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【対談書き起こし】 アフターコロナのニューノーマル | 山崎大祐 × 高木新平

本noteは、2020年6月1日にForbes Japan主宰で行われたマザーハウス副社長の山崎大祐氏(以下、山崎)とNEWPEACE代表の高木新平(以下、高木)による「アフターコロナのニューノーマル」についての対談を書き起こし、note用に編集したものです。

新型コロナウイルスによって見えてきた、これからの時代のリーダーシップとは?

ー 緊急事態宣言が解除されましたが、経営者としてコロナショックをどのようにご覧になっていますか?

高木:改めて、未来が不明確なことを痛感する事態だったと捉えています。僕は常々、この国や社会全体にはビジョンがないと感じました。日本はどういう方向に向かおうとしているのか、全く分からない。そのため、政府より民間のトップのほうがその視野でビジョンをもって動けるので、声が届きやすい状況が生まれているのかなと。これはもう、どういう未来を作っていくのかを明言して引っ張るしかないと思っているので、改めてビジョンが必要だなと強く感じています。

ー 今までにも、阪神淡路大震災に始まり、沢山ショックといわれるものがありました。今までそれらを変革のチャンスにできなかったと思うんですが、今回はその辺はどういう風にお考えですか?

山崎:東日本大震災の時にも痛感したのですが、こういう緊急事態ではVISIONINGが超重要なんだろうなと。だから高木さんを招待しているのですが。今までとにかく目の前の課題を解決しなきゃって意識が強かったと思うのですが、そろそろ未来創造に目を向けないといけないなと。僕は未来創造型リーダーシップって呼んでるんですけど、今回の事態で、30から40兆円ぐらいの財政が投入されるわけです。本来これだけの金額を使うってことは、どんな未来のためにっていうビジョンがすごく必要ですよね。目の前の問題解決と未来創造をリンクさせることが求められていると感じています。

高木:阪神大震災やリーマンショックと異なる点は、政権の支持率が下がってる点だと思います。政治って、一つの国民感情の総体だと思ってるので、すごい興味深く見てるんですね。今回、安倍政権が支持率が落ちている理由は、ちゃんとマスクのある状態を整えるなどのアクションを民間より早く実施できなかったからだと思っています。国がやってる記者会見や会議は三密だし、説得力がさらに失われた。また、これから経済格差は広がっていくと思っているのですが、コミュニケーションにおいての力関係は変わっていくと感じています。アメリカで黒人の方が白人警察官に殺されてしまった件で、今すごいデモが起きてるように、大衆の反逆的なことが起きている。経済格差の逆側でそういう青年層がリーダーになった反逆というものが起きていて、主導権が変わってきてるんじゃないかなと。

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アメリカで黒人男性が白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件による抗議デモの様子。ニューヨーク中心部でも大勢が人種差別に反対する声が挙げられた。(NHK NEWS WEB「アメリカ黒人男性死亡 7日も各地で抗議デモ続く」より引用)

ーまさにそこをお伺いしたいです。VISIONINGをするにしても、必ずリーダーが牽引しますよね。今後どういったリーダーシップの形が必要だとお考えですか?

山崎:予測できない世界には、正しいか間違っているかではなく、みんなが向かう方向を決めるためのリーダーシップが必要です。このリーダーシップには信頼関係が非常に大切。今世界を見ると、信頼関係構築のために、リーダーが直接世論に対して話しかけるようになりました。そうすると、つじつまが合わない点が出てくるとすぐにバレてしまう。そのズレによって、世の中が経済とか政治に興味を持ち始めているのは大きな進化だと思っています。例えば、最初に社会的に守られる立場になったのが、フリーランスの人たちなんですよ。こんなこと、10年くらい前では考えられなかった。政策を決めるときに自分たちの声が届く成功体験はこれがスタートになる可能性があります。

ー高木さんはこれまで幾度もVISIONINGを行っていますよね。日本では数少ないアクティビストだと思ってるのですが、共感を生み出すために必要な要素とは何でしょうか?

