海辺のブックレット[写真と文字]
日曜日。
海に出かけた。
車で浜まで行ける海だ。
でも車は防砂林の手前に停めて歩く。
とは詩人・長田弘さんの一節だが、
海までの細い道を歩く、
それだけで、どうしてこうもそわそわするのか。
空が広い。
目に入る人工物は、ゴミ処理場の煙突だけ。
山の中で育った僕は360度の空とまっすぐな地平に、少し不安になってしまう。
故郷ではいつもどこからでも山が見えたし、街に住めば人工物ばかりで空は小さい。
遊泳禁止のその浜には、何もない。
浜の周囲にも何もない。
人類の立ち入り禁止区域、みたいな風情だ。
防波堤を登る。
ただ海が光っている。
浜を歩く。
ひたすら歩く。
ときどき海を見る。
波を浴びる。
風を体中でうける。
光をあおぐ。
釣り人がふたり。
砂浜で立ち往生している四駆が一台。
近そうに見えて、歩いても距離が縮まらない。
流木が点在してる。
浜に漂う終末感。
雲ひとつなく、明るすぎるのがかえって不安。
波消しブロックさえ、人類の遺構に見える。
『マンアフターマン』の世界。
未知の生き物の世紀に不時着したようだ。
海、補充終了後帰宅。
「璦憑姫と渦蛇辜」第3部、
執筆に入りました。
海が好きです。
読んでくれてありがとうございます。