私たちはきっと、偏見や慣習を脱ぎ捨てて「普通」を変えられる。【REING代表 大谷明日香インタビュー】
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私たちはきっと、偏見や慣習を脱ぎ捨てて「普通」を変えられる。【REING代表 大谷明日香インタビュー】

NEWPEACE Inc.

私たちNEWPEACEは「20世紀的システムから人々を解放し、多様性が爆発する社会をつくる。」という自社ビジョンに基づき、社会課題の解決に挑む企業や自治体とタッグを組んで社会に変化を促そうと行動しています。

時にはパートナーとなる企業や自治体との協業だけでなく、自社主導で活動することもあり、現在では9つのカンパニー事業がそれぞれコミュニティを形成しています。なかでも活躍がめざましいのが、ジェンダーに焦点を当てたクリエイティブスタジオ「REING(リング)」です。

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REINGは今年2月、「男女」というラベルを外すジェンダーニュートラルなアンダーウェアを発売し、活動を本格的にスタートさせました。

多様な社会のあり方を目指す企業と共に、ブランドアイデンティティの設計やコンテンツの制作事業を行いつつ、多彩な顔ぶれが揃うコミュニティメンバーと月に8回を超えるイベントを自社スタジオやオンラインで開催。

10月には、世の中の当たり前に“違和感"を問いかける雑誌「IWAKAN」を刊行し、創刊に合わせて展示イベントも実施。自社サイトでは2日で初版完売と、大きな反響を呼びました。

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コロナ禍の影響をもろともせず精力的に活動を続けるREINGは、どのような想いやビジョンを持って前進しているのでしょうか。REINGの代表であり、NEWPEACEの執行役員も務める大谷明日香に話を聞きました。

Creative Studio REING代表 大谷明日香
上智大学、ロンドンへの短期留学を経てベンチャーの広告代理店に入社。プランナー兼プロデューサーとして、グローバル展開する日本ブランドのコミュニケーション戦略設計を複数担当。YOUNG SPIKES2016・日本代表選考にてBRONZE受賞時、課題がジェンダー不平等だったことを機に「社会課題にこそクリエイティブの力が必要だ」と感じ、NEWPEACE Inc.に参画。現在は、Creative Studio REINGを立ち上げ代表を務める。

「〜ING(現在進行形)」を、「RE」問い直す。

ーー大谷さんがREINGの代表としてブランドを立ち上げた経緯を教えてください。

大谷:2017年に「LGBTQ+向けの指輪を作りたい」という相談がNEWPEACEにきたところから始まったんです。ただ、「LGBTQ+向けの指輪」とは一体どういう区別なのだろう? と思うところがあって。そもそも何が課題なのかを考えてみると、まだ日本の広告やブライダル産業が、異性愛のみを前提に成り立っていることに原因があるんです。

今、「カップル」と検索しても、9割が異性愛のビジュアルで出てくるし、企業の広告で同性カップルが起用されることもほとんどありません。でも本当は、生き方にはもっといろんな関係性の紡ぎ方があるはずで、恋愛や結婚といったかたちだけでなく、ペットと生きていく人だって、ひとりで生きていく人だっている。人生において誰とどう生きるかは人それぞれなのだから、そういった、あらゆるパートナーシップのあり方を祝福するプロジェクトとして「REING」が始まり、「Every relationship is beautiful.(私たちが紡ぐ、すべての関係性は美しい)」というフィロソフィーが生まれました。

そもそも私自身、小さな頃から「女の子らしく」と言われることが多かったし、NEWPEACEに入ったのも、自分や周りの人に無意識に貼られてしまうジェンダーに関するラベルイメージみたいなものを、クリエイティブの力で変えていきたいという想いがあってのことでした。

活動がスタートしてしばらくは、企業として売り上げを立てることと目指したい未来のあり方にギャップがあって、それについて悩みながら手を動かす時期もありましたし、ジェンダーやセクシュアリティといったイシューに対して、そして現在のREINGのビジョンである「多様な個のあり方が祝福される世界」を考えていくときに、どのようにアプローチしていけばいいのかをずっと考えていました。今のメンバーには当時から相談していて、すごく救われ、REINGとして再スタートを切ることを決めました。

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REINGが販売しているジェンダーニュートラルなアンダーウェア。「ブラレット」「ボクサーパンツ」「トランクス」の3種類で、ブラレットはアンダーサイズ、ボクサーパンツとトランクスはウエストサイズに応じて、4種類のサイズ展開と5つのカラーバリエションがあります。

ーー今年2月にジェンダーニュートラルなアンダーウェアの販売を開始してからは、より精力的に活動が顕在化するようになりました。どのような変化があったのでしょうか?