高木:今まで、企業が一方的にコミュニケーションを操作しようとしたのを、これからはいかに個人をエンパワーメントし、周りの人に「参加」してもらうかが大事になってくると思います。参加の濃度が違うだけで、ひとつのビジョンに基づいてみんなが参加している状態が理想。例えば、今リモートワーク化が進み、社員が主導権を持ち始めてる中では、その社員の力を押さえつけるのではなく、どうやったらその社員が高い生産性で働けるか?などの観点を持つ必要があると思います。

山崎:僕も高木さんに賛成ですが、この10年間で、実は日本は景気が良くて、アメリカの失業率が15パーセントなのに比べて、日本が2.5パーセントだったことを踏まえ、雇用を守れるバッファーとしての日本企業のあり方は再注目されています。そうすると、もう一度企業に対して我慢する時代が来る可能性がある。今回で言うと、リスクを取っているフリーランスの人たちが今回のこの状況に対してある程度被害を受けているのがは、この10年間変わってきた働き方改革がもう一度変わる可能性があると僕は思っています。

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大野研究室「日米の失業率」より引用。
データ出所:米労働統計局、総務省統計局
注意:アメリカと日本では完全失業者の定義が若干異なっていますが、上記グラフは米労働統計局と日本の総務省の発表データをそのまま、つまり定義を統一していない両国の数値をそのまま使用しています。
注意:2011年の日本の失業率には福島県、宮城県、岩手県の推計値(3月-8月)が含まれています。

ーそういった意味でリスクを回避するための終身雇用制度とも言えるもと思いますが、今までずっと言われてきた生産性の低さや個々人に対するエンパワーメントの弱さという問題点もありますよね。そこの両立は可能なのでしょうか?


山崎:両立しないといけないと思います。今の時代は「何ができるか」よりも「何のために働くのか」が凄く重要で、そのためには明確なwhyが必要。whyを明確化させるために、うちの社内研修ではリベラルアーツから学び直したりしています。今はある種のサバイバル能力が問われている時代だから、明確なwhyに基づいて、多様な方法論でフレキシブルに戦っていける力が必要です。学習能力のない組織と変化能力のない組織は淘汰されやすいと思います。

ーまさに、マザーハウスはwhyが明確化されている企業ですよね。しかし、複合的な企業だとなかなかwhyが時代によって変わるとも思うのですが、どうすればwhyに立ち返ることができるとお考えですか?

山崎:この危機を生かせる会社になることだと思います。人や企業って、外的環境が大きく変わったときに自己存在について考えさせられる。やっぱり、生きるか死ぬかみたいなリスクの時って人間は思考するし、外的なリスクが来た時は本来一枚岩にならなきゃいけないことに気付く。危機ってそういう機会もあるので、経営者としては危機をどう活かすかの問いかけはたくさん行いましたね。

アフターコロナの「ニューノーマル」とは?

ーコロナを超えた後のニューノーマルに、どのようなキーワードを見出していますか?

高木:僕は経済格差の拡大が起こるなと思っていて、それによって大衆の反逆のようなことが生まれると思います。そうなったときに、企業も自治体も、ビジョンを中心にどうやってコミュニティを作れるかが大切になる今まで、地方自治体とかって自分のコミュニティをいかに盛り上げるかよりも、新しい人たちを呼ぶことに重きを置いていた。インバウンドはその最たる例だと思います。今回の件で、街の情報がオンラインちゃんと発信されてる事例がほぼないことに気づいたはずです。これは企業も一緒ですけど、場所ありきのコミュニティだと、オンライン上で所属感とかがキープできない。これからは「都市/地方」ではなく、「コミュニティを作れているか否か」という新しい二極化が生まれると思いますし、そういった点でコミュニティがキーワードになっていくんじゃないかと。

ー山崎さんはどうお考えですか?

山崎:ニューノーマルっていう響きが持つ万能感を気を付ける必要があると思います。ノーマルって、「みんなが同じようになる」と聞こえますがむしろ逆なんです。コロナでわかったように、みんな違う行動を取っている。ニューノーマルの意味というのは日本が持ってるマス幻想が壊れることだと思っています。理由の1つは、みんなが経済的に成功できる訳ではないことが明白なので、経済的な理想を求めていなかった人たちも、きちんとした生き方を探し始めること。また、経済的な視点で言うと、僕は「七割経済」と言っているのですが、ソーシャルディスタンスの影響でキャパシティ的に7割程度しか人が入らなくなります。そのとき、売り上げを保つためには2つ方法があって、1つ目は方法単価を1.5倍することで、そのためにはオリジナリティのある企業になることが不可欠。2つ目は、コストを7割にすることです。7割経済の中では、この2つの考え方が広がっていくと思います。だから、僕はやっぱりこうオリジナリティーが目立ってくるを社会を作って行かなくてはいけないし、生き方も多様になってるなと思います。

ーこれからの時代で、企業が生き残るためのキーワードには何が挙げられますか。

山崎:サバイバル能力ですね。やっぱりフレキシブルさが大切で、今までみたいにhowにこだわってる人というのは生き残っていけなくなる。「小売業はお店でやるべき」とかではなくて、whyに拘る必要があります。お客さまが喜ぶとか、途上国の可能性を形にするとか、やっぱwhyにこだわる人たちがやっぱり結果として新しいチャレンジをしてサバイバルしていくと思います。

ーものが溢れている時代にwhyを見つけたり、自分をVISIONINGをすることは、難しいのではないかと思いますが、高木さんはどうお考えですか?

