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「シェイクスピア」と「サバイバル」

生涯でパンデミックを3回経験しているシェイクスピア。ロックダウンされた英首都ロンドンでSTAY HOMEをしながら書き上げた珠玉の名作。疫病さえもチャンスに変えて世界最高の劇作家に登りつめた男の秘訣とは。


すべてのドラマはシェイクスピアから始まった

「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「リア王」「真夏の夜の夢」。「オセロー」「ヴェニスの商人」…

誰もが一度は聞いたことがある有名な戯曲。これらの作品は17世紀にイギリスで活躍した劇作家ウィリアム・シェイクスピアによって書かれたものです。

シェイクスピアは世界最高のベストセラー作家です。彼の作品は今なお世界中のどこかで上演されています。作品は悲劇、コメディ、恋愛、史劇、裁判ものなど実に幅広いものです。

そして特筆すべきは「すべての演劇的要素はシェイクスピアが描き切った」と言われているところ。私たちが日頃目にする演劇、映画、テレビドラマは「シェイクスピアの作品がずっと繰り返されている」とまで言われているのですから、彼のモンスターぶりが偲ばれます。


人生で繰り返されたパンデミック

シェイクスピアは生涯で3回、パンデミックに遭遇しています。はじめは生後3ヶ月のころ。この時にロンドンを襲ったペストによる抗体ができたため、その後のパンデミックを乗り越えることができたのではないかと言われています。

1593年に欧州で大流行したペストによるパンデミックの間にシェイクスピアは「ロミオとジュリエット」を書き上げました。興味深いのは、ロミオの元にジュリエットからの手紙が届かなかったために二人は非業の死を遂げたというくだり。実は手紙の行き違いはパンデミックのせいだったという説が根強く残っているのです。そしてこの頃からシェイクスピアはロンドンで華々しい活躍をみせるようになります。

1606年、ロンドンは空前の演劇ブームに沸いていました。ところがその2年前に大流行していたペストによるパンデミックが急激にぶり返したため劇場は閉鎖。作家や役者が次々と命を落としていく中で、シェイクスピアは家にこもって「リア王」を書き上げます。1603年から1612年ごろまでパンデミックは繰り返し襲ってきます。その期間にシェイクスピアは後世に残る名作を次々と生み出し、作家としての絶頂期を過ごしました。

「リア王」「アントニーとクレオパトラ」「マクベス」のセリフの中には 「疫病」 というセリフが散見され、疫病がもたらす生死観が作品に色濃くあらわれています。このように、シェイクスピアはパンデミックを足がかりにして世界最高の名声をほしいままにするようになったとも考えられています。


空白の7年間

シェイクスピアの生涯は謎に満ちています。火災による記録の焼失など不運も重なりました。今でも研究家たちが躍起になって探っているのは「空白の7年間」についてです。

シェイクスピアは1585年までは故郷のストラトフォードでごく普通の生活を送っていたことがわかっています。ところが1592年にはロンドンで劇作家として活動している。その間の記録は一切残っていません。数々の仮説が立てられていますが。確固たる証拠は出てきていません。

劇作家はある日突然なれるものではないので、7年の間には何がしかの修行をしていたはず。これほど幅広いジャンルに渡って名作を生み出せるようになる「修行」とは一体どんなものだったのでしょうか。


作品のメッセージで最も大切なもの

あのスティーブン・スピルバーグ監督でさえ、「自分が100パーセント納得できる作品は一生に一つ生み出せるかどうか」と言っています。

ところがシェイクスピアは400年以上も上演されるような名作を37も生み出しています。作家になるまでの空白の7年間にどんな研鑽を積んできたのか。研究家たちが躍起になるのも無理からぬことです。

作品が長きに渡って愛される時、その作品は永遠性をたたえているということができます。永遠性とつながる修行とはどんなものなのか。きっと「瞑想」も取り入れたことでしょう。そして何よりも、彼の戯曲には宇宙の不変の法則である形而上学を彷彿とさせるセリフが随所に散りばめられていることに気づかされます。

形而上学は目に見えない世界についての学びです。私たちが何者であるのか、どこからやって来たのか、そしてどこへ向かっていくのか。この世に生まれてきた意味を解き明かしてくれるカギを握るものです。


シェイクスピアの戯曲の中から気になるセリフをいくつかあげてみましょう。

「人間、時にとってはおのが運命をも支配する。 罪は星にあるのではない、われわれ自身にあるのだ」  【ジュリアス・シーザー 福田恆存訳(新潮文庫)】
「無知こそは神の呪い、知識こそは天にいたる翼である」 【ヘンリー六世二部  小田島雄志訳(白水Uブックス)】
「ホレイショー、この天地のあいだには、人智の思いも及ばぬことが幾らもあるのだ」 【ハムレット  福田恆存訳(新潮文庫)】


シェイクスピアの戯曲は人間の思惑をはるかに超えた壮大なスケールで展開します。彼の戯曲が何百年も色あせることなく上演される秘訣は、この永遠に変わらない世界観にあると言ってもいいでしょう。


「知識こそは天にいたる翼」「人智の思いも及ばぬことが幾らもある」というセリフが示すものは、人類の道しるべである形而上学に見事に照応しています。1997年7月7日までは王侯貴族など選ばれた人にしか伝えられていなかった真の叡智、形而上学。シェイクスピアの戯曲が永遠に感動を生み続ける秘訣は、この最高の叡智を備えているからではないでしょうか。



「NEW LIFE」ゲストエディター
谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。

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