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修行を日常へ。キャピタルを蓄えるコミュニティの実践|Nesto代表・藤代健介インタビュー

Nestoに関わる人たちにお話を聞く「Nestoなひと」シリーズ。今回はNesto編集部が、Nesto CEOの藤代健介さんにNesto立ち上げの背景やリズムの紹介、今後の展望について話を聞きました。

お話を聞いて見えてきたのは、スタートアップでありながら成長主義の時代で見過ごされてきた価値観に着目した、趣きの異なるコミュニティの姿でした。

藤代健介(ふじしろ・けんすけ)
大学院在学中に理念を場に翻訳するデザインコンサルティング会社を設立。自身の活動として、ビル一棟を使った人生をプロトタイプする半年限定のコミュニティPROTOや、渋谷の再開発計画からはじまった平和活動を実践する拡張家族Ciftなどを立ち上げる。現在は心と体を整えるウェルビーイングな習慣を開催するNestoの代表として、日々の整う暮らしを鎌倉で実践中。

市民活動や非日常の修行を経て。Nesto立ち上げまでの道のり

──まずは健介さんがNestoを立ち上げるまでの経歴を教えてください。

大学では建築を専攻し、大学院在学中に起業し、その後数々のプロジェクトで場づくりを行ってきました。

最近手がけたプロジェクトでは、ともに暮らし働き、相互扶助する共同生活組織「拡張家族Cift」などがあります。

──拡張家族Ciftを経て、Nestoはどういうきっかけでスタートしたのでしょうか?

社団法人であるCiftを通じて、市民活動に挑戦することができました。

市民活動とは、共感できる仲間と集まって運動を起こすということ。Ciftを経て、市民活動の実践については実感や理解を持つことができました。

──市民活動の次は何を描きましたか?

より複雑な社会の一部として新しい場の形を考えたときに、次は「経済」というレイヤーでの挑戦を考えました。

私がCiftのときからやりたかったことは一貫して、人が集まり変容する「場」の実践です。その思いはNestoでも変わっていません。それを次はスタートアップでやってみたいなと。

Nestoのコンセプトを固めていった時期は、コロナで世の中がリモート生活に変わった時期です。その中で、物理的に離れていても、同じ時間に人と人が集まることで「場」ができるのではないかと着想しました。

──Nestoはちょうどコロナ禍で生まれたスタートアップなんですね。

コロナもコンセプトに影響を与えたひとつの要素ではありますが、他にも様々な経緯が絡み合っています。たとえば、私は修行が好きで。

──修行が好きっておもしろいですね。どういったものに参加されていたんですか?

たとえば、1日10時間人と喋らず瞑想することが10日間のプログラムになっているヴィパッサナー瞑想という修行や、ネイティブアメリカンの治癒と浄化の儀式であるスウェットロッジなど。いろいろと参加しています。

──何が魅力で修行に参加しているのでしょうか?

そもそも私は、「身も心も進化すること」に興味があります。修行という非日常的で高密度な時空間に身を置くことによって、自分を超えた自分と出会うことができます。

しかし、非日常系の修行だと、生まれ変わったような気持ちで戻ってきても、生活していると気づけば元どおりになってしまう。

──その気持ちは少しわかります。修行とはレベル感が違うとは思いますが、温泉旅行に行ってその日はリフレッシュしても、効果は継続しないですよね。

本当にそういった感覚です。非日常な体験をしても、効果の継続は実際とてもむずかしい。

今でも非日常の修行や儀式はすごいと思います。けれど、自分の中での関心がだんだん日常の中での繊細な修行に移ってきました。
そんな中で、やっぱり日常の習慣って大事だなと。身も心も進化するための気づきを、日常の中で実践していくことが必要だと考えるようになりました。

そういったこれまでの発想や経験がからみ合って、Nestoのリズムのコンセプトが生まれました。

Nestoが目指すのは、キャピタルを蓄える共助的なコミュニティ

──Nestoを知らない方に対してはそういったコンセプトをどのように説明しますか?

私はNestoを、「習慣を通して、ウェルビーイングな人たちがつながる時間同期型の共同体」と説明しています。

──共同体という言葉が差しているものについて、もう少し詳しく説明していただけますか?

Nestoは共助的なコミュニティがその本質だと思っています。

しかし、個人個人が自発的に共助の状態をつくることはむずかしく、第一のステップとして、公助的なサービスを用意することで、習慣化したり、共感する仲間との出会い機会を助けることができると考えました。

こういった、公助的な取り組みから共助的な状態への移行を時間をかけてやることに、スタートアップとしてはじまったNestoのおもしろさがあると感じています。

──ここでの「共助」や「公助」の意味について説明していただけますか?

「共助」とは、地域やコミュニティといったまわりの人たちが協力をし、助け合うことです。

「公助」とは、一般的には公的機関による救助や援助を指しますが、私はサービスによるサポートも「公助」として考えています。

──つまり、「Nestoがみんなを仕組みとして助ける」という「公助」的なものから、だんだん「中にいるみんながそれぞれ助け合う」という「共助」というモデルを目指しているということでしょうか?

そのようなイメージです。きっちりとしたサポートの仕組みとしてはじまりながら、だんだん個人に委ねる有機的な活動になっていく感覚を描いています。

──数々のコミュニティを手がけてきた健介さんが感じる、Nestoのおもしろさは何ですか?