高木:難しいですよね。今は、奇跡的に強い問題意識とか主観を殺されずに生きている人たちだけができている状況だと思います。そんななかで、僕はこういう時にwhyにこだわった会社が勝つことが大事だと考えています。例えば海外で「EVERLANE(エバーレーン)」という会社が「Radical Transparency」と言って原価開示をしてきましたが、好景気だからできたことだと言われ始めているわけです。僕はwhyにこだわるだけで会社が生きていけるとは思っていませんが、whyにこだわった会社が勝たないと希望がなくなってしまうと思います。そういう会社が勝ち、生き延びる事例をたくさん作っていくことが、結果的にwhyが大切だと社会全体が学んでいくことにつながるんじゃないかと。

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2010年、米国サンフランシスコで創業した「EVERLANE(エバーレーン)」「徹底した透明性 (Radical Transparency)」を掲げ、自社で製造・販売するすべての商品の原価や、「Traditional Retai(従来の小売りであればどのくらいの価格なのか)」公表している。

ー抽象度の高いVISIONINGをするためには、どのような目標に向かうかが抜け落ちているような気がするのですが、今後私たちはどういった未来を提示していけば豊かな方向に向かっていけるのでしょうか。

山崎:コロナが突きつけたものとして1個重要なのは、経済のセーフティーネットが重要であり人々は経済で動くということです。今って雇用調整助成金の話だったり、お金の話ばかりされていて、コロナ関係の記事ってほとんど読まれなくなりました。僕は、命と経済が両立してはじめて価値観の多様性があると思う。だからいきなり日本経済は変わらないと思うし、リーダーの役割というのはバランシングにあるのは事実なんですよ。でも一方で、助け合って生きていかなきゃいけない意味で言うと、僕は絆2.0と読んでいるんですが、今までは政府が経済を決めていたけど、クラウドファンディングのように、助け合う日本的なプラットフォームが震災やコロナで浸透し始めている。だからこれからの経済は、政府の力によってある程度作っていく側面と、助け合いのプラットフォームの両軸で日本が成り立って欲しいと思っています。

ー高木さん、日本はどういった方向性に向けば、色々な方が一歩を踏み出せそうだとお考えですか?

高木:日本のGDPが国際的に上がるというのはなかなか難しい気がしていますが、去年のラグビーワルドカップみたいに、弱小ながらにチャレンジしていくプロセスは希望を与えるんじゃないかと思います。だから、僕は指標を見つける必要があるだろうなと考えています。その指標は今低いものでも、今後確実に伸びるものならいいと思うのですが、まだあまりそこについて考えられてない。僕が引っ掛かっているのは「エッセンシャルワーク」という言葉です。もちろん病院などに対してリスペクトあるというのは当然ですが、その外にあるものへのリスペクトがあまりないなと思っています。成熟国として、エッセンシャルワークの外にあるものをどう扱うかが大切になってくると思います。そこを成熟国としてこれからどういう風に扱うかが大切になってくると思います。少子高齢化が進む中で、僕はそういうものが指標や方向性のヒントになるんじゃないかなと。

ー山崎さんはいかがですか?日本は豊かな文化を持っていますが、時代とともに本当の意味で豊かな文化を作っていくことって簡単ではないですよね。

山崎:僕は地方創生の変化にとても期待しています。みんな豊かなことだと思っていることに対して、ギャップが大きければ大きいほど変化が起こる。地方創生に変化が起こる理由の1つ目が、日本ほど多様な文化と自然、伝統が紐づいている国がないことに気づいている人たちがいるなかで、実行されていないことです。そんななか、今回コロナで一部の自治体が物凄いリーダーシップ発揮しているんです。これによって面白い自治体があることが見えてきています。2つ目がいわゆる三密です。リモートワークが進めば、地域で働くことが普通になる可能性がある。3つ目が、七割経済になったら現実として都心の生活費が払えなくなることです。これらを考えてみれば、地方創生が進む可能性はすごく高くなる。うちのビジネス的には都市型の方がありがたいですが、本当この国の豊かさを思う時って、やっぱり地方創生だなと思います。


高木:僕も本当にそれは思っていて、富山県知事に提案をしてクラウドファンディングをやっています。東京じゃない未来を目指すっていうのが本当に現実的な選択肢になってきたのが凄い大きい。今までの地方創生は、いかに「ミニ東京」であるかのゲームをしてきた側面ありましたが、それが解放されるんじゃないかと。その形は移住かもしれないし、多拠点居住かもしれないですけど。今回行われたオンラインやクラウドファンディングで寄付や、LINEで情報発信という形は今までなかった。こういう流れは結構希望だなと思っていて、これをきっかけに地方が多様になっていけば、文化などの経済一辺倒ではない豊かさが生まれてくるだろうと思います。

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高木が富山出身の著名人らと協力して立ち上げた、富山県の医療従事者に寄付を募るクラウドファンディング。開始4日で第1目標金額である1,500万円を達成。クラウドファンディング外の直接寄付を含めると、現在までに7,500万円以上の寄付金が集まっているが、感染の第2波、第3波を想定し予定通り8/6まで寄付を募っている。

ニューノーマル時代、個人に求められる力とは?

