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世界中で広がる、新型コロナウイルスに対する企業アクション。応援されるかどうかを分ける、3つのポイント。

現在進行形のコロナウィルスパンデミック。その禍々しさは無症状ゆえに把握しにくい拡散状況と、人がどのように危機感を持つべきか混乱してしまう不明瞭で中途半端な致死率。

日本はまだ「緊急事態宣言」を出すか出さないかの瀬戸際で立ち往生しているが、世界を見渡すとーー学校は閉鎖され、集会は禁止されて、外出は罰され、ソーシャルディスタンスを強いられ、飲食店やバーも閉めざるを得なくなっている。ニューヨーク・タイムズの記事によれば、これは1666年ロンドンを襲ったペストさえも彷彿させる状況である。

オリンピックは延期、大型イベントももれなく自粛せざるをえない状況で、経済活動は全般的に鈍くなり、企業活動のニュースは一気に届きにくくなっている

その中で、世界のメディアは何に関心を持ち、企業はどのような姿勢で、どのようなメッセージを発信しているのかの情報を集めてみた。

コロナウィルス時代の中で、メディアはどんなことに関心を寄せているのか?

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2019年年末に中国湖北省武漢市のニュースを目にしてから、すでに3ヶ月が経っている。この3ヶ月の中で、私たちが毎日目にするメディアの報道はコロナウィルス一色。

アメリカのPR会社の分析データによれば、2020年1月1日から3月20日の間、全世界におけるコロナウィルス関連の記事は約790万件。メディアのコロナウィルスへの関心度はドナルド・トランプよりも上回った。

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全世界において、この3ヶ月で最もメディアに取り上げられたキーワードは「死亡人数」。その次は「検査」。

医療と政策において、「マスク」「感染人数」「ワクチン」「隔離」「封鎖」が最も良く言及され、ビジネスにおいては「経済への影響」「レストラン・バー」「在宅勤務」「飛行機の欠航」「失業」が最もよく報道されるトピックとなった。その中で、「住宅ローン」「税金」も頻繁に取り上げられるようになっている。

3月14日にワシントンポストで公開された記事「アウトブレイクはなぜ急速に拡大し、どのように『曲線を平らにする』ことができるのか」は、ソーシャルメディアで600万回以上シェアされ、ワシントンポスト自身によって日本語も含めて世界13ヶ国語に翻訳され、世界で最もアクセスの多い記事となった。

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最もメディアに言及された企業は、TwitterとFacebook。ソーシャル・ディスタンスが求められている中、オンラインでのコミュニケーションツールが最も重要になってくる。工場の閉鎖で、ホンダやトヨタなどの自動車メーカーも高頻度で報道される。飛行機の欠航で、航空会社もよく取り上げられている。医療設備やマスクの緊急製造で、ジェネラル・モーターズとテスラも上位にランクインしている。ジャック・マーは自らの寄付のニュースで、アリババの露出度を上げている。

パンデミック危機の中で、世界中の企業とブランドは何を発信しているのか?

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感染するリスクを低減する方策として叫ばれている「ソーシャル・ディスタンス」の文脈を汲み取り、ロゴデザインに工夫してメッセージを伝えようとした企業が複数いた。マクドナルドは「M」を2つに分断し、アウディは4つの輪を引き離し、フォルクスワーゲンは「V」と「W」を切り分け、コカコーラも文字同士の隙間を大きく空けた特別バージョンのロゴを使用するようになった。

しかし、世間からの評価は賛否両論だった。アメリカのブランディング戦略企業シーゲルゲールのダグラス・セラーズ氏は、ソーシャルディスタンスの周知を図ろうとする情熱や創造性は評価できるとしつつも、世界の現状はジョークでは済まされない中で、このようなロゴ作成で状況の深刻さが伝わらなくなる危険性もあると指摘した。

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一方で、 ドイツ・ベルギー・フランス・インド・トルコなど、各国の大手通信会社は、本来サービス名を表示する場所に、「STAY HOME」の文字に切り替えることで、自宅隔離の緊急性を伝えている。

「ルイ・ヴィトン」などの高級ブランドで知られるLVMHは、香水工場を活用して消毒ジェルをノーブランドで生産し、病院などに無料提供を始めた

ディオール、ラルフ・ローレン、ギャップも、医療用のマスクや防護服を生産すると発表した。特にディオールは、自社工場を稼働させ、一貫してシンプルでエレガントなデザインで、SNS上で話題を呼んだ

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前代未聞の苦境に陥った航空会社は、どのようなことをしているのか?

ユーザーに取り上げられた一枚の写真で、スカイマークは人々の共感を呼び起こした。「大変な時ですが乗ってくれてありがとう」と書かれた横断幕を首からぶら下げ、ヘルメットにつなぎ姿の手荷物搬入搬出などの担当者が、航空機に向かって手を振っている様子がSNS上で話題になり、3日間で50万以上のいいねを獲得した。

ベトナム航空は、旅客需要が急減する中で日本・ベトナム両国ともに入国制限をかけられ、4月30日まで日本−ベトナム間は全面運休の予定となっていりながらも、公式ツイッターアカウントの投稿で、多くの応援の声をもらえた。アオザイを着たCAさんが飛行機に優しく口付ける写真に、「出番は来るから、もう少し待っててね」との文字を添え、自身が置かれている状況に悲観せず、愛と希望溢れる表現でメッセージを発信している。そのツイートは、瞬く間に6万いいねを獲得した。

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応援される企業と、応援されない企業は、何が違うのか?

