見出し画像

『サーカスの犬』

はじめまして、スタッフの青木です。
普段は出来上がったチラシ束を劇場に納品する業務を行っております。

秋も深まり芸術やスポーツ、行楽やグルメを楽しむ季節ですが、現在の社会状況では、なかなか元通りというわけにはいきませんね。

そんな状況の中でも楽しめることのひとつが読書だと思います。
私はお気に入りの本を何回も読み返すのが好きです。
自宅の本棚の前に立って古い友人に再会するような気持ちで本の背表紙を眺めます。

今回、私が手にとったのは『サーカスの犬』という本です。

サーカスの犬

装丁が素敵ですよね。
白い犬がひょっこり顔を覗かせています。サーカスの舞台袖から仲間の演技でも見ているのでしょうか?
この白い犬の名前は「シェパ」といいます。このお話でとても重要な存在です。

お話の舞台は、フランスはパリの下町。華やかなイメージとは程遠いうらぶれた街並。そこでサーカスの裏方として暮らす男たち。彼らはテントの設営から解体までの全ての裏方仕事を任されている。日の当たらないキツイ仕事かつ給料もほんの少し、さらにもともとスネに傷があるようなゴロツキ集団なのでまともな生活をしていない。なかには家がなくて廃車で寝泊りするものもいる。それでも彼らには自分たちが「サーカス人」だという自負がある。ミスやポカをしてもサーカスやテントへの愛情は人一倍ある。

ある日、男たちのもとに薄汚れて痩せ細った犬が迷い込む。男たちは同情心から犬を介抱してやり、餌を与えてシェパと名付けて一緒に暮らすことになった。すぐにシェパは男たちになついて、みんなのアイドルになった。そうやってしばらく一緒に暮らすうちにシェパがサーカスのショーのために生まれてきたような天才犬だということ分かる。すると男たちは夢を見始めます「シェパをスターにして俺たちのサーカスを作ろう!」と、、。

乱暴で粗野、だらしなくみすぼらしかったりする男たちですがどこか憎めない、それは我々読者と同様に彼らがシェパを可愛がって愛して、大切に想っているからかもしれません。私はそうした男たちに再び会いたくて本を開きます。(もちろんシェパにも会いたい!)


私がこの本と出会ったきっかけは、SPACの俳優である阿部一徳さんの一人芝居シリーズ『阿部一徳のちょっといい話してあげる』の演目だったからです。このシリーズは、阿部さんが小説をまるまる覚えて、それを圧倒的な語りでパフォーマンスするもので、私は過去に何作品か観させていただいたのですが、どれも素晴らしかったです。阿部さんの語りは「耳で聞いて意味を理解する」というよりも「空間を伝わって身体中の毛穴から入ってくる」とような感じがします。うまく伝えられないですが、通常の読書体験や観劇体験とはまた一味違う濃厚な体験でした。

このシリーズの最新公演は、11/8(日)静岡のUMIという会場で行われるそうです。さらに後日、ネット配信もあるそうなので皆さん是非お楽しみください。

阿部さんのHPは下記のチラシ画像をクリックしてください。サーカスの犬チラシ





17,100名の舞台・美術ファンにお届け中!「おちらしさん」への会員登録もお待ちしています! おちらしさんとは⇒https://note.com/nevula_prise/n/n4ed071575525