ー先ほど企業に対してサバイバル能力が必要とおっしゃっていましたが、個人にはどのような力が必要になってくるとお考えですか?

山崎:3つあって、サバイバル能力とオリジナリティー、ネットワークですね。日本は企業に就職すると学ばないみたいな風潮があったと思いますが、価値観がどんどん変わっていく時代ですから、生きていく上で目標や生き方すら変わってしまうので、学び続けなきゃいけない。広い意味ではサバイバル能力が一つ目だと思います。二つ目のオリジナリティーは、自分は何者なのかというwhyの部分を持っているのは強いなと。オリジナリティーがあればhowは色々ある時代ですから、お金の集め方とか困ったときの助けてもらい方っていうの色々あるはずなんです。だからオリジナリティーっていうのもう一回見つめ直してほしいなと思います。三つ目がやっぱりネットワークですね。今、面白いことが起こっていて、教育現場や医療現場で今まで行われていなかった情報交換がものすごい行われている。みんなが助け合える時代なので、そういう風にして繋がってほしいなと思います。


高木:家族とか仲間とか地域のような、個人の時代の名の下にないがしろにされた部分が改めて重要になると思っています。無条件に背中を預け合える関係ってすごく大切だなと。経済はその等価交換的に、その一定の条件の中で関係構築できる優れものだとは思うんですけど、背中を預け合ったりすることは難しいはずです。僕はそれが見直されて、家族的なものをどう構築するかっていうのがすごい重要になると思っています。そういう意味で、家族経営の会社とかも強くなっていくんじゃないかな。いままで自由さの下に家族っていうものは後回しするみたいな側面が正直あったと思うし、個人の流れは止められないですけど、いかにそのなかで家族のような存在を持つか。疑似家族だったり、何かあった時に逃げられるふるさとみたいなものとか、そういうセーフティーネットが凄い大事になってきていると思います。

ー日本的でもあるような気がしますよね。最後にお2人にメッセージを頂戴したいと思います。

山崎:さっき僕は個人の力について触れましたが、加えてもう1個、この国が持っているリソースはお金です。世界最高の財産赤字国ではありますが、一方でこの国って企業でいうと430兆円の内部留保があって、個人金融資産でいうと1千兆円が預貯金なんです。今すぐ使えるお金が1千兆円もあるんです。それがたった1パーセント動くだけでも10兆円です。僕はこれを何とか動かしたい。僕らのわずかなお金が、本当たくさんの人たちの力になるんです。やっぱり助けていくことがネットワークに繋がるというか、いつか自分に帰ってくるんですよ。だから僕は、余力がある人には周りの人を助けてください、お金を使ってくださいと言っているんですね。そうすることが日本を守ることだと思っているし、皆さんの未来になることだと思うので。ぜひよろしくお願いします。


ーありがとうございます。では、高木さんお願いします。


高木:平成が「失われた30年」と言われている原因は、手本となる国家像を失ったことだと思っています。今までは、良くも悪くもアメリカみたいな存在がいて、それを取り入れてやってきたのが日本だった。そうでなくなった現在にはビジョンが必要なはずなのに、今までそれがありませんでした。別に、僕は「経済成長」のようなビジョンには期待していないし、むしろ掲げるビジョンは政治的というより個人に寄り沿った多様なものになっていくと思います。例えば、小さい個人飲食店がたくさんあることによって、これだけ競争力のある環境が生まれているように、小さいビジョンがたくさん生まれていくことが豊かさに繋がっていくのだと考えています。だから、僕は想い寄りでも課題解決寄りでもいいので、リーダーの方にはビジョンを発信してほしいなと思います。反対に、メンバーの方であればリーダーにビジョン求めてほしい。根拠はありますかと言って詰めると苦しくなっちゃうので、ほどほどにね。それで納得できなければ離れてもいいし、何か良さそうと思えれば乗っかっていってほしい。別にそこにはまだ実現性がないものも多分にあると思うんですけど、試行錯誤しながら、色々生まれていく時に、日本は面白くなっていくと思っています。

(文責:中尾花

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