小売業界の取り組むべき方向性とは

今、小売業界ではパラダイムシフトが起こっている

日本の小売業界はこれまで3度に亘る節目を経ている。1度目は20世紀初頭に様々な商品を取り扱うデパートが出現した。2度目は1960年代に大量生産・大量消費という社会背景の中、スーパーマーケットが出現した。そして3度目は1990年代、市場が成熟化する中で消費者の嗜好が多様化するに伴って商品・サービスの細分化が進み、コンビニやGMSといった小売形態が出現した。そして、現在デジタルテクノロジーの進展を背景に、Amazonや楽天といったIT企業の参入により小売業界は大きな節目を迎えている。

フェーズ1:小売のEC化

Amazonや楽天といったEC(E-commerce)が台頭してきたことにより、既存小売企業各社もECへ乗り出した。ECが浸透したことで今ではスマホ一つあれば、いつでも、どこでも、なんでも欲しいと思った時に注文でき、家まで配送してくれる世界となっている。しかし、既存小売企業にとってECは実店舗へ顧客を誘導するための手段(Online to Offline)として位置付けられているように見受けられる。またECと実店舗の仕組みが分断されており、双方を跨いだサービスを提供している企業は限られる。

フェーズ2:来るOMOの世界

元Google中国のCEOの李開復(リ カイフ)が「OMO(Online Merges with Offline)」という言葉を提唱した。

日本では2019年3月に初版が発行された『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』によって有名になった。

OMOとはオンラインとオフラインが融合した世界を顧客視点で表現した言葉である。そこでは顧客はオンラインもオフラインも意識せずに、双方のサービスをシームレスに体験できる。

例えば、家具が欲しいと思った時に、ある家具メーカーのアプリで欲しい商品を探しリストに追加する。後日、家具メーカーの実店舗へ伺い、その商品を実際に目で見て、触って確認する。良いと思ったのでアプリ上で購入し配送を依頼する。さらに、従業員に相談した場合も、過去に実店舗とECで購入した履歴から自分に合った最適な商品を提案してもらうこともできる。

DXとOMOの関係

参考までに、昨今話題となっているDXとOMOの関係について少し触れておく。DXは企業がデジタル技術を活用し顧客視点で新たなビジネスモデルを創出することである。そのDXによって新たに創出されたオンラインとオフラインがシームレスに体験出来る世界がOMOである。DXについては下記リンクを参照いただきたい。


日本の小売業界に押し寄せる波

実店舗の在り方が変わりつつある

これまで消費者にとって買い物は実店舗で行うものであり、ECはその補佐的な位置づけであった。しかし、今後ECでの購入が慣習化されてくるとその位置付けは変わってくるだろう。そして実店舗は顧客にとって特別な体験を通じて自己表現価値や情緒的価値を感じる場となる。企業にとっては顧客と接することができる重要な場、且つ顧客の行動データが取得できる貴重な場となる。


図1

出所:『カスタマーサクセス』顧客価値の階層


大きく後れを取る日本小売業界

IT企業であったAmazonが2018年9月にレジ無しコンビニ「Amazon Go」を展開し、本格的に小売業界に参入してきた。そして、2020年2月にはレジ無しスーパーマーケット「Amazon Go Grocery」を展開した。その背景は顧客との接点において重要となるハイタッチの機会を作るためと考えられる。最近、日本でもセブンイレブンやローソンがレジレス店舗の実証実験を開始したと発表している。しかし、これら取り組みは恐らく実証実験で終わるのではないか。リスクを嫌う日本企業にとって実証実験とは都合の良い言葉である。日本企業の特徴として、ある目的のために実証実験に取り組むというよりは、実証実験自体を目的としている傾向が強い。そのため、多くの実証実験が本格展開に繋がることなく終了している。目的が無いが故に適切なKGI、KPIを定めることができず、関係者に限って実験を行うため、そもそも本格展開するに値するかどうかを判断できない。恐らくこの傾向は今後も続き、IT企業との差は開くばかりではないだろうか。

今後小売企業はIT企業の土俵で戦わざるを得ない

EC化以前の小売業界でのKSF(Key Success Factor=成功に繋がる主要因)は、立地利便性と品揃え、商品力であった。しかし、OMOの世界では「顧客データの活用」となる。

OMOの世界では顧客の購買データのみならず、非購買データを活用し新たなサービスを創出する。また、サービスがある程度形になったら上市させ、粗探し(バグ出し)を顧客に担ってもらい、得られたバグを改修し改善版サービスを提供する。このPDCAを高速で回すことで顧客に対して常に新しい価値を提供している。これはまさにIT企業の戦い方である。そして小売業界の土俵が徐々にIT企業の土俵に変わりつつある。では、日本の小売企業はどのように対応すればいいのだろうか。

OMOに向けた取り組みにおけるステップ論

図7

目的の設定

まずは「何をしたい」「そのためには何をしなければならない」「それを達成するためにはどのような手段があるか」をしっかりと検討しなければならない。昨今デジタル技術の進展により顧客データを取得する様々なソリューションが出てきている。しかし、決してソリューションドリブンにならず、目的ドリブンで検討を進めて行くことが重要である。当たり前であるが、案外ここが抜けてしまっていることが多い。

ソリューション選定

そして、実証実験を通じてソリューションの中から、使用できるソリューションを選定していく。

データ整備

ソリューションの活用によりデータが取得できた後、それらデータの統合、整備が必要となる。ソリューションごとにデータベースが分かれ、それぞれの形式でデータが散在していると、横断的な分析ができない(下図)。そして今後競争優位の資源がデータとなっていく中で、いかに質の高いデータを有効活用できるかが重要となってくる。

図4

横断的な分析、されにはその後AIを活用することも見据えるとデータ整備は欠かせない。

図5

データ活用

最後にデータを活用しながら全く新しいサービスをグランドデザインしていく。この時重要なのが、「顧客視点」でのサービスを意識することである。これらステップを高速で回していくことが必要となる。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございます。小売業界で働いておりますが、まだまだ勉強不足のため、是非、様々なご意見をいただければ。

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