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トランスフォーマー・ヒューマンアライアンス スペシャル(R-360:東京ジョイポリス)

 後にバブル景気と呼ばれた時代、各ゲームメーカーが様々な大型アーケードゲームを発売してゲームセンターを賑わせていた頃の1990年11月。セガから「R-360」という大型アーケードゲームが発売された。
 ゲームそのものはよくある戦闘機ゲーム「G-LOC」であったが、プレイヤーが乗っている筐体そのものが前後左右に揺れるだけでなく、宙返りまでしてしまうという、当時としては画期的なゲーム機。
 まだ学生だった私は、「遊園地の絶叫アトラクション並みに激しい」このアーケードゲームにハマり、1プレイ500円というゲームセンターとしては高額な料金にも関わらず、毎日のようにプレイしていた。
 あれから四半世紀。既に日本には現存しておらず、世界にも個人所有のものが僅かに残っているだけという「R-360」。これが、2年ほど前、突如復活を遂げた。

 一大レジャータウンとして、週末ともなるとファミリーやカップルで賑わう町・お台場。しかし、平日の夜は近隣高層マンションの住人や、フジテレビ・サントリー・乃村工藝社などの大手企業のオフィス勤務社員が多く、比較的穏やかな町になる(海外からの観光客ツアー客は平日でも多いが)。そんなオフィスビルのひとつから出て、お台場海浜公園駅改札に向かうサラリーマンの流れを通り過ぎ、「デックス東京ビーチ」に向かう。途中の狭い通路もこの時間はそれほど混雑していない。
 両サイドをショッピングビルに挟まれたウッドデッキの通路を抜け、自動ドアをくぐるとそこは「東京ジョイポリス」のエントランス。

 チケットをゲートにかざして入場すると、SFチックな空間が広がる。時間帯によってプロジェクションマッピングを駆使したデジタル演出が行われるステージ。そしてその客席部分にあたる空間の上部には、リズムゲームとコースターを融合した「激音ライブコースター」のレールが、ぐるっと回っている。ちょうどここでコースターのライドは宙返りをするため、乗客の絶叫が度々聞こえてくる。
 その声を聞きながら、目の前のエスカレータに乗り1つ上のフロアへ。ソニックの像の前を右に進むと、そこに黄色くて丸い球体が3つ出現する。

 アトラクションの名前は『トランスフォーマー・ヒューマンアライアンス スペシャル』。有名なCGアニメーション映画『トランスフォーマー』のアトラクションである。
 だが、このアトラクションの筐体の下部には、しっかりと『R360Z』のナンバリングが施されている。紛れもなく、R360の後継機として存在しているのだ。

 早速アトラクションのキューラインに並ぶ。前に並んでいるのはほんの数名。しかし20分の待ち時間となっている。最大2人乗りの筐体が3台しか無い上に、安全確認に時間がかかるので、客回転はジョイポリスのアトラクションの中でかなり悪いようだ。吹き抜けになっている下層フロアにある「ハーフパイプトウキョウ」を眺めながら順番を待つ。ハーフパイプも結構な絶叫系だ。

  3組ほど待って、受付順がやってきた。ロッカーに荷物を預け、説明映像を観てから搭乗。まずは一旦、ライドの手前で待機し、オペレーターの指示の下乗り込む。「R−360」は1人乗りであったが、これは最大2人乗り。1人で乗る場合は左右どちらでも好きな方に搭乗できる。
 シートベルトを装着し、上部の安全ハーネスを下ろす。ちょうどハーネスのグリップの右手側にトリガー、左手側にコントローラーのあるスティックが装備されている。オペレーターが空席側のハーネスをセットし、準備完了。ゲームスタートを待つ。プレイ方法はゲームセンターに設置されているアーケードゲーム版のトランスフォーマー・ヒューマンアライアンス』とほぼ同様に、自身の操作は照準のコントロールと射撃のみとなっている。

 オペレータの合図とともにゲームスタート。いきなり右回転で1周。絶叫マシンに慣れていないプレイヤーはここで一瞬パニックになるだろう。でも、まだゲームは始まったばかり。その後30秒程度は緩やかな動きが続く。落ち着いて雑魚に照準を合わせてはトリガーを弾いて確実に撃ち落としていく。銃は連射が効くが、やはりここは無駄弾をできるだけ使わないようにするのがゲーマーとしてのこだわりだ。

 ここで敵から大きな一発。衝撃があった後、落下。前方に一回転。辛くも墜落を免れて体勢を立て直す。ここから戦闘は佳境に。当然ながらライドも前後左右に激しく動く。戦闘に熱中するあまり、ふと現実世界を見た時に初めて今自分があらぬ方向を向いていることに気がつくほどだ。

 戦闘はラストに差し掛かる。敵のボス・メガトロンとの戦闘に巻き込まれていく。味方のオプティマスと協力してボスにダメージを与えていく。
 途中、敵のボスに捕まり振り回される時は激しく揺さぶられるが、それ以外は動きも緩やかになるので、じっくりとボスの弱点を確実にそして素早く狙っていく。
 ついにメガトロンに致命的なダメージ。その爆発に巻き込まれて、墜落してしまう自機。ここがこのアトラクション最大の絶叫ポイント。これでもかというくらい猛スピードでグルグル回される。この感覚は、他の絶叫マシンでは味わえないここだけのものだ。

 ゲーム終了。最後に成績が発表される。個人成績はSランクの「パーフェクトシューター」を獲得。最近、加齢で動体視力や反射神経が衰えてきたとは言え、元ゲーマーとしてはやはりSランクを取れなければと思っていたので、満足する結果であった。

 だが、やはり少し物足りない...。かつてのR-360「G-LOC」は、自機の操作すなわち筐体の回転も自分でコントロールできていた。そのため、例えばゲームスタートから戦闘シーンのラストまでずっと逆さまでプレイし続けるとか、着艦シーンで何回回転させて無事に着陸できるかを仲間内で競ったりすることもできた。
 どうしてもアトラクションとして、安全管理を徹底するためには動きは同一にしなければならないのだろうけれど、それだけはどうしても残念に思う。
 とはいえ、あの「R-360」の正当な後継機「R360Z」が今でもプレイできるのは喜ばしい。これからも時々ぶん回りに来ることにしよう...

 ...ちょっと足元がふらつきながら、アトラクションを後にするのだった(昔は連続乗りも平然とできたんだけどなぁ。これはやっぱり加齢のせいか...)。


トランスフォーマー・ヒューマンアライアンス・スペシャル:http://tokyo-joypolis.com/attraction/2nd/transformers.html

R-360(セガ・インタラクティブ社の特設サイト記事より):https://sega-interactive.co.jp/special/history/columns/c_senpai_07.html



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