このように世界中の企業のアクションを見ていくと、応援される企業と、応援されない企業は、何が違うのか?大きく3つのポイントで、人々を味方にできるかどうかが決まる。

1. 目線が、世の中の人々と同じであるかどうか
2. 素直な気持ちを、飾ることなく誠実に伝えているかどうか
3. 自身のリソースで、具体的なアクションを最大限に試みたかどうか

有事の中で、すべての人が経験している不安と恐怖は同じだ。感情の共有、誠実な姿勢は、驚くほど力を持っている。

そして、最も大事なことは、アクションをすることだ。遊び心を乗せたクリエイティブアイディアやユーモアは、選択肢のない不安と恐怖に立ち向かうには脆すぎる。必要なのは、少しでも希望と未来が見えるアクション。

そのアクションは、拙くてもいい。世界的なパンデミック危機を目の前にして、一個人はおろか、企業やブランドも、できることは本当に限られている。しかし、危機が訪れる前の世界と同じように、企業もブランドも、個々の持ち場で最大限にパフォーマンスすることで、世の中を良くしている。

世界中の企業を見てみると、概ね4つのベクトルでアクションをしている。

(1) 自社のリソースで貢献

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電気自動車メーカーTeslaのCEOイーロン・マスクは3月下旬、操業休止中だったニューヨークのソーラーパネル工場を転用して人工呼吸器を急遽製造し寄付するとし、4月1日に世界の病院に向けて無償で配布することを発表した。

ビデオ会議サービス「Zoom」は、3月1日の時点で、遠隔授業のためすべての学校へサービスを無料提供すると発表した。

さらに、前述の通信会社らの「STAY HOME」への表示切り替え、ラグジュアリーブランドが自社工場を稼働させて医療用品を生産なども、自社のリソースを活用した自身の持ち場での支援となる。

(2) 自社と業界のための経済ショック対策

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Spotifyは、COVID-19 Music Relief Projectを立ち上げ、アーティストへの経済的支援プログラムを始めた。「ストリーミングはアーティストにとってファンとつながる手段であり続ける一方で、アーティストが売上をあげる他の手段の多くはコロナ危機により棚上げされている」とし、プロジェクトウェブサイトを介して行われるユーザーの寄付と、Spotifyからの寄付を合わせて、音楽業界支援機関に総額 1,000万ドルの寄付を行うとしている。

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、予期せぬ閉園に追い込まれている中で、会長であるボブ・アイガー氏が今後1年間給料を受け取らない方針を固めたと発表した。さらに、CEOであるボブ・チャペック氏は給与が50%カット、バイスプレジデントレベルの上級幹部は給料が20%減、シニア・バイスプレジデントは25%減、エグゼクティブ・バイスプレジデント以上の幹部は30%減と発表。

(3) 関連事象の自粛

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イギリス政府は2月下旬から手指の衛生管理の重要性を強調し始め、イギリスにおいてケンタッキーは食事の後に指を舐める象徴的なシーンの放送を一時自粛することにした。

さらに必需品の値上げへの対策として、グーグルとフェイスブックは、医療用マスクの広告を一律禁止した。アマゾンは商品50万点を削除し、eBayは医療用マスクや消毒ジェル、除菌シートなどの出品を禁じると発表した。

(4) 政府との協業

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アメリカでは、トランプ大統領が、民間企業に重要物資の優先的な生産を要求できる「国防生産法」に基づき、ジェネラルモーターズに対し、人工呼吸器の製造を命じた。日本では、LINEが厚生労働省に協力し、自身のユーザー8,300万人を対象に全国調査の実施を始めた。

自らの持ち場で、一人でも多くの人に希望を

NEWPEACEでも、withコロナ時代にせよ、afterコロナ時代にせよ、どのような時代が来るのか、私たちに何ができるのかを、日々模索している。この話はまた次回できればと思うが、年始より考案している『サードコミュニティ』とその駆動力となる『New Private Social Platform』について、みんなの居場所確保だけは、横行するウィルスの中でもなんとしても立ち向かわなければいけない。そこが、NEWPEACEの持ち場なのではないかと強く思う。

例えば、「集まる」「混ぜる」という機能を持つNEWPEACEの事業「6curry」は、コロナウィルス感染拡大によってリアルの場における実施は会員とメンバーにとってリスクが大きいと判断した。しかし、私たちの価値は「どんな状況でも、みんなが安心して、MIXできる居場所を提供し続けること」だからこそ、お店の全面オンライン化(Zoom店)をやってみようと決意した。

この試みが、私たちの会員とメンバーだけではなく、感染症の流行による大きな打撃を受けるすべての飲食店や、デジタルトランスフォメーションを実行しようとするすべての企業やブランドにとって、希望のある可能性を提示できればと。そして、社会の一員として、自らの持ち場で、一人でも多くの人に希望を与えられたら。


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文 / 楊 芊蔚

※出典リンク
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