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Withコロナ時代、企業が踏むべきステップを6つに整理してみた。

「健常状態がわからない」Withコロナ時代

コロナが騒がれ始めた1月、1回も電車に乗らない4月になるなんて思っていなかった。でも今、それ以上に想定外な事象が起きていると感じている。

それは、全世界的に「健常状態がわからなくなった」ことだ。

9年前、日本を悲しみと混乱に陥れた東日本大震災も、健常状態は明確だった。震災によって人々が受けた影響はすべて回復すべき対象であり、被災地が復興して「元の生活の状態に戻ること」が理想だった。今回は、すべて戻すべきなのだろうか?わたしはコロナウイルスの影響が終息した時、100%同じ生活に戻ることが理想なのか、と問われると口籠ってしまう。

すべてがオンライン化した働き方。
自炊やデリバリーといった中食生活。
オンラインの楽しみ方が拡充されたエンタメ。

大前提として。例えば、どれだけ動画配信が発達したとしても、ライブハウスで感じる音圧や一体感といった五感をフルに使う高揚感が満たされるわけではなく、今に満足しているわけではない。

でも、自分のスタイルに合わせて出社する日を選べたら?ライブにいけない日は動画に投げ銭ができたら?なかなか行けなかったお店のごはんがデリバリーで頼めたら?今は選択肢がないから息苦しいものの、この強制的に変化を余儀なくされた生活で、わたしたちは「今までにない選択肢もありだな」ということに気づかされているように感じる。

健常状態がわからなくなったWithコロナ時代。安宅和人さんのブログに則ると、企業が生き抜くためには下記の止血フェーズが必要となるが、今回は治療〜再構築フェーズにおいて、少しでも明るい未来が訪れることを願って、必要なステップを考えてみた。

安宅さんブログ

(図1)

Withコロナ時代到来に必要な6つのステップ

①提供価値に自覚的になること
②ビジョンを設定すること
③UXを設計し、バリュージャーニーを描くこと
④現状とのGAPを見極めること
⑤ビジョン達成の道筋をつくること
⑥打ち手を設計、実行すること

「オフラインからオンラインへ」は、ただの道具。当たり前がなくなった今、安宅さんも再定義が必要と述べているとおり、上段から見直す①②のステップが何よりも大切だと思う。

止血・治療過程がおわったらもうおそらく二度ともとのように高密度で仕事をすることはなくなるだろうということを既に感じている人もいるだろう。まさにそのとおりだ。この新しい我々の世界ではハコというものの役割も再定義されないといけない。(安宅和人「そろそろ全体を見た話が聞きたい2」より)

提供価値を自覚し、北極星としてビジョンを新たに打ち立ててから、UXを設計し、現状とのGAPからCX(コーポレート・トランスフォーメーション)の道筋をたて、そのツールとしてDXで変革を起こすこと。突然のオンライン化の波に全員が戸惑う今こそ、向き合うことに意味があるはずだ。

① 提供価値に自覚的になること

提供価値は、端的にいうなら「選ばれる理由」。結論を急ぐあまり、まず手法を変えたくなるのはあるあるだと実体験でも思う。でも、今何で選ばれているのか?という土台を安定させないと、判断軸がないツギハギだらけの変革に陥ってしまう。

例えば、コミュニティキッチン「6curry」では、Withコロナ時代の到来を受け、日々議論が進んでいる。

6curryはキッチンでカレーを提供しているが、カレーを媒介にした「場」で起こるランダムな出会いや会話が提供価値。この点を全員が共通理解で持っているから、ただECでカレーキットだけを販売しよう、という手法にはならない。まず取り組んだのはZoom店の開店。今後は例えば、カレーのキットをオンラインで販売して、それをツールとしながら、オンライン上にいかに「場」をつくるか?など、活発に日々話し合いが進んでいる。このプロセスを前を向いて踏めることが、提供価値を理解している強みだと思う。

もっと身近でいくと、わたしの住む街の飲食店はテイクアウト戦国時代だが「そのメニューがウリだったっけ?」というUber Eats化ではなくて、その店の提供価値(アットホームな雰囲気と色とりどりのおつまみ)を理解したうえで「15種盛りのおばんざい」を想いも一緒にSNSで発信し販売しているお店は日々完売。お店の雰囲気を思わせるぎゅうぎゅうな盛り付けもとても素敵で、テイクアウトというソリューションが同じでも、提供価値を理解していると愛されるんだなあと感じている。

②ビジョンを設定すること

提供価値の自覚化が土台だとすると、ビジョンはゴール。健常状態がわからない今は、自分たちにとっての健常状態=「どういう未来でありたいか」を導き出すしかない。また、世の中が圧倒的に不安定のなか、土台とゴールがはっきりしている安心感はインナーモチベーションにも大きく影響してくる。

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(図2)

