安保族の“見捨てられ不安”

🔻重みが違う52年ぶりの「台湾」言及

 4月の日米首脳会談。バイデン米大統領が就任後初の対面会談の相手に選んだのは菅義偉首相だった。一番切符を手にするための外務省、駐米大使館の下工作は大変なものだったらしい。

 米側はその“貸し分”を使い、渋る日本を説得して共同声明に「台湾」を入れ込んだ。日米共同声明で台湾が言及されるのは52年ぶり、沖縄返還に合意した1969年11月の佐藤ニクソン共同声明に遡る。この時に言及された「台湾」は簡単に言うと、米軍が台湾海峡有事の際に沖縄の基地から自由に出撃して構わないという文脈で使われた。あくまでアメリカさんの邪魔はしませんよ、という受け身的な意味合いである。

 だが、今回の「台湾の平和と安定の重要性」という声明は、日本が米国と同じ立ち位置で中国をけん制したという意味で重みが違う。安倍政権時代の集団的自衛権の行使容認を加味すれば、台湾海峡有事の際に、中国が日本を米国と同格の「敵国」として捉える可能性が出てきたということだ。その標的はもちろん沖縄の米軍基地である。

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