【ネット歯科大】歯を抜く判断はどのように
大人の歯は、抜いたら生えてきません。このため、歯は大切にしなければなりません。
しかし、歯科治療のなかで、抜歯という処置があります。
歯科医師は抜歯が必要という判断をし、患者さんが納得されて、抜歯という処置を行います。本来はできるだけ避けたい抜歯ですが、それがひとつの治療方法としても成立しているわけです。歯科医療の現場において、どのように抜歯の判断をしているのでしょうか。
いちばんわかりやすいのは、歯が痛いなど症状が出ているケースでしょう。ほかの治療法では解決できないような場合、抜歯をするしかないということになります。
症状としては、歯の痛みのほか、揺れてかみにくい、歯ぐきが腫れている、周りから膿が出ている、などが挙げられます。
ただし、歯の痛みなどがない場合、たとえば違和感がある程度や、特に症状がないようなケースでも、抜歯を必要とすることがあります。
歯を残せるかどうか、ひとつの大きな基準が「感染」です。
どんな人でも、口腔内には常在菌がいます。健康なお口の人であっても、口には多くの細菌が住みついています。
そのなかで、特定の歯に多くの細菌が生息しているというのは、かなり良くない状態です。その歯から口全体に細菌を提供し続けてしまっています。それにとどまらず、近年の研究から、口の細菌は全身に影響している可能性が指摘されているのです。
歯の周囲の感染があり、歯を保存したままでは制御できない場合、やはり抜歯が適切ということになります。
ここでいう感染源は具体的に、歯の周り(歯周病)、歯の内部やその先に続く根の先端(歯の神経の問題)、あるいは歯が割れた切断面(歯の破折)を指します。
歯の周囲の感染を抑えられない場合は、痛みなどの症状が特になくても、抜歯をした方がよいと判断することがあるわけです。
また、明らかな感染があるというケース以外でも、抜歯を選択することもあります。
たとえば、歯の位置が良くないようなケースが当てはまります。矯正治療にともなって歯を抜くことはしばしばあります。あるいは親知らずの歯、前から数えて8番目の歯のことですが、清掃が行き届かないために積極的に抜歯をすることもよくあります。
歯科医師が抜歯を提案する背景には、それぞれ理由があります。しかし、判断基準は専門家によって違いがあることも事実です。また、患者さんの同意がない限り、歯を抜くことだけでなくどのような歯科治療も行うことはありません。
抜歯が必要になった場合、歯科医師の説明をよく聞き、しっかりと納得したうえで処置を受けてください。
神奈川歯科大学 青山典生
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