹工の仕事の発信に従事する。
高野竹工株式会社について
高野竹工は、京都の竹細工店に生まれた初代社長不窮斎高野宗陵が嵯峨野に会社を設立してから50年に渡り、さまざまな技を持つ職人を中心に、茶道具から日用品に至るまで多彩な商品を製作し続けています。現在は良質の竹の産地として知られる、京都府長岡京市を拠点に、竹を育てながら製造から販売に至るまで、また企業やアーティストとのコラボレーションなどの取り組みも意欲的に行っています。
HP: https://www.takano-bamboo.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?