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「シルバー民主主義」若者の声 政治に届けるには?


(2019年7月12日(金)の放送より)

参院選の投開票まで
あと1週間あまりとなりました。
ここのところ、
高齢者の意見が反映されやすいということで
「シルバー民主主義」という言葉が
広がっていることを皆さんご存じでしょうか?
それでは若者の声を政治に反映するには
どうしたらいいのか。
頭のパズルをしてみませんか。

東京は朝から雨…。
それでも若者たちは、集まりました。


「選挙に毎回行くが、
自分の投票と政治が距離が遠いというか、
自分の行動が政治にどう関わっていくのか
実感がまだなくて…」


「ちゃんと何が良くて、
どの政党が何のためにやっているのか、
いまいち把握しないまま
選挙に行っていたこともあったので」


選挙や政治を通して、
これからの社会のあり方について考える
トークイベント。
なぜ若者は、投票へ行かないのか、
どうすれば行くのか、
対話しました。

●社会起業家
「(若者は)投票に行くというか
場所に行くのがめんどくさいんですかね」

●主婦
「気持ちの問題という感じが」
●社会起業家
「あぁ、そうなんだ」

●主婦
「家族が増えたりとか、
ほんとに明日の生活が変わるとなれば、
けっこうちゃんと(公約を)読むし、
その人に自分の生活をかけるような思いで
自分の1票を使いたいと思うようになるが」



少子高齢化が進む日本。
いまや有権者の約4割が60歳以上です。

さらに投票率でも、
60代約72%
20代の倍以上となっています。

このため各政党は選挙で影響力の強い
高齢世代に配慮した政策を掲げる傾向
高まることがあり、
「シルバー民主主義」と呼ばれています。

「(投票に)強制的に行かせるような仕組みが
あったらいいんじゃないかなと。
行かないと罰金みたいな」


若者の声をどう政治に反映させるか。
このあと、スタジオで考えます。

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小川)
一緒に考えてみましょう、ということでここからは世代間問題について研究をしていらっしゃいます、法政大学の小黒一正教授にお話をお伺いして参ります。よろしくお願いいたします。

小黒)
よろしくお願いします。

小川)
小黒さん、VTRでもご紹介いたしました「シルバー民主主義」ですけれども、少子高齢化が進む中こうした問題が起きている。これどういう風に受け止められていますか。

小黒)
政治は基本的に多数決で決まるもので、今後ですね、2050年になると75歳以上の高齢者、大体2500万人ぐらい。人口は大体1憶人ぐらいですので、4人に1人が75歳以上と。他方で、若い世代は少子化でどんどん減っていきますから、政治の意思決定のなかでだんだん不利になっていくというのは仕方のないような状況だということですね。

小川)
これはもちろん長寿がダメだとか、高齢者の意見が反映されるのがダメとかそういうことではないですよね。

小黒)
そういうことではないんですけれど。

山本)
こうした中で、参院選の投開票迫っているわけですけれど、投票に行かないと決めている方も、こちらの数字をちょっと見ていただきたいんですね。

山本)
各世代が生涯を通じて年金や医療といった政府から得られるサービス「生涯受益」から、税金や保険料として支払う「生涯負担」を差し引いた金額を示したグラフなんです。高齢者は、こちらプラスになっているのに対して、私たちや小川さんの世代というのはマイナスになっているのがわかりますよね。さらには、これからの世代の将来世代というのは、ここまで負担が広がっていってしまう。単純計算でも1億円ぐらいの差が出てきてきてしまうということなんですが、この世代格差どうして生まれてしまうんでしょうか。