そういった共助の状態をどう目指すかなどおもしろいポイントはいろいろとあるのですが…。ひとつ挙げるとすると、10年くらい先の個人と共同体の在り方を先んじて実験している感じがします。

──未来の在り方をシュミレーションしてる、ということですか。もう少し詳しく教えてください。

コンセプトだけなら、どこまででも未来のことを語れますよね。

でもNestoでは、コンセプトを掲げるだけではなく、サービスとコミュニティとして現実に落とし込んでいる。だからこそ、そのプロセスの中での学びや気づきをみんなとシェアできる。そうやって、未来を一足先にみんなで体験している感覚です。

──健介さんは、未来の世界はどうなると見立てているのでしょう?

どこかで一回、世界は根本的に壊れると思っています。戦後の経済中心主義が崩壊する。

そのときに自分が巻き込まれないようにするためにも、お金に依存しない別のキャピタルをつくっておくことが大切だという思いがあります。

──なるほど、「未来の在り方を実験している」という言葉の意味が少しずつわかってきた気がします。
キャピタルとは資本のことですよね。Nestoを通して、貯めていきたいお金ではない資本とは、一体どういったものなのでしょうか?

Nestoではふたつのキャピタルを蓄えていると思っています。

ひとつは、どんな状況でも自分に帰れるレジリエンス力。これはつまり、淡々と続ける習慣を通じて、どんなに世界が荒れ狂ったとしても平穏になれる心を培っていると思います。

ふたつめは、日常の中で弱いつながりのソーシャルキャピタルを育んでいます。

──近年、ソーシャルキャピタルつまり「社会的資本」の重要性が注目されてきている気がします。Nestoで培われているソーシャルキャピタルとは、どういったものなのでしょうか?

Nestoでの人間関係は、物理的な距離が離れてるため依存関係になりにくく、それぞれの人が自立しています。でもリズムで顔を合わせているので、お互い気にかけたり、つながりが担保できる。

家族や同僚、友達とも違う、第3のつながり。そういった関係性やネットワークがあることが人のウェルビーイングにつながると思っています。

──リズムという場を通じて、ゆるやかな信頼関係が築かれているのですね。

Nestoで築かれているレジリエンス力やソーシャルキャピタルは、たとえ経済中心主義が崩壊するなど時代が大きく変わったとしても、大切な資産になると感じています。

曜日ごとに気持ちをシフトする。Nestoのリズムに参加してみよう

──実際に健介さん自身もNestoのリズムに参加されてると聞きました。

自分の生活に取り入れたいなと思うリズムにいろいろ参加してます。

──どのリズムに参加されていますか?

自分の習慣になっているのは、「のびのび図工のリズム」「足るを知る、断食のリズム」「英語シャドーイングのリズム」「随迷随筆のリズム」ですね。

──日常生活でリズムに参加するようになって、何か変化はありましたか?

そうですね、曜日ごとの自分の気分や状態がリズミカルにシフトできている気がします。

──具体的には曜日ごとに、どういった気分の違いがつくれていますか?

月曜は断食の習慣である「足るを知る、断食のリズム」に参加していてお腹がすいてるので、運動などアクティブなことはできず、終日スローペースですね。そのゆるい感覚で「随迷随筆のリズム」に参加して文章を書いてます。

逆に水曜は「英語シャドーイングのリズム」と「のびのび図工のリズム」があります。このふたつのリズムは、口も使うし、手も動かす。なので水曜日は私の中ではインプットやアウトプットができる日です。

このような感じで、曜日ごとに色があって、メリハリがついてます。

「のびのび図工のリズム」参加中の健介さんの様子

──参加して感じる、リズムの魅力はどういったところでしょう?

ひとりでは続かない習慣を、みんながいるからこそ続けられています。
ひとりだと図工や断食は続けられなかったと思います。毎回「みんなもやってるんだから自分もやろう」と思うことで続けられているので。

また 、結果的に月日が経つごとに、ちょうど良い距離感の友達ができるのもいい感じです。

──「ちょうど良い距離感」という言葉は、以前インタビューしたNestoメンバーの康太郎さんもまさしく同じことを言ってましたね。

Nestoでの関係性は、毎週顔を合わせてるのに深入りしないような付き合いなので、気楽でいいですよね。

──リズムごとにもうすでにみなさん仲良いのかなあと思うと、はじめて参加する際にはハードルが高いイメージがあります。

その気持ちもわかります。はじめての参加って、Nestoに限らず習いごとなどでもやっぱり緊張しますよね。

でも、Nestoのリズムの一覧を眺めていただき、「このリズムいいな」と思ったら、まずは直感で参加してみてほしいです。新しい人が来たり、来なくなったりということに、みなさん慣れています。試してみて違うと思ったら、別に通い続ける必要もないですし。

──リズムにはじめて参加するときのコツってありますか?

リズムではカメラやマイクオフでも参加できるのですが、できれば顔出しをして挨拶をしてみてください。

自分がオープンになれば、相手もオープンになり、その場がホームに感じやすくなるでしょう。すべては自分次第です。

価値観を共有する場━Nestoが目指すこと

──Nestoは、どういった方に参加してほしいと思いますか?

これまでの近代的な成長主義の時代の中で見過ごされてきた価値観があると思っています。そういった、東洋的だったり、母性的、あるいは日常的な在り方が大事なのではと思っている方。

そして、自分を変えることで世界を変えていけると心のどこかで感じている方。

このような世界観を共有する場や仲間がいるのがNestoだと思っています。そのためNestoでは、そういった方に参加していただき、一緒に未来を考えていきたいと思っています。
また、その大切な気づきを失わないための繊細な場をつくっていきたいです。

──最後に、健介さんが思い描くNestoの展望を教えてください!

Nestoを10年後までに、1,000のリズムで、10,000人が集まるウェルビーイングコミュニティにしていきたいです!

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まずは14日間の無料体験でお待ちしています。

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撮影:本永創太