大谷:ジェンダーニュートラルなアンダーウェアをリリースしたときはリアクションも多くはなかったのですが、その数ヶ月後、VOGUEの記者さんがREINGの活動を真摯に取り上げてくださって、大きな反響がありました。

そこから徐々に私たちの活動やフィロソフィーに共感してくれる方が増えて、REINGに関わってくれる仲間も、少しずつ増えていきました。

今はコアメンバーが5人なんですけど、コミュニティがどんどん大きくなっているのは、このメンバーのおかげです。企業との案件もあるなかで、毎週もしくは隔週、必ずREINGコミュニティでのイベントを開催しているんです。「個々のリアルな声に価値がある」と信じているから、小さくても、その声をどう企業や社会に繋げていくかが私たちのミッション。だから、多いときには月に10本、イベントを実施しています。

イベントへの参加者は少ないときも勿論あります。それでも継続して、ずっとやり続けるって決めたから、こうして少しずつ訪れる人が増えてきている。ジェンダーやセクシュアリティに関心を持った人が「あ、ここは安心して話せる場所だ」「ここは思いきり考えたり議論したりしていい場所だ」と思って訪れてくれて、少しずつREINGを自分たちの居場所にしてくれたから、仲間も紹介してくれるメディアも、応援してくれる企業も増えてきたんだと思っています。これは絶対に一人じゃできなかったことです。スピードと、やりたいことのアイデアが出てくる度合が、これまでとは圧倒的に違いました。

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東京・恵比寿にあるREINGのスタジオ「REING Living」。多くのイベントはこの場所を使って開催されています。ジェンダーニュートラルなアンダーウェアの試着スペースも兼ねています。


日常にそれぞれが抱く違和感を蔑ろにせず、持ち寄れるような場所を作る

ーーイベントは具体的にどのような内容なのでしょうか。

大谷:ジェンダーやセクシュアリティといった大きなテーマはありますが、それらに「美容」や「映画」といった別のテーマを組み合わせたものもあります。たとえば毎週日曜に開催されている「Purple Screen」は、映画作品の中でジェンダーやセクシュアリティはどのように描かれてきたのかをみんなで意見交換したり、議論したりする、ジェンダームービークラブです。

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「Purple Screen」のテーマ発表画面。Instagramの@reing.living アカウントから毎週発表されます。

大谷:「Purple Screen」はREINGのコアメンバーであるエドと、その友達のジェレミーが映画好きであることから始まりました。「ジェンダーやセクシュアリティについて映画の視点で語れる場所をつくりたい」というアイデアから広がって、実現した企画です。

月に二度開催されているビューティ・イベント「mirrors」も同様で、REINGコミュニティにいつも出入りしてくれるメンバーから「性別問わず楽しめるビューティ・イベントをやりたいんだけど、REINGとだったら一緒にやれるかな」と話があって始まった企画でした。

ジェンダーって大きな概念で話すと難しそうに感じる人もいるかもしれない。だけど、美容や映画など、日常的に触れる話題でもジェンダーに関連する要素はたくさんあります。たとえば映画の中での女性のあり方や、同性愛の描き方、美への向き合い方。これらにも、ジェンダーは大きく関わっているんです。だからこそ、REINGでは日常にそれぞれが抱く違和感を蔑ろにせず、持ち寄れるような場所を作りたかった。

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大谷:ネットで情報を得ることはとても大事なことで、役立つことが沢山あります。その一方で、一人で消化できないこともあると思うので、自分と違う考えや価値観を持つ人、同じような悩みを抱える人が視点を交わして、自分らしさを紡ぐきっかけになるような場にしたくて、一方通行ではない対話型のイベントという手段を選んでいます。

こうやって話していて実感しますが、メンバーからどんどんアイデアが出るので、REINGコミュニティにおいて私から発案したもの、ほとんどないですね……(笑)。「REINGを通じて何かを伝えていきたい、こういう人たちにこういうものを届けたい」といった意志や願いを私と同じレベルで持っているメンバーが集まってきているから、その人たちがそれぞれのフィールドでどういった活動ができるのか、環境を作ることが私の今の役割だと思っています。