小黒)
一つは社会保障で特に年金は、今の高齢者の方はそれなりにもらえますけれど、だんだん支え手が減りますから、年金の金額が少なくなっていくことで受益と負担の格差が発生するということが一つあります。あともう一つは、今、1千兆円ぐらいの政府の債務があって、毎年その赤字が発生している分を、将来世代、若い世代に先送りしていると。こういった現状があるわけですね。これは非常にひどい状況ですので、こういった世代ごとの受益と負担を明らかにするものを「世代会計」というんですけれども、世代会計を開発したボストン大学のコトレコフ教授というのは、こういうような実態を「財政的幼児虐待」、という風に呼んでいるんです。

小川)
大幅にこうツケがまわっているわけですもんね。

星)
若い人に財政的負担を強いているということですよね。

小川)
これはあくまで平均ということで、もちろん高齢の方のなかにも貧困で困っている方もいらっしゃいます。それはまた別の問題として考えなければならないんですけれども、若い方たち、そして将来世代にとってこれは非常に深刻な問題ということで。では、どうすればいいのか。これはたとえば選挙の在り方を変えてみてはいかがでしょうかということで、ここからは小黒さんが考えていらっしゃる3つのアイディアをご紹介していただきます。こちらに出していただくんですけれども、まず一つ目は。

小黒)
「世代別選挙区制」というものです。今はですね、地域別に小選挙区をつくって、政党ごとに戦って1人の方が議員として最初に当選するという形になるわけですけれども、ここにある図は議席数が450の場合にですね、選挙区を大きく3つに分けると。30代以下の青年区、それから40~50代の中年区、それから60代以上の方の代表をつくる議員の方がそこで当選される老年区、というようなものに分けるんですね。で、各選挙区に議員になりたい方が立候補して、当選すると。議席数の割り当てはどうするかというと、各30代よりも下の方々、40~50代、60代という有権者のボリュームで割り振るということなので、議席数はたとえば青年区は100.中年区は150、老年区は200というような形で選挙が行われるという仕組みです。

小川)
有権者の中の世代間の割合が、そっくりそのまま議席に反映されるということに。

小黒)
世代の代表が国会に出て、いろいろ議論するというような場になるということですね。

小川)
なるほど。これが1つ目の世代別選挙区制ですけれども、2つ目参りましょう。2つ目はこちら、「ドメイン投票法」ということですけれども、これは小黒さん。

小黒)
これは、日本も最近20歳まで、から選挙権、今度2016年から18歳からに変わりました。ですけれども、18歳以下の方々は選挙権を持っていないんですね。アメリカのピーター・ドメインという人口学者が、そういうようなまだ選挙権を持っていない子供の方々にも投票権をあげたらどうかという仕組みを考えまして、それが「ドメイン投票法」と呼ばれるものになります。どういう風にするかというと、真ん中のところを見ていただくと、青いのが2つ両親なんですね。で、1人の子供がいる場合はそこに1票与えられるんですけれども、この場合両親が2人いますので、1人は0.5票、投票をもらえる。子供が小さい場合は投票ができませんから、代わりに両親が投票して1.5票投票できるという仕組みになる。

小川)
子供の分も投票に反映されるということになるわけですね。そして3つ目なんですが、これ「余命投票方式」ということで、平均寿命を80歳とした場合、その余命に応じて投票のボリュームが変わると。これ結構刺激的ですね。

小黒)
これは寿命が80歳の場合ですけれども、ここにある30歳の方というのは残りの余命が50年ありますので、50票投票できると。70歳の方というのは、余命が80歳の場合は10年ありますので、10票投票できると。これ一見一人1票持つという原則に反するんですけれども、自分が投票権を持ってから余命まで、投票の総数を考えると平均寿命まで生きる方は皆さん同じ投票数を持つということで、生涯を通じれば投票の総数について格差はないだろうと、そういう仕組みなんですね。

星)
おそらく現実には、憲法の規定とか既成政党の反対で、なかなか実現はしにくいでしょうけれども。若い人にぜひ投票に行ってほしいという問題提起には十分なりうると思いますね。

小川)
選挙制度改革というところも含めて、投票行動に生かしていただきたいと。皆さんどうお考えでしょうか。