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「和食店が日本酒をあまり説明できない」問題 (続)

日本酒をあまり説明できない和食店がどうも多いように思う、というのが前回の話。

では、お値段が高いお店ならどうなのか?

ある高級懐石料理店での話

一人20,000円くらいの高級店。
行く前から、少し緊張します。

日本酒リストには、とにかく高級有名銘柄がずらり。
「あなたの飲みたいもの、この中にないとは言わせません!!」とリストに叫ばれている感じでした。

どこのデパートにも、2階くらいに、ハイブランドのお店ばかりがずらっと並んでところがあって、私はいつも、迷子になったような気分になりますが、それと同じ心境。

お店のスタッフは、日本酒について、あまり説明したそうではありません。
一応、「どんなものがお好みですか」と訊かれたので、「熟成酒」と言ってみましたが、「あまりありません」でおしまい。
仕方なく、もう一度リストをよく見てみると、「熟成酒」の表示はないけれど、標準が数年熟成の銘柄があったので、それを注文しました。

お料理は抜群においしく、また、器はとても美しかったです。
機会があれば、また行ってみたいお店ではあります。

ある人気高級和食店での話

お食事だけで一人15,000円はする、高価ですが、人気のお店。
コロナ禍でなければ、外人のお客様も多いでしょう。

私はとても楽しみにしていました。
そして、こんなに高くて、多分とびっきりおいしい和食をいただくんだから、ぜひ、日本酒を合わせたいな、と。

最初のオーダーの時のやりとり。
私:  「日本酒をお願いしたいんですが…」
お店: 「辛口とか、どんなのがお好きですか?」
私:  「熟成しているのがいいです!」
お店: 「今は冬で新酒の季節なんで、そういうものが多いんですが…」
私:  「・・・確かに、そうですね」

私は、一応納得しました。
「好みをお伝えいただければ、たくさんある日本酒の中からぴったりのものをお選びしますよ」という、思いやりあるスタンスも伝わってきましたし。

最初に出てきたのは、新酒の日本酒でした。
それはそれで良かったのです。
ただ、その次が、「秋あがり」とラベルに書かれたお酒。
つまり、前年の冬に造られた、1年熟成酒でした。
色も明らかに黄色みがかってました。

なんだ、熟成酒、あるんじゃない。
自分の好みも伝えたのに、どうしてこの日本酒を最初に選んでくれなかったのかしら。
このお酒だったら、少し甘めで濃厚だった最初のお料理と、相性がとってもよかったろうに…。

お料理はおいしく、接客も自然で心地よかったです。
機会があれば、また伺いたいです。
ただ、少し悲しかった。

もしかしたら、せっかく新酒の季節なので、最初から「秋あがり」を提供するのは良くないと思われたのかもしれませんが。

まとめ

値段にかかわらず、日本酒について、あまり説明できない和食店が結構あるな、と思います。
「この人は日本酒にあまり詳しそうでない」と判断され、適当な説明しかしてもらえなかった可能性もないことはないでしょう。

しかし、ワインについて全然詳しくない私でも、このような経験をしたことはないです。
高いお店に限ったことではなく、まず、どんなワインが好みか、あるいは、飲みたいか、と聞かれ、適当なワインをお店が選んでくれる。
候補が複数ある場合は、全部並べて、値段も含めて丁寧に説明してくれます。
しかも、嬉しそうに、楽しそうに。
「これは、珍しいワインなんですよ」、とか、「このワイン、この料理とめちゃくちゃ合うので試してみてください」とか。
「ワインは、客さんの方が詳しいから、僕は料理に徹してるんです」と言いつつも、しっかり語るお店もありました。
もちろん全て日本での話です。

行ってみた和食店には、ミシュランガイドに掲載されているお店もあります。
ミシュランはフランスの会社なので、お酒の提供についてももちろん評価している、と思い込んでましたが、どうなんだろう?
そこで、ガイドブックを購入して見てみたところ、日本酒については基本的に「興味深い日本酒」の有無のみで、あくまでも料理の評価でした。

なるほどな、と。

でも、これでは、もったいないです。
もし、もっと詳しく説明してもらえたら、私だってもっと日本酒を頼んだかもしれないし、他のお客さんだってもっと日本酒に興味を持つはず。
そんなに知られていない銘柄でも、「この日本酒は、○○ととても合うんですよ、試してみてください」なんて言われたら、試しちゃいますよね。

飲食店と顧客の間での、日本酒に関するやりとりには、まだまだ改善の余地がある。
そして改善すれば、お店の売上だって、利益だって、上がるのではないか。

なぜ、日本酒をあまり説明できない和食店が多いのか?

たまたま話す機会があった酒蔵の人たちに、この和食店での経験を話してみました。

あるおひとりによると、
「そもそも、日本酒の役割は、食べた口を洗うことだったので、和食店は、お酒が食事に合うかどうかなんて考えてなかった。食事中心で、お酒を飲まれると、しゃべって食べてくれなかったりするんで、飲んでくれなくても良い、くらいだったんですよ。だんだん変わってきてはいますけどね。」
とのこと。

これまた、なるほどな、と。



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