ただ、みんながみんな、最初からジェンダーやセクシュアリティについて興味関心が高いわけではありません。REINGのコミュニティも、みんなで学んで、みんなで「これどう思う?」と議論することを大事にしています。私自身も専門家ではない。みんながそれぞれのフィールドで学んだり、違和感を持ったりしたものを持ち寄って、「これってどうなんだっけ?」って話し合ったり、時には外部の専門家の方たちに意見をもらったりしながら、今日までやってきています。

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ジェンダーやセクシュアリティについて語る「REING NIGHT」の様子。REINGのイベントでのNGワードは「ごめんなさい」。「基本的にここでダメなことは一切ないから、謝らなくていい。差別や侮辱を意図した発言は言うまでもなく絶対NGですけど、それ以外はなんでもOKっていうルールを設けたら、みんなどんどん話してくれるようになったんです」(大谷)


特別なものではなく、当たり前のものになれるように

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ーーREING独自のコミュニティが発展していくなかで、他の企業やブランドとのコラボレーションなどにも変化はありましたか?

大谷:他の企業やブランドとコラボレーションする際のシナジーが生まれやすくなっていると感じることもあります。たとえば、フェムテックのブランドを扱われているfermataさんと、夏にREING Livingでコミュニティ型ストアを実施したのですが、100名近くの方が足を運んでくれました。

大谷:「心も体も心地いい、セクシャルウェルネス」をテーマにさまざまなプロダクトを紹介し、プレジャーギャップに関する展示なども行ったのですが、性別問わずたくさんの方が来られて、「デリケートな話題なのでこれまで話しづらかったけど、すごくオープンに知れてうれしい」とか「なかなか友達にも話せないことだったけど、ちょっと安心した」といった声を聞けました。思想がプロダクトに落ちていることで、話しやすくなることもあるんだな、と。

また、イベントのお客さんの中には、「社内でジェンダーについての取り組みを何かやりたいのだけど仲間がいない。どうしたらいいか」といった相談したくて、来場される方も最近は多いです。こういったイシューについては、プライベートでも職場でも、思ったことを話しづらい。いいアイデアだったとしても、それを実現できる仲間がいないし、どう周囲を巻き込んでいけばいいかわからない。そういったときに、周りに協力してもらえるような武器になれるよう、最近はデータ作成や調査に力を入れているので、資料や知見を共有したりする場をつくろうとしています。REINGに来れば何かできそう! と思ってもらえるようなクリエイティブスタジオでありたいと思っています。

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ーー最後に、REINGが今描いている未来を教えてください。

メンバーとも最近話しているのですが、私たちがつくるクリエイティブやプロダクトが、普通に、当たり前に人の生活に馴染んできたとしたら、そのときは私たちの描く世界が受け入れられて、社会が変わり始めたってことだよね、と今は考えています。

たとえば、今私たちが販売しているアンダーウェアもそもそも需要なんてないと思われていたし、企業のクリエイティブ制作においても、表ではインクルージョンやダイバーシティを謳いながら、実際はこちらが多様なジェンダーの方のキャスティングを提案しても通らない、ということが多々ありました。あるメディアの方に「多様なジェンダーの人がいる」と伝えても「日本にはそんなにいないと思っているから積極的には扱わないし、意識が高い人しか見ないと思う」と言われたこともあります。

でも、今、私たちの周囲でそれらが少しずつ変わり始めている。企業やブランドの大きさに関係なく、既存のやり方や、これまで合言葉のように使われていた「普通は」といった慣習を疑って、脱却しようと挑戦する人たちが増えてきています。

だからまずは、つくり手の視点をアップデートしながらいろんな方達とコラボレーションして、モノやサービス、クリエイティブの生み出し方を変えていきたい。マイノリティをマジョリティに変えるために、ということではなく、いろいろな「普通」を持つ人たちがちゃんと世の中に存在しているという前提で、お互いを受け入れ合える世界を目指していけたらいいなと思います。

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コミュニティを大きく拡大しながら、自社開発のプロダクトや企業とのコラボレーションを進めていくREING。誰かにとっての普通が当たり前になるその日まで、その活動は続いていきます。

REINGと何かしたい、と思った方がいらっしゃいましたら、ぜひコミュニティを覗いてみてください!

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NEWPEACE Inc.
NEWPEACEは、従来の価値観に囚われることなくそれぞれのビジョンを信じ、未来への意志を掲げ、世の中を巻き込み、社会を"常識"から解放する世界を目指す企画・プロデュース集団です。幅広い領域の経営者や社会的なリーダーと組み、ビジョンづくり・ソーシャルアクションを仕掛けています。