健常状態がわかっている時代は、従来のコンサル的なギャップフィル型のアプローチでおおよその課題は解決されていた。今のサービスをまっすぐ改善した先に未来があったから。しかし、シン・ニホンでも言及されていたとおり、今は逆におおよその課題はビジョン設定型のアプローチが必要と感じている。「ありたい未来」は意思でしかない。私を含めて多くの人にとって今までと違う頭の使い方で、混乱するけれど、対話を繰り返しながら乗り越えるしかないのだと思う。今は、どんなプレイヤーでも強いビジョンがあれば未来の当たり前を創る可能性が高まっている潮目のタイミングでもある。

③UXを設計し、バリュージャーニーを描くこと
④現状とのGAPを見極めること
⑤ビジョン達成の道筋をつくること
⑥打ち手を設計、実行すること

いわゆるOMO(Online Merges with Offline)の概念が介在する部分。顧客へ提供したい体験に必要なバリュージャーニーを描く際に欠かせない。

バリュージャーニー

(図3)

落合陽一氏が「全てがオンラインに移行できるわけでもないし,低解像度のVRゴーグルや未来的なインターフェースが状況を打破するとも思えない」と語るように、すべてをオンラインに移行するだけで満たされるわけではない。ありたい未来にむけて、顧客に愛し続けられる接点の設計をゼロベースで考えることが求められている。(アフターデジタルに秀逸な事例がたくさん掲載されています)

そして、ジャーニー達成のためのツール導入や事業変更を検討することがDX。このフェーズ、システム開発や各接点の連携、従業員のミッション変更など、判断も実装も非常に重たい。実体験でもあるが「数千万円かけてツールを開発したが使わなかった」などはよく聞く。でもその失敗は、①〜⑤までの積み上げによって回避できるのではないかと思う。(私個人の過去の失敗も、上段を疎かにしたことだと痛感している)

①〜⑤を踏まえてDXまでを実現している事例としては「鍵を渡してからが仕事」と話す中国のEVメーカーNIOや、Appleを超えるブランドといわれるアメリカのエアロバイクブランドPelotonが代表例だと思う。どちらもありたい未来を明確に持ち、オフラインもオンラインも関係なく「ありたい未来に共感する顧客が自分勝手に使えるように」無駄なく設計されている。

例えばPeloton。「スピンバイクスタジオの一体感あるエキサイティングな体験を、自宅からでも体験できるようにする」をゴールに掲げている。従来、エクササイズバイクを購入するといつでもワークアウトできる代わりに、継続モチベーションが生まれづらい。スタジオレッスンに通うとその負は解消できるが、逆に時間が限定されてしまう。ユーザーにとっては「一体感あるエキサイティングな体験をいつでも体験できる」が理想なのに、企業都合でつくられたUXのために叶えられていない。ユーザーが自分勝手に使えるよう、理想の価値提供をするためにUXを考え抜かれたのがPelotonだ。

Pelotonは、家庭内で使うエクササイズバイクを$2,295で販売。このバイクは、オンラインでエクササイズを受講できるサブスクリプションサービス($39/月)とセットで提供されています。バイクは家庭で1人で使うものですが、カリスマ化したインストラクターが実施するライブクラスには全米からアクセスがあり、数千人が同時に受講します。他の参加者とリアルタイムで順位を競い合ったり、ペースを上げ下げすることで、”Peloton”(マラソン・自転車競技などの走者の一団、集団、グループの意味)を疑似体験できるようになっています。(「Appleを超えるブランド Peloton / 現代の聖職者はエアロバイクに乗る」より)

バリュージャーニーが考え抜かれていると思うポイントは「離脱するすべての可能性にユーザー目線の打ち手があること」だ。上記オンラインクラスはもちろん、Pelotonは自宅へのバイク配送からセットアップ、その場でコンテンツの楽しみ方のレクチャーまで行ってくれる。「勢いで買ったものの組み立てや機械の理解が面倒」という負を完全にカバーしている。リアル店舗も構えているうえ、1人でワークアウトしたい気分のときにも寄り添い、自社でテンションのあがる音楽まで提供している。オンラインかオフラインか?ではなく「Pelotonさえあれば、自分勝手に、エキサイティングなワークアウトができる」というゴールを叶えるための秀逸な設計と実装だと思う。とりあえずリアル店舗に集客できればなんとなかる、という時代が突然終わりつつある今。ゴールを叶えるためのジャーニーをアップデートしないといけないことは明白で、世界を変えるのは技術ではなくウイルスだったんだなあと思わされた。

最後に。

「20世紀的システムから人々を解放する」をビジョンに掲げ、ビジョン開発と企画実現をコア価値とするNEWPEACE。今こそ前を向くべきだと思ったと同時に、DXを推進するパワー(ツール理解や導入実装など)が弱いと気づけたので、仲間になってくれるパートナーを、絶賛募集中です!DXに詳しいよって会社の方、気軽にお声がけいただけると嬉しいです。

文責:渋谷麻里(NEWPEACE.Inc)

図1:安宅和人「そろそろ全体を見た話が聞きたい2」より抜粋
図2:安宅和人「知性の核心は知覚にある(Perception represents intelligence)」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2017/5)より抜粋)
図3:ビービットブログ「一兆スマイル新聞」より抜粋https://trillionsmiles.com/glossary/value-journey/




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