大人になってからの趣味は、全部ニフティサーブに習った
ワープロじゃないの？
高校に入ってどうしても欲しくなり、親にねだって買ってもらったタイプライターでブラインドタッチを覚えた頃。大学時代に、カシオのワープロで就活の履歴書を作り提出して人事の人に驚かれていた頃。今振り返ると、そんな時代は、パソコンというものを知る一つ前の時代だった。
小型テレビみたいな大きな画面、広いキーボード。その頃の僕にとって、スタンドアロンのパソコンは「豪華なワープロ」にしか見えなかった。なにしろ自慢のカシオのワープロの画面は、2行×16文字しかなかったものだから。
パソコン通信がやりたんです！
たしか1991年だったと思う。大学時代の先輩が
「アメリカの友人とパソ通でメールしている」
と言っていた。
「ん？パソ通？なんですかそれ？」
新しもの好きの僕は、その時パソコン通信という単語を始めて聞いて驚いた。電話回線で文字のやり取りができるというではないか。どうやらパソコンを使ってコミュニケーションができるらしい。やりたい！新しもの好きの血が騒ぐ。
パソコン通信という単語に出会って数日後、そのころ一番近かった新宿のヨドバシカメラに行き、「パソコン通信やりたんです！」と店員さんに相談する僕がいた。
ヨドバシカメラで、コンパックのノートパソコン、モデム、カプラーなどを買った。Windowsは3.1だった。電話帳みたいな取扱説明書がついてきた。はじめはなんだかわからなかったけど、買った日はパソコンと格闘しながら説明書を一晩中読んでいて、翌日の仕事がつらかったのを覚えている。
ニフティサーブ
接続はできたみたいだけど、パソコン通信を紹介してくれた先輩以外に通信相手がいない。そんなことを先輩に相談すると
「ニフティサーブがいいよ」
と教えてくれた。
ダイヤルアップ接続
ニフティサーブに入会してびっくりしたのは、電話代だった。まだテレホーダイというサービスはなく、ダイヤルアップ接続だった。アクセスポイントと呼ばれる電話番号に電話し、音声信号でデータをやりとりするものだ。繋いでいる間はずっと電話代がかかる。領収書を見たときにびっくりした。月額定額のテレホーダイが始まるまでは、データのダウンロードとアップロードの時だけ繋ぐようになった。
電話代問題を除けば、ニフティサーブは快適で有効なコミュニティだった。物珍しさもあって、暇さえあれば書き込んでいた。ニフティサーブの中心はフォーラムだった。
フォーラム
1996年になると、前年のWindows95の発売もあり、ニフティサーブのフォーラムの数は星の数のごとくものすごい数となった。気になるテーマで探せば、かならずフォーラムがあると言ってもよかった。フォーラムはどこも親切だった。シスオペという取りまとめ役がいて、参加者も基本シスオペに従っていた。僕はそのころ30代だったけど、大人になって始めた趣味は、どれもニフティサーブのフォーラムで基本的なことを教えてもらっていた。代表的なフォーラムを2つ挙げておこう。
野鳥フォーラム
当時住んでいた習志野市には、谷津干潟があり「谷津干潟自然観察センター」があった。ニフティサーブの野鳥フォーラムに入ってからは、このセンターにもフォーラムのメンバーたちと行くようになり、情報量が格段に増えた。毎月探鳥会(バードウォッチング)にも参加するようになり、干潟に集まる水鳥だけではなく、近郊の林や公園にも鳥を見に行くようになった。
カヌーフォーラム
そのころ仕事のプレッシャーが強く、休みの日は自然のなかでのんびりしたいと思っていた。友人の誘いもあり、カヌーの体験試乗などに行っていたこともあり、カヌーフォーラムに参加した。まだカヌーを持っていない時期からオフ会に誘ってもらい、月に何度も川辺でキャンプをしたりカヌーツーリングをした。オススメのカヌーを教えてもらい買った。カヌーツーリングは上流から下流に下ってしまうと、カヌーを持って出発点に戻るのが難しいことから、グループで複数の車があるほうが便利で楽しかった。カヌーの趣味はその後、鹿児島赴任に伴い離島を巡るシーカヤックへと進化していった。
まだまだ参加した楽しいフォーラムはあるのだけど、どの趣味もニフティサーブがなかったら短期間に充実しなかったと思う。その意味ではネットライフ黎明期のニフティサーブは、僕にとってなくてはならないツールだった。
あれから20年あまり。新しもの好きの僕は同時に飽きっぽいこともあり、今は野鳥もカヌーもやっていない。でもディープな経験ができたニフティサーブには感謝の一言だ。
Shinichi/Miyazakiは個人の日常、オトカツは地元葛飾を盛り上げるアクションネームです。
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