金融依存は相変わらず、未完の「農協改革」 農業の激変に追いつていないのが現実だ

🔻農協改革と現時点の評価
  長い改革前史、特権的立場への疑問

 2015年、第2次安倍政権下、農協改革のための農協法改正が行われた(16年施行)。主な改正点(自己改革プラン含む)と5年たった現時点での評価(達成度)は次のとおりだ。評価は21年3月の農水省評価に筆者の評価を加味した(表1)。

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 今回の農協改革は、安倍農政改革に対する農水省・農協・農林族のトライアングルによるギリギリの妥協線だったが、とりあえず進行中と言えそうだ。

 アンケートでは⑧について肝心の農業者・組合員の評価は低い。農水省は「前進中。資材価格の引き下げやJA資金の農業者への還流などでさらに進展を」と甘めの評価だ。農協をとりまく厳しい状況に変りはなく、農林中金の奨励金の引下げで信用事業が悪化する農協が増える怖れもある。販売・購買などの経済事業で収支均衡化のメドが早期に立つのか、さらに改革第2ステージに向けての新たな動きが起きるのか、注目される。

 「失われた16年」と揶揄されるように、農協改革の議論の歴史は長い。改革のチャンスは何度も訪れたが、無視や抵抗の期間があまりに長すぎた。議論は住専問題後の97年に始まり、2000年には「農協改革の方向」なる報告書が出た。「営農支援」、「販売力強化」、「生産資材価格引下げ」、「赤字事業廃止」、「組合員資格見直し」、「組織再編」、「業務執行体制強化」、「行政との関係整理」など、農業研究者が「農協改革の主要な課題はほとんど網羅された」と評価するものだった。大きな動きには結びつかなかったが、農協改革支持の考えが農林官僚の中にも広くあることが確認された。

 01年小泉内閣誕生後、小泉・竹中の「構造改革なくして経済回復なし」路線の行動部隊である総合規制改革会議が始動した。これを受け03年には「農協のあり方」研究会が、「信用・共済事業に依存せずに経済事業の再建強化を」と強調したが、政策化は不発に終わった。ここで注目すべきは、改革論議で初めてイコール・フッティング(平等化)論が浮上したことである。

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